蒲生邸事件 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
面白くなるまでが、長い。 タイムスリップするまでの前置きも、長い。 ようやく面白くなってきたと思った中盤、けれどラストは無難にまとまってしまった印象。 もっとドラマチックな展開を期待していただけに、ちょっと拍子抜け。登場人物も無意味に思わせぶりなんだよなぁ。最後に出てきた主人公の祖母とかも、もっと何かあるような雰囲気がしたんだが。勘繰りすぎ? ちなみに私はずっとふきが犯人だと思って、終始怪しんでいたので、違うじゃねぇかと自分につっこみ。
Posted by
この本と同時に、江原啓之氏の「傷つくあなたへ」を読んだのだが、その中に「蒲生邸事件」の内容とのちょっとした面白い偶然があった。 それは、「日本人が戦前に持っていた美しい心を、現代人は失っている」という主旨のことが書かれていたことだ。 この話は、タイムスリップというSFネタが扱...
この本と同時に、江原啓之氏の「傷つくあなたへ」を読んだのだが、その中に「蒲生邸事件」の内容とのちょっとした面白い偶然があった。 それは、「日本人が戦前に持っていた美しい心を、現代人は失っている」という主旨のことが書かれていたことだ。 この話は、タイムスリップというSFネタが扱われているけれど、タイムスリップネタというくくりにしてしまうには、味気ない。 私が読み取ったのは、そのミステリのからくりの面白さよりも、戦前の時代に生きる人を身近に見て、現代人が心の在り方を変えていく物語だった。 学歴のあるなしで苦労した団塊の世代とその次世代の受験に追われた子供たち。 物質至上主義になって、物にあふれ豊かになったはずの日本。 そこにかつてあって失われた、失われたことにすら気付かずに過ごしてきた精神を主人公はタイムスリップした世界で目の当たりにする。 これはただ、その時代の物語を書くだけでは伝えきれないものがある。寒さや不便さを描き、現代の物質社会の豊かさや恩恵を確認したり、逆に現代人が見失ってしまった心遣いや人としての在り方といったものを列挙するには、現代人の視点があった方がいい。現代人である主人公に、自らの体験として、こんなにも違うと明確に語らせた方がいい。 受験に失敗したら負けなのか・・・いや、そうではないでしょうと、著者はそんなメッセージをも具体的に伝えたかったのではないだろうか。 受験うんぬんは、2010年の今となっては少し古くさい話かもしれないが、勝ち負けや結果ではなく、自分の信念で生きよと・・簡単にまとめすぎたかもしれないが、そんな風に読者を励ましてくれているように思う。 ネタばれになってしまうかもしれないが、最後のほうで歴史について図書館で調べるようになる主人公の姿に、ここにも密かなメッセージを感じたのは私の勘ぐりすぎだろうか。 お仕着せの、年表や教科書で学ぶことが勉強・・つまり学びの本質ではないということ。 学校で学んだことは、学びたいことの道しるべであり、知識の枠組みというか地図を与えられているだけのことなのだ。歴史でいえば、歴史全体の大雑把な流れを学ぶのが学校であり、その大雑把な知識があるからこそ、2.26事件に興味を持ったときに、2.26事件を中心に据えて調べていくことが可能になる。 そして、本当の学びとは、知りたいこと、興味のあることを自ら調べていくことなのであって、それは言いかえれば、好奇心を満たすことであり、それこそが学びの本質なのだ。 主人公が自ら図書館に通ったように。 そしておそらく著者ご本人がまさに2.26事件に関して多くの書物を漁ったように。 感想はこの程度にして。 ミステリのトリックとしては、300頁を超えたあたりで、犯人はこの人以外にないでしょうと目星をつけたのだけれど、まんまと著者のミスリードに引っかかってしまいました。
Posted by
昭和11年、この本の中にも書かれていたが今ではスイッチひとつで出来ることも、昭和11年という時代には一手間一手間すべてが人間の手で行われていた。それは不便であったとしても、人間らしく温かみがあったのかもしれない。ひとつひとつの労働の重みが今とはぜんぜん違う時代だったのだろう。どん...
