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夏草の記憶 の商品レビュー

4.1

26件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    12

  3. 3つ

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2014/10/01

故郷で医者を勤めるベン。しかし彼は30年前からある事件に関する暗い記憶を抱え続けていた。ベンの回想から徐々に事件の真相が明らかになっていく。  クックの小説を読むのはこれで三作目。はじめて読んだ作品は『緋色の記憶』という作品ですが、その作品も主人公が過去の事件を回想していくとい...

故郷で医者を勤めるベン。しかし彼は30年前からある事件に関する暗い記憶を抱え続けていた。ベンの回想から徐々に事件の真相が明らかになっていく。  クックの小説を読むのはこれで三作目。はじめて読んだ作品は『緋色の記憶』という作品ですが、その作品も主人公が過去の事件を回想していくという形式でした。  どちらの作品にも共通して言えることは主人公の語りの美しさです。今作の主人公ベンが回想する時代は15、16歳くらいの時代です。  語りの何が美しいかというと、少年時代の主人公の心情を、30年が経ち大人になってしまった現在から語るという点です。その語り口から浮かび上がってくるのはあの頃への郷愁の念と事件に対する遺恨の念、正義心に燃える感情、そしてこの作品で何より自分の心に迫ってきたのはベンの初恋の感情です。  初恋の相手がピンチに陥るのを助ける姿を妄想したり、恋愛感情を意識してからのぎくしゃくした感情、自己否定をしてしまう主人公など、その姿はいつかどこかの自分の姿と重なる人も多いと思います。そうした感情を大人になった主人公に語らせているからこそ、青春小説の青臭さとはまた違った懐かしさと切なさを感じさせられました。  何かしら事件があり、それに主人公が関わっているということは、最初の段階から匂わせているのですが、それを最後まで具体的に語らないのもクックの手法です。回想で描かれるのは日常のシーンが多くまどろっこしく感じる部分もあるかと思います。しかし、最後まで読んだ時なぜ主人公は苦悩し続けなければならなかったのか、その本当の意味が分かります。  痛快さとは無縁の作品ですが、ミステリとしても文学としても非常によくできた作品でした。 2000年版このミステリーがすごい!海外部門3位

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2013/10/11

ヒロインのケリーよりも 恋敵のメアリーや母親、シーラなど 脇の女性の方が魅力的。 時制があちこち飛び、 冗長な心理描写を漫然と読むうち混乱した。 第三者のルークがなぜそこまでこだわり続けるのか、 そこがなじめず、 ミスリードしてしまった。

Posted byブクログ

2013/10/08

 クックの本を読んだのはこれが最初。当たり!でした。記憶シリーズから全部読み、後はしらみつぶしに読んでいます。 クックの本は全般に、まー暗いけど登場人物一人一人がよくかけているし、いきいきとしていて、感情移入し易い。 心の中にしまっている小箱にそおーっと触れられる感じです。特にこ...

 クックの本を読んだのはこれが最初。当たり!でした。記憶シリーズから全部読み、後はしらみつぶしに読んでいます。 クックの本は全般に、まー暗いけど登場人物一人一人がよくかけているし、いきいきとしていて、感情移入し易い。 心の中にしまっている小箱にそおーっと触れられる感じです。特にこの本のラストは衝撃でした。胸が痛かった。

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2013/04/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ミステリーと言えるだろうが、青春犯罪小説と言いたい。 恋愛小説より美しい書き方はしていないが、十代の恋する少年の心理がこまやかに書いてある。 初恋の狂おしさと喜び、失った怒りと虚しさが鮮烈。 童貞であることを恥ずかしく思ったり、好きな女の子のピンチを救って惚れさせようとか、将来結婚する未来を妄想したりと、初恋に狂う少年の心理は日米共通だ。 主人公のささやかな悪意がきっかけになって、クラスメートたちを三十年後も苦しめていると思いこんでいるのだが、その真相は明らかにならない。 ケリーが植物状態で生きているとわかって、いっそうクラスメートたちの人生の重苦しさがのしかかってきたような気がした。

Posted byブクログ

2012/06/24

2年前に読んで以来の再読になります。他のレビュアー方が書かれている通り、道尾秀介氏の「ベスト・本格ミステリ」のうちの一冊です。私自身、直前に道尾氏の作品を読んで本書のことを思い出し、再び読むにいたりました。 クック作品の中でも、随一の、「青春」小説だと思います。ミステリー小説とし...

