日本書紀の謎を解く の商品レビュー
かなり難しい本です。…
かなり難しい本です。この辺のことに興味がある人でないとこの本の価値はわからないでしょうし、面白くも何ともないでしょう。古代史に興味があり、一度は日本書紀を読んだ方なら、是非お薦めです。
文庫OFF
中国の實錄や史書といった書物も、基になる史料があってそれを編纂したものなので、『日本書紀』にも原典があるというのはよくよく考えてみれば当たり前なのに、何故か新鮮だった。『日本書紀』の場合は『隋書』や『漢書』など歴史の授業でも聞くような有名どころから、素人は耳慣れない書物まで色々あ...
中国の實錄や史書といった書物も、基になる史料があってそれを編纂したものなので、『日本書紀』にも原典があるというのはよくよく考えてみれば当たり前なのに、何故か新鮮だった。『日本書紀』の場合は『隋書』や『漢書』など歴史の授業でも聞くような有名どころから、素人は耳慣れない書物まで色々あり、そういった種々の原典から文章を抜き出して、単語を入れ替え、言い回しを必要に応じて変え、潤色に使ったらしい。 思えば、役所仕事や法律文と似ていて、あくまでも作文ではなく、過去の編纂物からの引用や応用が基礎になっている。そういえば、役所や法律を引き合いに出さずとも、和歌や漢詩も言ってしまえば踏襲と引用の連続。それゆえに典故などを知っていないと理解できない。『日本書紀』も読む人が読めば「あー、あの文章からの引用か」とわかるようなものだったのだろうか。本書でもいくつか、これはここから、あれはあそこからの引用、というように紹介がなされている。 『日本書紀』は巻に因って編者が違い、大きく二分され(α群とβ群)、本書に拠れば巻14系のα群が当時の中国語ネイティブ、巻1系のβ群が日本語ネイティブによって編纂されているらしい (さらには巻30を第三分類として扱っている)。α群はさらに雄略朝と大化改新とで二つに画期されるらしい。その区分をつきとめる為に言語学や音声学、文献学など本当に幅ひろい知識が総動員されているが、著者は漢文の知識があり、それを基に研究を進めたらしい。その為、本書では『日本書紀』中にみられる「似非漢文」の紹介と、本来の正しい漢文ではどう書くべきなのかという説明もなされていて、加地伸行(二畳庵主人)『漢文法基礎』(講談社学術文庫) なんかを読むよりよっぽど為になる。 一番興味深かったのは聖徳太子が編んだと歴史の教科書に書かれている憲法十七条も、実は「似非漢文」だったということ。あんまり似非っぷりがすごいために、憲法十七条自体が「創作」なのではないかという説すらあるらしい。 本書は本当にいろんな知識を総動員しているので、日本語の変遷史や中国語の音韻など、知らないと何を言っているのかチンプンカンプンになるところも多少はあるかも知れない。逆をいえば、そういう知識があると、読んでいて一層たのしめると思う。
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日本書紀三十巻の漢文記述の違いから、実際の著者が誰であったのかを追及する。 和風漢文と中国風の正格漢文、万葉仮名に対応する漢字の音の違いなどの多寡を分析し、構成の謎を解く。他説への言及も適切。 読み下しはついているものの、漢文の実例の提示が多いのでやや読み飛ばしつつですが、興味深...
日本書紀三十巻の漢文記述の違いから、実際の著者が誰であったのかを追及する。 和風漢文と中国風の正格漢文、万葉仮名に対応する漢字の音の違いなどの多寡を分析し、構成の謎を解く。他説への言及も適切。 読み下しはついているものの、漢文の実例の提示が多いのでやや読み飛ばしつつですが、興味深く。後年の続編もあるようなので、そちらもまた。
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「 日本書紀 の謎を解く」音韻や文体から日本書紀を3区分し、成立順序、各区分の述作者を仮説検証した本 まずは 結論に驚く。最終章だけでも面白い。特に音韻学には驚いた。音韻学は 日本人や日本語のルーツを明らかにする凄い学問だと思う 学者の仮説検証過程を追体験できる。学者の...
