ニヒリズムの思索 の商品レビュー
ニーチェ、ハイデガー、西谷啓治といった思想家たちの議論を参照しながら、ニヒリズムの現代的な状況について考察をおこなうとともに、そうした状況において宗教的なリアリティをどのようにして回復することができるのかという問題を論じている本です。 ニーチェのパースペクティヴ主義は、19世紀...
ニーチェ、ハイデガー、西谷啓治といった思想家たちの議論を参照しながら、ニヒリズムの現代的な状況について考察をおこなうとともに、そうした状況において宗教的なリアリティをどのようにして回復することができるのかという問題を論じている本です。 ニーチェのパースペクティヴ主義は、19世紀から20世紀にかけて広まった歴史主義の影響を受けながらも、歴史主義的認識を可能にする条件であるわれわれの世界に対する根源的な確信の崩壊それ自体が、歴史的現象であるということについての自覚を含んでいました。こうした次元でニヒリズムをとらえる立場は、どのような支えもない自己の足下を見つめる西谷啓治の「空の立場」や、独自の存在史を構想したハイデガーに引き継がれていることを、著者は指摘しています。そのうえで、現代において進行しつつあるニヒリズムについての思索を、歴史的世界における社会的実践にかかわっていくような意味の創造へとどのようにつなげていくことができるのかという問題が提起されています。 こうした問題は、たとえばニーチェによって遊戯としての価値創造の可能性として語られ、西谷によって空の立場における現成する世界への肯定として示されているとみなすこともできるでしょう。しかしハイデガーは、ニヒリズムの到来を「存在の歴運」として理解しており、人間主義的な立場からニヒリズムを超克する可能性が成り立ちえないことを明瞭にしています。著者はこうしたハイデガーの洞察を引き継いで、ニヒリズムの時代において宗教的リアリティはどのように成立しうるのかという問題にとりくんでいます。とくに、大乗仏典を中心に宗教的なテクストの解釈をめぐる問題や、死と他界、布施と供犠といった具体的なテーマについて、宗教哲学的な立場からの考察がなされています。
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