生きて愛するために の商品レビュー
1994年に『日本経済新聞』日曜版で連載された著者のエッセイをまとめた本です。 日々目にする自然についての所感も含まれていますが、著者がフランスで日本文化について講義をおこなった経験を踏まえたうえで、日本と西洋の文化のちがいについて論じた文章もあります。 森有正は、ヨーロッパ...
1994年に『日本経済新聞』日曜版で連載された著者のエッセイをまとめた本です。 日々目にする自然についての所感も含まれていますが、著者がフランスで日本文化について講義をおこなった経験を踏まえたうえで、日本と西洋の文化のちがいについて論じた文章もあります。 森有正は、ヨーロッパ精神の根源にある「経験」に向かう峻厳な道を歩き通すことにその生涯を費やしましたが、著者の文章には森のような悲壮感はありません。ヨーロッパは遠く、現代の日本文化に埋没していてはその神髄に触れることはできないことを語りながらも、どこか現在のわれわれの立っている場所から地続きであるような語りかたにも思えます。 本書は著者の晩年の作品であり、著者はこれまでの創作を通じてみずからの「経験」という深い水脈につながっているという確信があったのかもしれないのですが、どこか思想的な緊張感に欠けているような印象もあります。
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地上に生きているということが、ただそのことだけで、ほかに較べもののないほど素晴らしいことだ、と思うようになったのは、いつ頃からであろう。 ……という、一行目から、こころ打たれる。 樟の新緑がかがやくとき なんども繰り返し読みかえしています。
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辻邦生 「 行きて愛するために 」著者の文学テーマがわかる エッセイ 著者の文学テーマ *一回きりの生=現世肯定的な人生観 *生を包んでいる美〜今ここにある美に気づくことが肝心 *学問=生きる楽しさ→文学は苦悩や求道でなく、楽しむもの 生死の対比、現世肯定な人生観 *一回きり...
辻邦生 「 行きて愛するために 」著者の文学テーマがわかる エッセイ 著者の文学テーマ *一回きりの生=現世肯定的な人生観 *生を包んでいる美〜今ここにある美に気づくことが肝心 *学問=生きる楽しさ→文学は苦悩や求道でなく、楽しむもの 生死の対比、現世肯定な人生観 *一回きりの生を〜本気で生きなければ 二度と味合えない *生活が失われると分かったとき〜貴重であると思う *日常生活も〜心の眼を澄ますと花盛りのなか〜この世にいるだけで〜美しいもの、香わしいものに恵まれている *生の根拠に つねに美が存在〜美が生を包んでいる 枕草子 *四季折々に生きる歓喜が書かれている=幸福の教典 *清少納言は 感性の人→日常に細かく喜びを感じている 窓=建築上の機能以上の働きを持っている *窓を出入りするのは 我々の目線→夢想性を呼び起こす *窓に 深い孤独、人生の哀歓が感じられる むやみに雲が好きだった *自由な旅への憧れ、人生を超えた自在の境地(静寂自在) *漱石の則天去私「空中独り唱う白雲の吟」も静寂自在の心境 川の流れ *川は急がず、淡々と流れる→運命を受け入れ、心揺るがない *川は生命感に満ち、生の根源のよう 「人間は愛するもののそばに長くいたいと思う〜人が退屈するのは 愛するものを失ったから」 「現在は 一国が自己を閉ざしては生きていけない時代〜地球の資源を大事にする世界一家主義が〜生まれつつある」 「長いこと とどまっていたいと思う場所に出会うことを〜幸福の一つに数えている〜とどまることが人生の喜び」 日本文化論 *日本人は合理的に生きるのが好きではない〜生活に彩りを添えるため 非合理なもの、余分なものを生かしておく *人間は 非合理な部分を持っている〜激しい感情など
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辻さんの人柄が滲み出ているいいエッセイ集だ。 読むだけで生きることの喜びに溢れてくる素晴らしい本だ。 とりわけ心に響いた文章を書き出してみよう。 「われわれは日常生活のなかであくせくと生きているが、心の目を澄ますとこうした花盛りのなかにいるのが見えてくる。実は、この世にいるだけで...
辻さんの人柄が滲み出ているいいエッセイ集だ。 読むだけで生きることの喜びに溢れてくる素晴らしい本だ。 とりわけ心に響いた文章を書き出してみよう。 「われわれは日常生活のなかであくせくと生きているが、心の目を澄ますとこうした花盛りのなかにいるのが見えてくる。実は、この世にいるだけで、われわれは美しいもの、香しいものに恵まれているのだ。何一つそこに付け加えるものはない。すべめは満たされている、、そう思うと急に、時計の音がゆっくり聞こえてくる。万事がゆったりと動きはじめる。何か幸せな充実感が心の奥のほうから湧き上がってくる。」 「この世に太陽もある。月もある。魂の仲間のような星もある。信じられないようなよきものに満たされている。雲がある。風がある。夏がきて、秋がくる。友達がいる。よき妻や子がいる。頼もしい男がいる。優しい女がいる。うまい酒だってあるではないか。」 聖フランシスのくだりも良い。 詩的高揚の原動力が、彼の絶対的無所有からきているという。自己と物への執着を棄て去ること。 伝記の、聖女クララとの愛の物語にも触れている。読んでみたくなった素敵なシーン。
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(2000.02.05読了)(2000.01.22購入) (「BOOK」データベースより) この一回きりの生を、両腕にひしと抱き、熱烈に、本気で生きなければ、もうそれは二度と味わうことができないのだ―愛や、恋や、そして友情。生きることの喜び、人の心のよりどころを求め続けた著者が、...
(2000.02.05読了)(2000.01.22購入) (「BOOK」データベースより) この一回きりの生を、両腕にひしと抱き、熱烈に、本気で生きなければ、もうそれは二度と味わうことができないのだ―愛や、恋や、そして友情。生きることの喜び、人の心のよりどころを求め続けた著者が、半年の病を経てつづった、心を打つ名エッセイ。 ☆辻邦生さんの本(既読) 「花のレクイエム」辻邦生著・山本容子絵、新潮社、1996.11.15
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表紙裏 この一回きりの生を、両腕にひしと抱き、熱烈に、本気で生きなければ、もうそれは二度と味わうことができないのだ――愛や、恋や、そして友情。生きることの喜び、人の心のよりどころを求め続けた著者が、半年の病を経てつづった、心を打つ名エッセイ。 目次 樟の新緑が輝くとき 季節のな...
表紙裏 この一回きりの生を、両腕にひしと抱き、熱烈に、本気で生きなければ、もうそれは二度と味わうことができないのだ――愛や、恋や、そして友情。生きることの喜び、人の心のよりどころを求め続けた著者が、半年の病を経てつづった、心を打つ名エッセイ。 目次 樟の新緑が輝くとき 季節のなかに生きること 開けた窓 閉めた窓 白い雲の流れる日々 巷に雨の降るごとく 記憶のなかにつもる雪 雲にうそぶく槍穂高 海のなかに母がいる 旗が風になびくとき パリで講義をした頃 文化人類学の時代に 翻訳できない生活風土 逝く者かくの如きか くたびれて宿かる頃や オリーヴ畑の上の月 広場という名の幸福 花物語の漂う場所 願はくは花の下にて 君よ知るや南の国 雪ですべったラム ある文学の原風景 あといくたび夏が 地図を眺めて三千里 文学という名の幸福 聖フランシスの丘で 花咲くデロスの島へ イタリア古寺巡礼 虹の橋をわたる心 聖なるロシアを求めて 三つの啓示に寄せて
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