2年前に読んで以来の再読になります。他のレビュアー方が書かれている通り、道尾秀介氏の「ベスト・本格ミステリ」のうちの一冊です。私自身、直前に道尾氏の作品を読んで本書のことを思い出し、再び読むにいたりました。 クック作品の中でも、随一の、「青春」小説だと思います。ミステリー小説としては、「叙述トリック」によるラストの驚きと、そこにいたるまでの巧みなストーリー運び(特に、時系列を無理なく越えて語る語り口)が光っています。もちろん、叙述トリック自体を「ズルイ」と感じてしまうなら、得られるのは驚きより、戸惑いかもしれません。ストーリー展開も、事件をめぐる事態が劇的に動くわけでもなく、あくまで関係性の揺らぎと主人公の心理(苦悩、迷い、希望から絶望への転落、など)に軸足を置いたものです。そのため、「クドイ」と思う人もいるかも……(実際、私自身も、読みながらところどころで感じてました)。 しかし、それらの(彼の著作全体にも当てはまる)特徴も私には、どうしてもそう語らざるを得ないものだと思えました。トリックも、あくまで主人公の一人称視点から見た「転回」であって、わずかずつしか過去の記憶を語らない姿勢にしても、主人公の性格がなせるものだからです。そのうえで、主人公が徐々に過去の真実に向き合うよう変化していく経過をたどれば、この作品が、ただ「暗い」だけのものではないと感じられるのではないでしょうか。 私としては、主人公がヒロインに寄せる想いの描写や展開の、あまりのリアルさに、一喜一憂、我が事のように「腸が捩れる感覚」を味わいました。同時に、主人公といっしょに、美しいものに触れられた気持ちにもなれたのです。決して気軽に読める作品ではありませんが、描写の濃厚さと、待ち受けているだろう真実の息苦しさのなかに、青春小説らしい、「爽やかさ」のようなものが見いだせるのではないかと思います。未読の方は、是非。

Posted byブクログ

2012/01/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ミステリーは、自分の場合、ともすれば、先を急ぐあまり、作品を吟味し、堪能することを忘れて一息に読みすすめてしまいがちだ。 それがミステリーを読む快さのひとつかもしれないが、 走り抜けるように読み飛ばして、快感だけを記憶し、タイトルしか覚えていない場合が多い。ということでミステリーは自分にとって危険なジャンルだ。 しかし、クックの作品は、ページを手繰る手を止めさせず、かつ、文章を味わう喜びも満足させる。 物語人物の抱える謎と秘密、悲哀や心の機微、皮肉な運命は、 読む者に美しい映像浮かばせる、ビロードの手触りのような精緻な描写で綴られていく。 読書を終えたとき迷子に気づいたような心細さを感じるが、 それは今始まったことではなく、 もっと以前から迷い子の孤独を抱えながら過ごしてきたこと、 そしてこれからもそれは終わることはないのだという、深い感慨を覚える。 クックの作品の稀有な点は、生きて老いることの悲しさを改めて読む者に確認させながらも、 けしてその事実が人を打ちのめさないところだと思う。 罪も悲しみも悲惨も、美しく輝いていた場面や記憶とともに、抱えていくということを、静かに受け入れようと決心させる厳粛さが、人を惹きつけてやまないのだと思う。

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2011/11/07

道尾秀介がコラムの中で書いてたんだが、好きな推理小説を訊かれて、綾辻行人の「十角館の殺人」と共に挙げていたのが、この「夏草の記憶」。 それで図書館で借りて読んでみたが・・・。 叙述トリックに属する作品。ラストは、「おっ!」と思わせる展開もあるのだが、いかんせん風景描写が冗長。行...

道尾秀介がコラムの中で書いてたんだが、好きな推理小説を訊かれて、綾辻行人の「十角館の殺人」と共に挙げていたのが、この「夏草の記憶」。 それで図書館で借りて読んでみたが・・・。 叙述トリックに属する作品。ラストは、「おっ!」と思わせる展開もあるのだが、いかんせん風景描写が冗長。行った事もないアメリカ南部の田舎町を頭の中に描くのに苦労した。翻訳が硬すぎる印象。 内容は、名医として町の尊敬を集めるベンだが、今まで暗い記憶を胸に秘めてきた。それは30年前に起こった、ある痛ましい事件に関することだ。犠牲者となった美しい少女ケリーを最も身近に見てきたベンが、ほろ苦い初恋の回想とともにたどり着いた事件の真相は・・・。 事件は1960年代初頭の黒人公民権運動に揺れるアメリカ。それに30年後の現在の回想を織り交ぜて記述している。 黒人差別意識が色濃く残るアメリカ南部の情景を描きながら、小さな伏線も用意されており、そこそこ楽しめたかな。 ただ、のけぞるような大仕掛けなトリックは無いので、好みは分かれるだろうけど。

Posted byブクログ

2011/09/26

記憶三部作のうちのラスト。 「緋色の記憶」も「死の記憶」もまだ未読。 陰鬱とした話だが、なんか、淡々と流れる時間がうまい。引き込まれて、読みあげてしまった。 「ふともらしたたった一言が…」と、帯にある。 え、じゃ、犯人は?あの人? 未だに、分かっていません。 読解力なしかも…

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2011/07/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最後はほんとに意外だった。 なんだか切ない片思いで、読んでて私まで憎さと愛に挟まれた気持ちになってしまった。w

Posted byブクログ

2021/02/20

いやはや、結構、結末はドンデンでした。 ちょっと、予想してませんでした。 それよか、印象的なのは、60年代の南部田舎町の雰囲気。 なんだか、ミステリ版「アメリカン・グラフティ」って感じでした。

Posted byブクログ