奇蹟の輝き の商品レビュー
・リチャ-ド・マシスン「奇蹟の輝き」(創元推理文庫)を読んだ。本書は第4版、去年の復刊フェアの一冊である。初版が20世紀終はりだから読んでゐても良ささうに思ふのだが、私はこれを読んでゐない。買つてもゐない。気がつかなかつたのか、読まうと思はなかつたのか。いづれにせよ私には無縁の本...
・リチャ-ド・マシスン「奇蹟の輝き」(創元推理文庫)を読んだ。本書は第4版、去年の復刊フェアの一冊である。初版が20世紀終はりだから読んでゐても良ささうに思ふのだが、私はこれを読んでゐない。買つてもゐない。気がつかなかつたのか、読まうと思はなかつたのか。いづれにせよ私には無縁の本であつた。ところが今回は気がついて買つた。本書の評価は高いやうで、映画化もされてゐるらしい。さういふのとは無関係に買つた。そして読んで、これが稀有なラブストーリーであることは分かつた。ただ、私はかういふのが好きではない。ラブの方ではなく、作品の舞台がである。「訳者あとがき」に出てゐる、プロデューサーのスティーヴン・サイモンの感動は特殊な場で愛を貫くことからくるのだらう。それが「愛と生命の神秘に魅せられ」(406頁)といふことなのであらう。確かに「愛と生命の神秘」かもしれないと思ふ。最後に輪廻転生が出てくる。私には意外だつたのだが、愛を貫くためには是非とも必要なものなのかもしれない。しかし、個人的には今一つ好きになれない物語であつた。 ・物語の構成は実に分かり易い。起は、主人公クリスの交通事故死、その死を直ちに受け入れられない。承は、死を受け入れ、クリスは「常夏の国」にゐると知る。転は、妻アンの死である。ここから冥界巡りが始まる。結は、めでたしめでたしで終はる。実を言へば、物語の目次も4つに分かれてゐる。見え見えなのである。かうも見事に構成されたことを明示する作品が多いのかどうか。しかし、起承の舞台の描写には、違和感と言ふよりも既視感とでも言ふべきものがある。既視感、つまりどこかで見たやうな感じである。これをマシスン自身は巻頭の「読者に」でかう書いてゐる、「本書の創作面はごく表面的な部分にかぎられている。 登場人物と、その人間関係だ。(原文改行)これら部分的な例外をのぞく諸々の記述は、もっぱら調査にもとづいて書いた。」 (11頁)その資料一覧が巻末にある。すべて英語文献であらう。だからタイトルから想像するだけなのだが、それでも死後の世界や霊界通信の類ではないかと思はれる。マシスンはかういふ書の都合のよい部分を抽出して物語に仕立て上げたのであらう。「かすかな声が聞こえてきた。なにを言っているのかはわからない。ぼんやりと、そばに立つ人影が見えた。両目を閉じていたの に、それが見えたんだ。」(25頁)これは、日本的に言へば、幽明境を分かつことができない主人公の様子である。「苦心してかがみこみ、自分の顔をじっと見つめた。唇は紫になり云々」(29頁)ここでもまだ死を自覚できない。最後近くで、「男のそ ばに近寄り、死んでいるらしいと知った。それにしても、ぼくのベッドにほかの患者が寝ているとはどういうことだ?」(32頁)まだかうである。要するに、これらはクリスは肉体から精神が分離して己をながめてゐるといふ、よくある臨死体験の描写の変形であらう。さういふ描写を知らなければ既視感はなからう。私はよくは知らないが、何も知らないわけではないといふ程度である。それでも見たことがある、聞いたことがあるといふ感じを免れない。これは「常夏の国」でも同様で、ここは天国の一部であるらしいが、そこに書かれてゐることもどこかで見たやうなものである。マシスンは「記されている内容は、どれも型にはまったように同じだった。」(12頁)と書いてゐる。実際にあるのかどうかは分からないが、現状での死後の世界への認識は似たやうなものであるらしい。これがこの物語の最大の欠点であらう。それをマシスンの筆力、想像力が補つたのが本作であつた。
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交通事故で死亡したクリスは、現世に愛する妻アンと子どもたちを残し「常夏の国=天国」へとたどり着いた。いずれ寿命を迎えて天国へやってくるアンを待つはずだったが、夫を失った絶望でアンは自殺してしまう。自殺したアンの魂は地獄へ囚われ、彼女を救うためにクリスは地獄へと赴くが…。天国の描写が色鮮やかで、かえって地獄の陰鬱とした描写を際立たせる。生前アンがしてくれたことを一つずつ上げ、感謝の言葉を伝えるところはなかなかぐっとくる。果たして私もこんなに妻を大切にできているだろうか。ってちょっと反省してしまうほどクリスとアンの絆は強かった。映画の方も観てみたい。
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こちらに感想を書いています。 霊界映画『奇蹟の輝き 』 (04/19) http://ameblo.jp/rimacosmos/entry-12151952068.html http://rimaroom.jugem.jp/?eid=1900
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最初の方は割と淡々と読みました。 いわゆる「天国(天国とは言われていないので)」の説明、肉体に対して精神を中心に動いている美しい世界が描写されます。 この辺を読んだだけでは「ああ、今すぐ死んでも悪くないかもな」などと思いかねないわけですが、そうはいきません。自殺をする、つまり生...
