大隈重信と政党政治 の商品レビュー
本書の醍醐味は、政党を“組織”政党と“政策”政党の二つに分け、前者が自由党、後者が改進党と規定している点にある。これにより、組織の拡大・維持のため、政権と妥協・接近を図らざるを得なかった自由党とは別の、自らの政策立案能力を武器に政府と渡り合っていこうとする、新たな明治期の政党像を...
本書の醍醐味は、政党を“組織”政党と“政策”政党の二つに分け、前者が自由党、後者が改進党と規定している点にある。これにより、組織の拡大・維持のため、政権と妥協・接近を図らざるを得なかった自由党とは別の、自らの政策立案能力を武器に政府と渡り合っていこうとする、新たな明治期の政党像を描き出すことに成功している。 そして、改進党の立案能力の肝が大隈の存在であった。常に「政権復帰」を望んでいた大隈にとって、改進党は時として足枷にもなった。また、めまぐるしく変化する経済情勢は、時として大隈の武器である金融政策論に有利に働くこともあれば、不利に働くこともあった。そうした紆余曲折を経て、大隈の「言説」(=政策)は消極主義+選挙権拡大問題という形で完成形を迎え、大正3年に念願の政権復帰を果たす。そして、政権末期には憲政会を結成し、政友会に対抗する第二党を確立した。 本書は①内政と外交の関係②貨幣制度の政治的帰結③政治参加と政治対立の関係の三点から、大隈の経済政策と政党指導の軌跡を分析し、最終的には「政治対立と政治参加要求の双方を包含する野党の源流」、すなわち副題の「複数政党制の起源」こそ、大隈であると結論づける。
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