「 日本書紀 の謎を解く」音韻や文体から日本書紀を3区分し、成立順序、各区分の述作者を仮説検証した本 まずは 結論に驚く。最終章だけでも面白い。特に音韻学には驚いた。音韻学は 日本人や日本語のルーツを明らかにする凄い学問だと思う 学者の仮説検証過程を追体験できる。学者の仕事の大変さ、学術的野心、文献が蓄積されることの意味を垣間見た本だった 序文「古事記が林なら、日本書紀は森だ。本居宣長が古事記伝により記紀の評価を逆転させた。しかしその評価は間違っている」 結語「真実はいつも簡単だ。森の周りを巡るだけでは、植生の秘密はとけない。内部を博捜し、深奥に到達して初めて、この森の真価を知った」 日本書紀の成立順序 α群(巻14〜21、24〜27) β群(巻1〜13、22〜23、28〜29) 巻30 3区分 β群(巻1〜13、22〜23、28〜29) *倭音と和化漢文により述作 *述作者は 山田史御方(文章学者) α群(巻14〜21、24〜27) *正格漢文により述作 *述作者は 唐の続守言と薩弘恪 巻30(持統天皇) *述作者は 紀朝臣清人と三宅臣藤麻呂 *21の巻末も三宅臣藤麻呂 *巻30の特異性〜倭習が少なくα群に近い
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半分以上はわかってないけど、言語の使われかたから「日本書紀」に迫っていて面白かった。個人的に「日本書紀」に思い入れはないけれど、海外の人と共にひとつの国の歴史が語れているとすれば、漠然と国際感覚みたいなものは感じた。
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日本最古の国史である「日本書紀」、それがどのように書かれたのかを、音韻や漢文の書き方などから推理する。最後に述作者までたどり着くのは大したものだ。著者の中国語の音韻学、漢文の知識があったればこそである。しかし、日本書紀は、十七条の憲法なども含めて、漢文の文章としては間違いだらけで...
日本最古の国史である「日本書紀」、それがどのように書かれたのかを、音韻や漢文の書き方などから推理する。最後に述作者までたどり着くのは大したものだ。著者の中国語の音韻学、漢文の知識があったればこそである。しかし、日本書紀は、十七条の憲法なども含めて、漢文の文章としては間違いだらけであることには驚いた。手本もなく初めて国史を書くのだから、仕方がない一面もあると思う。しかし、間違いから逆に推理が広がるのだから、それはそれで意味があった。さらに、古代人の悩みや戸惑いを伝える点でも価値がある。
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推理小説のように面白く読めました。日本書紀の成立順と述作者を特定した本です。日本書紀の漢文に対して音韻と和習などをもとに精緻な論考が展開されるので、日本書紀を読んだことのない人は、少し苦痛かと思います。憲法十七条を正格の漢文でないところがあると指摘し、成立年代を天武朝以降としてい...
推理小説のように面白く読めました。日本書紀の成立順と述作者を特定した本です。日本書紀の漢文に対して音韻と和習などをもとに精緻な論考が展開されるので、日本書紀を読んだことのない人は、少し苦痛かと思います。憲法十七条を正格の漢文でないところがあると指摘し、成立年代を天武朝以降としている(196頁)ので、著書の日本書紀の資料批判をもっと読みたくなります。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 720年に完成した日本書紀全三十巻は、わが国最初の正史である。 その記述に用いられた漢字の音韻や語法を分析した結果、渡来中国人が著わしたα群と日本人が書き継いだβ群の混在が浮き彫りになり、各巻の性格や成立順序が明らかとなってきた。 記述内容の虚実が厳密に判別できることで、書紀研究は新たな局面を迎えたといえる。 本書は、これまでわからなかった述作者を具体的に推定するなど、書紀成立の真相に迫る論考である。 [ 目次 ] 第1章 書紀研究論(森への誘い;書紀概説;書紀研究の視点 ほか) 第2章 書紀音韻論(音韻学と書紀;漢字音による書紀区分論;α群歌謡原音依拠説 ほか) 第3章 書紀文章論(倭習の指摘;誤用と奇用;倭訓に基づく誤用 ほか) 第4章 書紀編修論(α群中国人述作説;β群の正格漢文と仏教漢文;「憲法十七条」とβ群の倭習 ほか) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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一つの仕事を完成させるのに、中国語の方言のレベルまで熟知しないといけないとは! 文学部の仕事とはこんなことなのか、と、工学部出身のわたくしは、脳天を割られたようなショックを受けました。紙面が不足したのか、一番面白い所が省略気味に書かれていると思えるのは残念。
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古代史と言うと何故か「作家」が適当にロマンを語ったりするイメージがあるが、本書はまさに学問と言える。
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