最初の方は割と淡々と読みました。 いわゆる「天国(天国とは言われていないので)」の説明、肉体に対して精神を中心に動いている美しい世界が描写されます。 この辺を読んだだけでは「ああ、今すぐ死んでも悪くないかもな」などと思いかねないわけですが、そうはいきません。自殺をする、つまり生きることを放棄したらどうなるのかという点もしっかり説明されています。 主人公の妻は主人公を追って自殺してしまいます。 死後の世界を信じず、夫(主人公)が消滅したことに絶望し、自らの存在をも消滅させてしまった妻は地獄へ落ち、自分の殻に閉じこもってしまった。そんな彼女の精神が作り出す世界は、何もかもが廃れきってしまった世界。 本書で語られるように、死というものが、肉体から解き放たれて別次元の世界へ移動することならば、自殺をすることは苦悩を引きずることに他ならないのですね。その苦悩は自分に罰を課し、陰鬱な精神状態のまま過ごすことになってしまうのです(少なくとも、この本によれば!)。 ところが、そんな妻を見捨ててはおけないと、主人公はいくつもの災厄が待つ地獄へ向かう。 死後の世界を信じず、自分の殻に閉じこもっている妻・・・彼女は魂と精神的だけの存在になることで、余計にその傾向を強めていたかもしれません。そんな彼女になんとか自分の正体(夫は肉体を持たないが生きている!)に気づいてもらおうと説得する場面は、一番泣けるところだと思います。 このように、マシスンが描き出す死後の世界は、自分のうちにあるものが世界を作り出すという点で、同氏の「ある日どこかで」と共通するところがありますね。「ある日どこかで」では、主人公のタイムスリップを可能にしたのが極度の自己催眠ともいえるものでしたから・・・。 最後に、読んでいて349ページが少し気になっていたのですが、アマゾンのレビューによれば、原本の1ページ分が脱落しているとのこと。349ページの「こんどは自分の足で体を支えている」の前には「身を起こした(p.349)」とありますが、この間に「よろめいて、へたり込み、再び立ち上がり」という描写が入って「なんとか自分の足で体を支えている」と続くらしいのです。主人公の説得に、彼女がいかにダメージを受けているかがより鮮明になりますね。 と、長たらしく書いてしまいましたが、この本の最大のテーマは「人生とはなにか?」ということでしょう。この本を読んだ人が「生きることも一つの過程」という壮大で非科学的な視点からこの物語をみることが出来たなら、この本は人生の大切さについて”死後の世界を描き出すことで教えてくれる”、今を生きる力を与えてくれる本になると思います。
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一緒にアンコールワットに行った方が 「写真が出来たから・・・」と言われ 近所なのでお邪魔すると写真には 多くの円球が写っていた。 「オーブ」と言うエネルギー体との事・・・ その他色々な不思議な現象の話をしてもらった。 彼女が薦めるスピリチュアルの入門編 これがノンフィクションで実証性があれば もっと入り込めたかもしれない。 ストーリー設定は面白いし「現実的に起こり 得る」話なのかもしれない。 しかしまだ半信半疑なまま・・・
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死後の世界観についてのマシスン説。 キリスト教・西洋的というだけではないと思う。 地獄での描写はホラー系の作品を描き・作る筆者の腕の見せ所。 一方で「地獄をぼくらの天国に」の章 355ページからのクリスの独白、呼びかけは あまりに人間(男・夫)としてピュアでロマンチックで感動的。...
死後の世界観についてのマシスン説。 キリスト教・西洋的というだけではないと思う。 地獄での描写はホラー系の作品を描き・作る筆者の腕の見せ所。 一方で「地獄をぼくらの天国に」の章 355ページからのクリスの独白、呼びかけは あまりに人間(男・夫)としてピュアでロマンチックで感動的。 困難があるとはいえ死者同士の物語なので『ある日どこかで』 で感じたようなどうしようもなさの中で いかにそのときを充実させる為に力を注ぎ、 喪失することの悲しみというものは薄い。 ただ、人の心や認識が開いている状態を保つことが 生きていても死んでいても重要ということは伝わった。 実もふたもない・いやらしい結末の短編も読んだけど、 根はロマンチストで希望を捨てない人なのだと思う
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