キリンヤガ の商品レビュー
ヒューゴー賞受賞の連…
ヒューゴー賞受賞の連作短編集。「空にふれた少女」、胸が痛みます。
文庫OFF
#23奈良県立図書情報館ビブリオバトル「祓う」で紹介された本です。 2012.12.15 http://eventinformation.blog116.fc2.com/blog-entry-902.html?sp
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近代化を拒絶するケニアのとある部族。本書の舞台は、その伝統社会を存続させるために設立されたユートピア小惑星キリンヤガ。言ってみれば、「本当の私たち」を取り戻そう!という、反近代的でウヨクな究極の夢がもし叶うとしたら……、というSF寓話集だ。このような近代化とそれへの反動を扱う作品...
近代化を拒絶するケニアのとある部族。本書の舞台は、その伝統社会を存続させるために設立されたユートピア小惑星キリンヤガ。言ってみれば、「本当の私たち」を取り戻そう!という、反近代的でウヨクな究極の夢がもし叶うとしたら……、というSF寓話集だ。このような近代化とそれへの反動を扱う作品は研究書を含め数多あるわけだが、一定のアカデミックっぽさと文学作品としての叙情性をあわせもつ本書はその中でも抜きん出ていると思う。 その主たるテーマは、伝統を守ろうとする強い意志と、それを押し流そうとする大きな流れとの葛藤だが、多くの読者がその相矛盾するどちらの立場にも自分自身を見出しうるだろう。それは哀しく、苦しい。本書においてこの葛藤はある意味ありきたりかもしれない、冷酷な結末へと収束させられる。結局のところ人から離れて至高の価値など存在し得ないのであり、注意すべきは自らを正しい少数者と見なすに至る自己認識の段階ということなのかもしれない。 「キリンヤガは、ふたつのまったくことなるグループに分かれているようだった。日々の生活に満足してなにも考える必要のない人びとと、なにかを考えれば考えるほどわれわれが築きあげてきた社会から遠ざかってしまう人びとだ。」 なお、アカデミックな知見を踏まえた本書は、近代化をめぐる諸問題を学ぶための教科書としても面白い。例えば、至高の価値を体現する「伝統」社会が、どこにもないという本来の意味でのユートピアであるだけでなく、それさえも近代化の産物であることなども、物語の中に織り込まれている。また、近代化の問題が世代の問題、ひいては親子の問題であることが物語の通底にあるが、私にはこれが本書の性格を特徴付けている一つであるように感じられた。主人公にとってのディストピアという点では、オーウェルの『1984』との対照を考えてみるのも面白いのかも。キリンヤガの「故郷」ケニアの人がどう読むのかは気になるが、この種の問題に興味のある人にはお勧め。文学ってすごい、というのは堪能できる。
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表紙が理由で買ってなかったのを後悔、アフリカの一部族 × SFというのも新鮮だったけど考えさせられる内容で面白かった
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色んな賞を総なめにしたのはわかる、面白い。わかるけど...連作として読んでると、崩壊への最初の兆しが見えてからあとは読むのが辛かった。早く終わらせて欲しくて一気読みした気がする。 結局外界を知って出戻る、先祖帰郷するインテリは狂信者にしかすぎないのか、むずい。終わりはおじいちゃんは救われてるようでよかった。のか?むずい。
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SF。連作短編集。 初めてのレズニック作品。 一言で、傑作。なんでこの作品が絶版なのか。 テーマは"ユートピア"と"伝統"と"変化"か。 とても面白いが、読後感は正直良くない。読んでいて、とにかくもどかしい。 経営者や政...
SF。連作短編集。 初めてのレズニック作品。 一言で、傑作。なんでこの作品が絶版なのか。 テーマは"ユートピア"と"伝統"と"変化"か。 とても面白いが、読後感は正直良くない。読んでいて、とにかくもどかしい。 経営者や政治家のような、上に立つ立場の人が読むべき一冊。 むしろ、全人類が読んだほうが良いとすら思える。 物語を通して、不偏的な教訓や知識が示唆され、滅茶苦茶に考えさせられる。 評判の良い「空にふれた少女」も素晴らしかったが、個人的ベストは「マナモウキ」。 ムンドゥムグの語る物語が、ムンドゥムグ自身に跳ね返ってくる結末が、非常に切れ味鋭い。
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西洋文明に侵される前の、民族文化を、テラフォームされた惑星で保存しようという試み。 短編のオムニバス形式で進んでいく。 かなり示唆に富んで面白いというか、結局は予定調和だったという面も感じた。 何より、西洋文明を排除しようと言いながら、他の惑星に移住する技術はその西洋文めに依存し...
西洋文明に侵される前の、民族文化を、テラフォームされた惑星で保存しようという試み。 短編のオムニバス形式で進んでいく。 かなり示唆に富んで面白いというか、結局は予定調和だったという面も感じた。 何より、西洋文明を排除しようと言いながら、他の惑星に移住する技術はその西洋文めに依存している。祈祷師も、その西洋文明を最大限利用することで奇跡を実現させている。はなから、矛盾があるのだ。 いろんな賞を取っている作品だそうだ。 かなり地味だけど。 自分の理想郷を、他人を犠牲に実現しようとした男の没落譚。
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社会と言うものをトートロジーに陥らないで定義できないままに、これが学問だと言い張るのが社会学。という指摘をTwitterのどこかで目にした覚えがあります。 とはいえ、敢えて一時的に定義するなら 『社会とは、生まれ生まれて死に死にゆく人々の、流動の中に形成された、共同体』 と申せましょう。 しかし『ユートピア』という語は違う。その言葉が固定したがる”状態”は、”構成員が生まれ、死に、入れ替わることで変化する”社会ではない……。 静かなエンディングには禅の境地を感じます。
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ユートピアを”維持する”ってどういうものなのか。変化のない世界はユートピアと言えるのか、と難しい問題を提起する作品でした。
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成長と変化、歴史と進化。年代や役割、時代と共に変わる主張と頑に変えられない考え。リーダーはいずれ老害に。自分の今の居場所とこれからを考えさせられる物語。
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