功名が辻 新装版(四) の商品レビュー
才女千代と律義者の夫一豊が戦国時代を出世していく話。 一豊が土佐国の領主となった途端に、千代の手が夫に届きにくくなってしまい、最後は一抹の哀しさを感じた。(HPの日記より) ※2005.12.16購入 2005.12.25読了 売却済み
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完結編。 しかし、この夫婦、最後は幸せだったのだろうか。 分不相応にも二十四万石の大名となり、しかも長曾我部の旧臣たちは山内一豊を認めようしない。 ヒステリックなくらい力で弾圧しようとする一豊と、懐柔策を提言する千代。 ふたりの思いは最後まですれ違う。 千代は後悔した。 身に余る褒賞を受け、上手く抵抗を抑える術を持たない夫を見て、鼻白む。 自分の提言を聞く耳すら持たなくなった夫を見て、こんなはずでは…と思う。 この二人には、どうも夫婦の間にある機微が欠けているような気がした。 千代が夫を操作する姿は、過保護な教育ママが息子を操っているように見える。 微塵も尊敬とかないよね。 築城に関しても、本職を差し置いて意見を言うのだけど、直接言うのではなく、伊右衛門の弟に入れ知恵をする小賢しさ。 「女の身で築城のことにまで口を出すなどとはいかがわしうございますから、康豊殿のお考えとして殿に申しあげなさい」だってさ。 しかし折々に顔をのぞかせる司馬遼太郎らしい目線。 「いつの時代、いつの場合でも、人間の十中八九は定見もなく風次第で動く、というのが正直なところ、浮世の姿でござるよ」 「人々の暮らしに希望をもたせる、というのが国主の政治のかなめどころではありませぬか」 何百年たっても、人の世とは変わらぬものよの。
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真面目さだけが取り柄のパッとしない一豊が、妻の才女・千代に導かれながら戦国時代を生き抜き、土佐藩主に成り上がるまでの物語。 男の自分としては、不器用にもひたむきに立身を目指す一豊の生きさまに共感。 一方で、千代の眩しいほどの才覚に、時に感動しつつ時にイラッとするのも自分が男だから...
真面目さだけが取り柄のパッとしない一豊が、妻の才女・千代に導かれながら戦国時代を生き抜き、土佐藩主に成り上がるまでの物語。 男の自分としては、不器用にもひたむきに立身を目指す一豊の生きさまに共感。 一方で、千代の眩しいほどの才覚に、時に感動しつつ時にイラッとするのも自分が男だからか。
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功名の形は人それぞれ。 現代でも通じる生き方。 必死にがむしゃらに武功だけを求めていくだけじゃ、限界も見えるし、先が閉ざされることもある。 細く?長く生きた成功例。ただ、成功してもまたその先は沼。
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律儀だけが取り柄の暗愚な国主。 本書を読んで、それ以外のイメージが湧かない。 堂々たる、千代の手綱さばきだけがクローズアップされる。 司馬遼太郎には珍しく、女性が主人公。 繊細にして、大胆な千代の性格を見事に描ききっている。
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山内一豊と千代の一代記。 山内一豊(伊右衛門)は千代の作品である という軸に貫かれた作品。司馬遼太郎が描く主人公に共通する快活さや明晰や、人間的魅力は伊右衛門ではなくどちらかというと千代にそれが見いだされている。 出世や功名、その前提としての主人との関係というものを当時の武...
