人間の條件(中) の商品レビュー
前巻の終盤、主人公梶が憲兵隊との衝突が原因で、召集令状が届いて終了した。中巻では、梶が軍隊に所属して、その後、戦場に赴いて本格的に戦闘するまでが大きな流れである。 前巻に続いて、組織としての軍隊の存在が記述されている。そこでは、組織間での上下関係の厳しさ、また異性に対する異常...
前巻の終盤、主人公梶が憲兵隊との衝突が原因で、召集令状が届いて終了した。中巻では、梶が軍隊に所属して、その後、戦場に赴いて本格的に戦闘するまでが大きな流れである。 前巻に続いて、組織としての軍隊の存在が記述されている。そこでは、組織間での上下関係の厳しさ、また異性に対する異常な執着、妄想など、良くも悪くも人間の内面が垣間見える。そこでの暮らしはただ理不尽で、合理的な判断が通用しない。そのような状況下で、梶は初めは特に変わった様子はなかったものの、物語が後半に進むにつれて、軍隊の論理に飲み込まれていき、かつての上司のように、威圧的な雰囲気に至るのは印象的である。 自分はまともだと思ってたつもりが、いつのまにか組織の価値観に染まっていき、組織の論理で物事を判断する様子は傍から見て恐ろしい。人間が集団に所属すると、一人でいるときよりも理性が正常に働かないことは、この物語に限らず、現代の日本の組織に当てはまるのではないだろうか。
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いよいよ軍隊に入れられて、初年と2年目。軍の不条理にどこまで屈するのか、ヒューマニズムの実験は続く。しかし、ドキュメンタリー調でもあり、われわれ戦争を知らない世代は読んだ方がいい。いかに不条理かがよくわかるから。
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軍需産業で行われる捕虜に対する理不尽な振る舞いに耐えきれず、反抗してしまった主人公は、兵役免除の特典を取り消され、徴兵される。今度はさらに理不尽な組織である「軍」で過ごすことになる。まともに生きようとすればするほど、まともでない方法でなければ生きていけない環境に押し込まれるという...
軍需産業で行われる捕虜に対する理不尽な振る舞いに耐えきれず、反抗してしまった主人公は、兵役免除の特典を取り消され、徴兵される。今度はさらに理不尽な組織である「軍」で過ごすことになる。まともに生きようとすればするほど、まともでない方法でなければ生きていけない環境に押し込まれるという悲惨な状況。「正しさ」の基準も変容してしまうが、自分であったらどうするかを考えさせられる。
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梶は1部2部の方では義憤に基づいて行動してたように見えたがこの3部4部では僻地での軍隊という閉塞した中では私怨との混在が目立つ。作者の意図はどこにあるのか次巻に期待。
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軍隊という人間性を無視した組織のひどさを素晴らしい描写で描いている。しかし集団心理の恐ろしさと体罰の恐怖により多くのものは従順にしたがう。自分だったら梶上等兵のように振る舞えるだろうかと自問自答してしまう。日本軍という組織はこれほど腐敗したものだったのだ。おそらく他国の軍隊もほと...
軍隊という人間性を無視した組織のひどさを素晴らしい描写で描いている。しかし集団心理の恐ろしさと体罰の恐怖により多くのものは従順にしたがう。自分だったら梶上等兵のように振る舞えるだろうかと自問自答してしまう。日本軍という組織はこれほど腐敗したものだったのだ。おそらく他国の軍隊もほとんどこの時代はにたりよったりのところがあったのだろうと思うが、日本軍の精神論のひどさは戦争による被害を広げた。
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組織において厄介なのは、自分の哲学を持ち、その哲学が組織の慣習を壊す程の影響力を持ち、尚且つ、自分勝手な中身である場合だ。つまり、会社に社畜として扱われるなら、会社の金なぞ、使ってしまえ。お前らもそうしろ、と。この小説の登場人物である梶は、その点で危うい。自分だけ、あるいは自分の...
組織において厄介なのは、自分の哲学を持ち、その哲学が組織の慣習を壊す程の影響力を持ち、尚且つ、自分勝手な中身である場合だ。つまり、会社に社畜として扱われるなら、会社の金なぞ、使ってしまえ。お前らもそうしろ、と。この小説の登場人物である梶は、その点で危うい。自分だけ、あるいは自分の身の回りだけは、戦争で生き延びたいと強く願っている。強盗に襲われ、他人が殺されても、そのような考えなのか。つまりは、戦争に対し不勉強な輩が、誤った自己主張をすると厄介なのである。 しかし、圧倒的火力を前に、死すべき運命を承知した時。理不尽を押し付けられた時。人はどのような心理状態に陥り、どのような行動を取るのか。戦争や軍隊といった不条理な中で、この小説は面白い。 さて、圧倒的火力が目前。次は最終巻。未成熟な哲学はどうするのか。
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過酷な軍隊生活、その中で自分の信念と弱さの間で葛藤する梶。ソ満国境に配備されて、新城の脱走や吉田のあっけない病死、小原の自殺(事故死)。そして病気に倒れて、徳永看護婦や当番に配された中尉一家との絡み。そして再度のソ満国境への配備、そこで再会する景山、梶が教育に当たった新兵。いよい...
過酷な軍隊生活、その中で自分の信念と弱さの間で葛藤する梶。ソ満国境に配備されて、新城の脱走や吉田のあっけない病死、小原の自殺(事故死)。そして病気に倒れて、徳永看護婦や当番に配された中尉一家との絡み。そして再度のソ満国境への配備、そこで再会する景山、梶が教育に当たった新兵。いよいよ日ソ開戦となってから関東軍の大混乱と体たらくぶり、軍の理不尽との対決。そしてソ軍が陣地へ前進してくるところで中巻は終わります。 それにしても人物の心情描写とかは相変わらず素晴らしい。寺田や田代、鳴戸なんて新兵たちもおもしろい。 結局戦争なんていかに賛美しようとしたってこんなもんでしょう。
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090316 by 『戦争の世紀を超えて』 満州での日本人を通して戦争の深層に迫る。1300万部。
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敵は古兵じゃないんだからね。ここだよ。軍隊なんだよ。初年兵のときには誰でも俺やお前が思うようにお恩んだ。ところが、お前達が二年兵になってみろ。今思っているようにそのときにも思うやつがどれだけいるかな?問題はね、嗚戸、人間をそんなふうに変えてしまう制度なんだよ
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