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イギリス緑の庶民物語 の商品レビュー

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2009/10/04

 人が関わることで成立する自然(二次的な自然)がどのようにして庶民の生活の中に誰でもがアクセスできるオープンスペースとして位置づけられてきたかについてコモンズの囲い込みに対する市民の権利の主張の歴史をもとに論じている。  ロンドンの公園の型について、1.18世紀に始まった都市計...

 人が関わることで成立する自然(二次的な自然)がどのようにして庶民の生活の中に誰でもがアクセスできるオープンスペースとして位置づけられてきたかについてコモンズの囲い込みに対する市民の権利の主張の歴史をもとに論じている。  ロンドンの公園の型について、1.18世紀に始まった都市計画事業に沿って整備され、王家・大貴族によって施しとして開放された「貴族公園」と、2.民衆がその土地で散策したり、遊んでいた歴史的な慣習を所有者に認めさせて、公共の空間として開発から法的に護られた「庶民型公園」に大別できるとし、同じ領地が二分されたブラックヒースでは狩場として囲い込みされたグリニッチ王立公園(貴族型公園)と、そのままの形で残されたブラック・ヒース公園(庶民型公園)の対照的な光景がみられると紹介している(下写真 出典:前掲書p46)。  もとは同じ緑地でありながらグリニッジ公園の方は壁で囲われてたという点で庭的(Garden)であり、ブラック・ヒース公園は囲いがされずにそのままの自然が公共に開放されているいう点で半自然的(Park)緑地空間ということができる。  また日本とイギリスのコモンズについて、日本の入会地は入会権者が一緒に所有する共有地」であるから、丸ごと処分されるかその共有者で分割される傾向が強いが、イギリスのコモンズは所有とは関係なく、木を採ったり、家畜が草を喰ったりすることを通じての農民の「収益地」であるから、そういう伝統的な利用の必要性が薄れたことでコモンズを「公益地」として人々(権利を持っていた農民以外の都市住民を含めた)のレクリエーションの場に変える流れが展開したという指摘も興味深い。  土地の所有者は人々の休息やレクリエーションのための利用を排除までして、自分の所有権の絶対性を貫徹することはできない。イギリスではこのような理念の下に、フットパスの認定と公図の発行もなされている。土地を買ってしまえば、ゴミを捨てて周囲の環境に影響があっても文句を言わせないと考える日本と比べるとうらやましい。

Posted byブクログ