山内一豊と千代の一代記。 山内一豊(伊右衛門)は千代の作品である という軸に貫かれた作品。司馬遼太郎が描く主人公に共通する快活さや明晰や、人間的魅力は伊右衛門ではなくどちらかというと千代にそれが見いだされている。 出世や功名、その前提としての主人との関係というものを当時の武士、武将がどのように捉えていたか(江戸時代以降のいわゆる忠義や礼節重視のあり方ではない)ということを繰り返し描いてくれるのですが、こういう当日の「普通の感覚」的なものは、時代をつくった英雄による物語では描きにくいし、想像しにくいわけです。伊右衛門という一人の特別の才のない武士の目線で語られるからこそ、家を興すことに対する強力な執念や、戦場に赴く怖さや、一つ一つの判断の難しさが分かる。 また、この作品の価値は、『新史太閤記』では描かれなかった秀吉の晩年を描いたことにもあるように思う。(『関ヶ原』にも描かれているのかもしれませんがまだ読んでない)司馬遼太郎に「日本人の傑作」とまで言わしめた秀吉も、その晩節は非常に醜く、後世にもさまざまな禍根を残すものでしたが、その変容を「家を興す、残す」という戦国的発想から描き、かつ土佐入国後の伊右衛門とも重ねながら描いたのはなるほど、とうならせるものだった。 伊右衛門の土佐での国造りの影響がその後幕末に至るまでどのような影響を残したのか、それこそ圧倒的な竜馬びいきの司馬遼太郎がどのように結末を描くのかとドキドキしながら読み進めたがある意味拍子抜けするほど淡白な描き方でなるほど司馬遼太郎らしい、と感じる作品でした。
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信長、秀吉、家康に仕え、土佐藩主に上り詰めた山内一豊とその妻 千代の物語。(小説では)ボンクラな一豊を千代が励まし、煽て、苦言しながらもワンチームで生きていく姿が、なんとも微笑ましい。 一豊のボンクラっぷりが、自分を見ているようで、なんだか親近感だわ。
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掛川城主6万石になった山内一豊(伊右衛門)は徳川方への忠誠を尽くし、関が原の合戦を経て、土佐二十四万石の領主になる。奥方・千代は大坂の屋敷に篭って関が原の合戦まで主人の帰りを待っていた。その後、土佐に住むことになるが、土佐の領主になった主人の変貌と領民への誹謗な行ないに千代の心は...
掛川城主6万石になった山内一豊(伊右衛門)は徳川方への忠誠を尽くし、関が原の合戦を経て、土佐二十四万石の領主になる。奥方・千代は大坂の屋敷に篭って関が原の合戦まで主人の帰りを待っていた。その後、土佐に住むことになるが、土佐の領主になった主人の変貌と領民への誹謗な行ないに千代の心は塞いでいく。シリーズ完結編。
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大河ドラマにもなった大人気歴史小説の最終巻。この巻の本編では、関ヶ原の戦いから土佐での地位を築くまでが描かれ、その後「あとがき」として、主人公である山内夫妻の最晩年の様子が描写されている。本編のラストは後味のあまりよくないものであるが、これが本書をただの出世物語で終わらせない深み...
大河ドラマにもなった大人気歴史小説の最終巻。この巻の本編では、関ヶ原の戦いから土佐での地位を築くまでが描かれ、その後「あとがき」として、主人公である山内夫妻の最晩年の様子が描写されている。本編のラストは後味のあまりよくないものであるが、これが本書をただの出世物語で終わらせない深みを与えていると思う。
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最終巻はとにかく怒涛の展開でぐいぐい引き込まれて読了。 家康が天下をとり、一豊と千代の最期まで。 ここまで読んで、一豊と千代のほのぼのとしたやり取りにほっこりしていただけに、後半一豊が土佐の国主になるあたりからなんだかもう読むのがつらくなる。 確かに、身分不相応な地位を得ると人はおろかになるのかもしれない。 でも、一豊には最後まで千代に相談してほしかった。 二人三脚でここまで来たのに……と思ってしまうほど、最期が切ない。 ただ、種崎事件の後、「あとがき」としてその後の二人が描かれているけれども、そこでは二人は仲睦まじくしていたようなので、この事件は二人の間にそこまでのことではなかったのかな? と思ったり。 いや、もしかしたら千代はあの事件ですべてをあきらめたのかもしれないけど……うーん。 ただ一つだけわかったのは、歴史小説意外と面白いってことで(笑) 次は何を詠もうかな♪
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