不運な女 の商品レビュー
2008年12月27日~28日。 ずっと読むのを拒んでいた作品。 だって、これを読んでしまったら、もう彼の「新作」を読む機会が永遠になくなってしまうから。 結局は読んでしまった……。 古今東西を問わず、僕にとって一番大切な作家。 「ハンバーガー殺人事件」と「鳥...
2008年12月27日~28日。 ずっと読むのを拒んでいた作品。 だって、これを読んでしまったら、もう彼の「新作」を読む機会が永遠になくなってしまうから。 結局は読んでしまった……。 古今東西を問わず、僕にとって一番大切な作家。 「ハンバーガー殺人事件」と「鳥の神殿」を実はまだ読んでいない。 彼を知った時にはすでに絶版になっていた。 復刻してくれないだろうか。 今のところ、もう彼の「新作」は読めない。 これこそ「不運」である。
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死後、遺品の中から発見された長編小説。 巻末の『訳者あとがき』にあるように、これまでのブローティガン文学の集大成的なポジションにあると思う。また、『アメリカの鱒釣り』や『西瓜糖の日々』などと比べるとかなりエッジが効いていて、ひりひりするような痛々しさもある。
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1984年の拳銃自殺後、遺品のなかから見つかった作品で、ファンの間でも評価はわかれているそうです。 首を吊って死んだ不運な女、の話をしたいらしいのに、どうも話はあっちへそれこっちへそれ、問題のポイントを避けて迂回しまったく関係のない思いつきを語りだしたりする。 ブローティガンらし...
1984年の拳銃自殺後、遺品のなかから見つかった作品で、ファンの間でも評価はわかれているそうです。 首を吊って死んだ不運な女、の話をしたいらしいのに、どうも話はあっちへそれこっちへそれ、問題のポイントを避けて迂回しまったく関係のない思いつきを語りだしたりする。 ブローティガンらしさと、すこし変質した彼の魂のようなものを感じて痛ましい。 死んだ女よりもっと哀れなのは忘れられた女…と、歌ったのはタカダワタルでしたね。
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◆なんとも不思議な物語です。紹介文には「47歳の孤独な男が、死んだ女友だちの不運に寄り添いながら旅をする」とありますが、あまり不運に寄り添っているという感じはしませんし、それどころか肝心の「不運」についれは旅の各地で思い出したようにすこし述べているだけで、物語自体はだんだん話の本...
◆なんとも不思議な物語です。紹介文には「47歳の孤独な男が、死んだ女友だちの不運に寄り添いながら旅をする」とありますが、あまり不運に寄り添っているという感じはしませんし、それどころか肝心の「不運」についれは旅の各地で思い出したようにすこし述べているだけで、物語自体はだんだん話の本筋から外れて行きます。 ◆そのことについては、語り手自身が物語の最後にこのように問いかけています。「なぜわたしはついにやってこなかった雷雨のことを書くのに時間を費やしたのか? その時間を使って、首吊り自殺をした女性についてもっと憐れみ深く思いやりをもって、掘り下げて考えることだってできたはずなのに (p. 144)」。語り手は「不運な女」たちについて描こうと努力をしたものの、その結果は「尻切れトンボの断片、きどったユーモア、くだらない術策」の集まった「いまいましいノート」の完成ということで終わってしまう。しかしそこには、描くために書くもの、そして書くために切り捨てるものに対する著者のまなざしがあります。なんというはかなさ。
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一言一言を纏うように読んでいかないと、身体に入ってきてくれない本です。 真剣に向きあわずには、たぶん読むことができません。 時間、かかりました。 薄い本なのに。 言葉の一つ一つがやっぱり詩のようで、この人の考える世界っていうのは、もの一つひとつが小宇宙を抱えているようなものなの...
一言一言を纏うように読んでいかないと、身体に入ってきてくれない本です。 真剣に向きあわずには、たぶん読むことができません。 時間、かかりました。 薄い本なのに。 言葉の一つ一つがやっぱり詩のようで、この人の考える世界っていうのは、もの一つひとつが小宇宙を抱えているようなものなのじゃないでしょうか。 私は解説にあった言葉にとても心惹かれました。 最善の努力を尽くしたのに、語り得なかった物語。 これは、そういう物語です。
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ゆっくりと一字一句読んでいるから、僕はまだこの本を読み終えていない。 藤本和子さんのとても哀しげな解説まであとたった5ページしかない。 あと5ページでブローティガンが終わる。 そんなことがあっていいわけがない。 決定的な何かが終わった後の世界。 作家はそれを書きつづけ...
ゆっくりと一字一句読んでいるから、僕はまだこの本を読み終えていない。 藤本和子さんのとても哀しげな解説まであとたった5ページしかない。 あと5ページでブローティガンが終わる。 そんなことがあっていいわけがない。 決定的な何かが終わった後の世界。 作家はそれを書きつづけてきた。 首を吊って死んだ不運な女の死。 だが、それは決して語ることは出来ない。 「わたし」はそれに近づこうと試みる。そして、必ず失敗する。 決して語りえないこと。 それはホノルルの交差点の真ん中で転がっている女物の靴のようなものだ。 誰も見向きもしない。 ただそれはそこにあって、今もあり続ける。 そして、それに触れることは出来ない。 僕たちはなにも語りえない。 語りえなければ、沈黙すること。 だが、世界はそこまで物語的にスマートではない。 「わたし」はがんで死につつある女性に電報を送る。 そこにはこう書いてある。 「言葉はなにもないところに咲く花々。あなたを愛している」 言葉は純粋になれる。 そして、その純粋さをほんとうにほんとうにうらやましく思う。 誰にも触れられないからっぽの言葉たち。 ブローティガンはそんな花々に囲まれながら今もまだそこにいる。
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香港でこれを読んだとき、 ブローティガンがそばにいたような気分になった。 孤独とよりそうように生きた人なんだな。 時間という時間、空間という空間、感覚という感覚をやさしく丁寧に折りたたんで ブローティガンが本にして手渡してくれた。そんな本。 ブローティガンの今までで一番好きな本。
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サンフランシスコ、カナダ、ハワイ、シカゴ…。死んだ女友達の不運に寄り添いつつ、47歳の孤独な男が過ぎゆく時間をみつめた旅。84年のピストル自殺から長い時を経て、遺品の中から一人娘が発見した最後の小説。
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