昭和11年、この本の中にも書かれていたが今ではスイッチひとつで出来ることも、昭和11年という時代には一手間一手間すべてが人間の手で行われていた。それは不便であったとしても、人間らしく温かみがあったのかもしれない。ひとつひとつの労働の重みが今とはぜんぜん違う時代だったのだろう。どんな仕事にも重みがあり、生きることに対して今よりもっと必死でひたむきだったのかな?などと思った。読んでいて、時代背景の描かれ方がとても印象的だった。 物語としては、大学受験に落ちてしまった主人公が、昭和11年にタイムトリップする。そこは昭和11年。蒲生邸でおきる殺人事件、226事件真っ只中、異常事態の中で異常事態が起こってしまう。タイムトリップ先の昭和11年は、主人公の常識が通じる世界ではなく、あちこちと首を突っ込み、蒲生邸の人々と接しながら、いろいろな謎を解き明かそうとする主人公の姿にヒヤヒヤしながら、ぐいぐい引き込まれていった。どういう経緯で、どういう理由があって、蒲生大将が死を選び、自分の意思を残そうとしたのか・・・・謎が明るみになったとき、それぞれの人間の人生をかけた「生き様」を感じた。また、ふきとの出会いもこの物語の中では非常に重要なキーポイントとなるわけで、タイムトリップを組み込んだ時の流れをうまく活用し、違和感なくタイムトリップを受け入れることが出来た。非常に長編なのだが、中だるみすることなく一気に読み進めてしまった。 タイムトラベラーの「未来(結末)を知っているのに過去や歴史を変えることは出来ない、小さなことは変えることが出来ても大きな歴史の流れは決して変えることが出来ない」という苦悩、彼が選んだ選択と生き方、心を揺るがされた気がする。未来を知ったからってどうすることも出来ないし、たとえタイムトラベラーであっても一人の人間の力は歴史の中でとても小さいもので、未来や過去など関係なく、ただ人は一生懸命その時代を生きるしかないのだと思う。そうやって、時代は流れていくのだろう。「今をひたすら生きる」ということこそが「時代」なのかと思う。そんな風に、この物語は単純なSFものではなくて、はっとさせられることも多い物語だった。私がタイムトラベラーだったらどんな生き方を選んだだろう?そんなことを読後にふと考えてしまった。結末に気になることすべてが描かれていて、ラストは非常に感慨深いものがあった。主人公の思いがよくわかる気がする。
Posted by
タイトルに覚えがあったので、期待して読みました。結果としては少し期待し過ぎてしまったようで、少し厳しい★3つに。宮部みゆきさんの作品の主人公はたいていが大好きなのですが、今回の尾崎孝史くんはイマイチでした。それでも、それがいまどきの若者であり、タイムトリップした時の正しいリアルな...
タイトルに覚えがあったので、期待して読みました。結果としては少し期待し過ぎてしまったようで、少し厳しい★3つに。宮部みゆきさんの作品の主人公はたいていが大好きなのですが、今回の尾崎孝史くんはイマイチでした。それでも、それがいまどきの若者であり、タイムトリップした時の正しいリアルな反応だと思いました。わかっているけれども、彼の行動に少しイライラしつつ・・(笑)でもラストの手紙には泣いてしまいました。 2009’6’5
Posted by
設定がとても面白かったです。 自分が226事件についてほとんど知らないので、知識がなかったことが残念。 226を知ってからなら、もっと楽しめるかも!
Posted by
歴史小説でもなく、ミステリーにもなりきれず、宮部さんの作品にしては切れが悪いというか。 NHKあたりがドラマ化しそうな話でしたね。
Posted by
雪の降る日に読むといい。 最後の一文がさすが。宮部作品にハまったきっかけでした。しかも受験生。タイムリーだった。 表紙はこれがいちばんいいと思う。
Posted by
2.26事件を題材に展開される物語。時代設定や人間関係はリアルで良いのだが、これと言って引き込まれるところが無かった。様々な謎が物語り後半で一気に解けて行く部分は痛快。主人公、最初偉そうにしすぎかな。
Posted by
宮部みゆきさんを強くて厳しい作家だと思いました。内容以上に、主張を凄いと思いました。別格で大切な本です。(でも好き嫌いは分かれそう)
Posted by
宮部みゆきは裏切らない。タイムとリップと二二六事件を絡めた作品。重厚な中、孝史の成長振りを楽しめる。
Posted by