魔術師は市場でよみがえる の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
アルフレッド・ウィンズロー・ジョーンズにより始められたヘッジ・ファンドはジョージ・ソロス、マイケル・スタインハート、ジュリアン・ロバートソンという三人の有名人を生んだ。スタインハートは1994に通貨取引で初の損失を出して1995に引退、ソロスは「大英帝国を倒した男」として名を馳せた。本書では、ロバートソンの足跡について描かれている。 「市場のタイミングを測る人は、買い時と売り時の両方について正しくなければならない、ということを銘記しておきたい」というように、マーケットタイミングには否定的で、ボトムアップ型のバリュー株投資を得意としていた。文中の『私は市場を知れという表現が大嫌いだ」と彼は言う。「テレビに出ている連中が市場がああだこうだと言っているのを耳にするが、市場というのは企業を代表する株式の集まりにすぎない。それなのに、こういう連中は市場がああ言ったの、こう言ったのとおしゃべりしている。まぁ、市場は私には話しかけてくれたことはないね。」』という表現にからも分かるように、あくまでも個別株について調査を行い、安値のものを購入して値上がりを待つという作戦であった その結果、1980年の設立以来、20年で140倍(年利28%)というパフォーマンスをたたきだすのだが、ネットバブルの頃、資金が全てネット株に向かったためバリュー株のパフォーマンスがひどくおちこんだ。1999のNASDAQ 指数が+80% に対し、19%のマイナス、さらに翌2000年の第一四半期も-13%という事態に至り、タイガーファンドは閉鎖されてしまった(しかし、その直後ネットバブルが崩壊してしまったのだが) 運用にはやはりレバレッジを利かせていたようだ。ロング120%にショート20%とか、ロング180%にショート80% とか、市場環境を読みながらウエートを変えていたらしい。
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かつてヘッジファンド「タイガーマネジメント」を率いたジュリアン・ロバートソンの伝記。彼の投資法はバリュー投資にロングショート戦略を組み合わせたシンプルなもの。読んでいてショートの重要性と徹底的なリサーチの重要性を再確認した。
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ヘッジファンド業界でソロス、スタインハートと並び賞されるジェリアン・ロバートソンの生涯(まだ生きていますが)をまとめたもの。一流のジャーナリストが彼の人生を丹念に追っており、クオリティは非常に高い。 この本を読んで興味をもったのは、ロバートソンの特異なキャラクターもさることなが...
ヘッジファンド業界でソロス、スタインハートと並び賞されるジェリアン・ロバートソンの生涯(まだ生きていますが)をまとめたもの。一流のジャーナリストが彼の人生を丹念に追っており、クオリティは非常に高い。 この本を読んで興味をもったのは、ロバートソンの特異なキャラクターもさることながら、なぜ彼の弟子たちが今もなお金融業界で多くの地位を占めることができるのか、である。それは採用から始まっているのではないかというのが僕の結論である。以下、引用。 ロバートソンは自分が採用した人たちは「非常に聡明で、競争心が強く、極めて倫理的である」と述べている。彼が人に求めるのは利口であることに加えて、負けず嫌いでスポーツ好きなことだ。換言すれば、勝つことが好きな人はいいと語っている。 タイガーが存続していた約20年の間に、ドアを開けて入ってきた人のほとんどはスポーツ選手だったか、あるいはそれに近い経験を持っていた。ロバートソンは頭でっかちのタイプは採用しないようにしていた。教室内外の両面において優秀でバランスのとれた人材を求めたのである。 ここからも分かるように、資産運用業界で生き残っていくには、やはり「競争心」が求められると感じた。もしロバートソンが上司だったら、いやなこともたくさんあるかもしれないが、一生感謝するような人になる気がする。自分の上司はどんな人になるのだろう?
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この本は著名なHedge Fundであるタイガーマネジメントをドキュメンタリータッチで描いた本である。株のロングショート(ボトムアップ)とグローバルマクロ(トップダウン)をどのようなタイミングでどのように組み合わせるべきか、ファンドの規模が大きくなったときにオペレーションはどのよ...
この本は著名なHedge Fundであるタイガーマネジメントをドキュメンタリータッチで描いた本である。株のロングショート(ボトムアップ)とグローバルマクロ(トップダウン)をどのようなタイミングでどのように組み合わせるべきか、ファンドの規模が大きくなったときにオペレーションはどのようにすれば良いのか、ファンドの構成員の人事評価のあり方等、学ぶべき事が実務家には非常に多い。ビジネスとしてファンドを成り立たせるための良質な教科書である。
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ヘッジファンドというとどうも、「いかがわしい」というイメージがつきまとうが、この本を読むと認識が変わった。 確かに投資の手法は何でもあり。株や債権はもちろん、銅から石油から、通貨へ。かけることのアメリカ、ロシア、アジア、ヨーロッパ、日本、さらに売り買いというわけで、何でもありの...
ヘッジファンドというとどうも、「いかがわしい」というイメージがつきまとうが、この本を読むと認識が変わった。 確かに投資の手法は何でもあり。株や債権はもちろん、銅から石油から、通貨へ。かけることのアメリカ、ロシア、アジア、ヨーロッパ、日本、さらに売り買いというわけで、何でもありのバリュエーション豊富な投資をしている。 しかし、その中心を流れる思想は何かというと、意外にも「ファンダメンタル」「バリュー」なのだ。業績やマクロ指標を徹底的に分析して、安いと信じれば買い、高いと確信すれば売る。一時的に市場が逆に振れていても、ストーリーが正しければ長期的には勝てるという投資法だ。まさに、投資の王道と言うしかない。 ロバートソンはウォーレン・バフェットと同様、グレアム・トッドというところに学んだ純粋なバリュー派。その中でもとびっきりの天才ときている。その彼が、世界中がITバブルに熱狂した2000年に、タイガーを解散することを決意する。それがなぜなのか、本書を読んで各自が考えるべき課題であろう。 一つ言えるのは、余りにも巨額な資産を株式を中心に運用することには無理があり、バリュー戦略は破綻するということ。逆にいうと、小額の資金を運用するのにバリューに勝る戦略は無いのではないかと思う。現在の私はバリューを信じるが、しかしそのバリュー投資が機能しない市場もあるのは事実。そこをどう乗り切るか。今後、ソロス関係、LTCM関係といったところの書物を読んで教訓を得たいと思う。
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