第四間氷期 の商品レビュー
安部公房は特殊な場面設定(このためしばしばSFと分類される)を行い、その中で人間という存在の不確かさを表現し続けてきた。 この作品でも、予言機械を開発した研究所所長と、その人格を入力され、さらに将来の姿を知った仮想人格(予言機械)の対決というふしぎな形でそれが示されていく(”他...
安部公房は特殊な場面設定(このためしばしばSFと分類される)を行い、その中で人間という存在の不確かさを表現し続けてきた。 この作品でも、予言機械を開発した研究所所長と、その人格を入力され、さらに将来の姿を知った仮想人格(予言機械)の対決というふしぎな形でそれが示されていく(”他人の顔”は整形された人間の人格が変わる話しだし、名刺に人格をとられるといった寓意短篇もある)。 安部公房は私が高校時代に読み漁った小説家であり、20代までに何度か読み返し、その都度楽しんだ記憶がある。しかし、今回読み返してあまり大きな感動を得なかったのは、ストーリーを記憶していた為だろう。なぜなら、安部公房の作品はエモーショナルな楽しみや、文体云々で評価される作品ではなく、その寓意性の中で遊ぶ作品であり、その結果ストーリーが読めてしまうと楽しみが半減してしまう。
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昔むかしに読んだのに、今なお印象が強い本。 これをきっかけに安部公房を読みたいと思った。 SF感、物語の構成、非常に面白く、引き込まれる。
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1959年の本かぁ、すごいなぁ。現代に読むと、ちょっと無理のある科学はファンタジーとして、世界観の古さはそれはそれで味があって、面白かった。
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幼年期の終わりを彷彿とさせるようなストーリーだと思った。技術や現実の妥当性などに突っ込むのは野暮だが、どこ前の可能性を予見し、許容するかという点については地球に生命が生き残っている分、幼年期の終わりよりも現代社会に対して示唆に富んだ作品になっていると思う。
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未来を肯定するでも否定するでもなく、「断絶」したものとして捉えるというのが新鮮だった。未来が日常を食い破って生存するまで、ノンストップで進んでいく感じ。 予言装置が宣告する未来を、感情的に否定することしかできなかった主人公と、現状打破の希望とみて頑強に支持した頼木たち、両方とも極端だけど、ちょっとずつ解る面もあった。 機械が語る激変した未来を信じろというのはやはり受け入れがたいし、一方で来るべき豊かな未来があるというのなら、例えそれが現在の価値を無に帰すものであっても、潰そうとするのは計り知れない罪である…。
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もし未来が見通せたら、とは誰しもが思うことであるが、本当に未来が見通せてしまったら。。。その未来を抱えて生きていくことに耐えられるのだろうか。なにが起こるか分からない現在を積み重ねることが生きるということで、「未来」という概念は意味がないのではないか。 博士は、読者の感覚に近い登場人物として設定されている。その博士が、最後の場面でうちのめされる。 一番いけないのは、自分自身が信じられなくなってしまったことだった。‥やはり、機械は、すべてを正確に見とおしていたのかもしれない。 運命を信じるか、人間の自由意志を信じるか。大きな問いを発しているという意味で、まさにSFだった。
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最初から最後までめまぐるしく展開していくのに、読み手としては取り残されなかった。ずっと面白かった。ん
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村上春樹以前の日本文学の名作を読み直す。以下引用。 『つまり先生は、やはりその未来には、耐えられなかった。結局先生は、未来というものを、日常の連続としてしか想像できなかったんだ。その限りでは、予言機に大きな期待をよせていらっしゃったとしても、断絶した未来……この現実を否定し、破壊してしまうかもしれないような、飛躍した未来には、やはりついて行くことが出来なかった』 『いや、殺人をそんなふうに、一般論でかたづけるのはいけないよ。人殺しが悪いのは、それが相手の肉体を奪うからでなく、未来を奪うからなんだ。われわれはよく、命が惜しいという……考えてみれば、その命とは、要するに未来のことなんだな』
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1959年に安部公房が発表した、近未来ディストピアSF小説。 世界に影響を与えた日本のSF文学として読んでおくべきだと思う。若干の読みにくさもあるが、読む価値アリ。 未来を予言する電子頭脳(AI)が開発され、その実験としてある男の未来が予言された。主人公・勝見博士はその男を観察...
1959年に安部公房が発表した、近未来ディストピアSF小説。 世界に影響を与えた日本のSF文学として読んでおくべきだと思う。若干の読みにくさもあるが、読む価値アリ。 未来を予言する電子頭脳(AI)が開発され、その実験としてある男の未来が予言された。主人公・勝見博士はその男を観察していると、その男が死亡するという事件が起こる。そこから物語はミステリーとして展開していくと思いきや…… 裏の世界で動く堕胎手術をした胎児のブローカーの話になり、さらにその胎児は水棲人間の開発実験に使われている衝撃的な事実を知る。 そして全てを指示していたのは、勝見自身(の脳を電子頭脳にかけ、そこに現れる意思)だった。 ----- MEMO: 333 (あとがき) さて、本から目をあげれば、そこにはあなたの現実がひろがっている……勝見博士の言葉をかりれば、この世で一番おそろしいものは、もっとも身近なものの中にあらわれる、異常なものの発見らしいのである。
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