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凍りついた香り の商品レビュー

3.5

28件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    10

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

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2022/09/07

自殺した恋人の過去を求めて彷徨う主人公。 隣にいるべき人がいてくれさえすれば、過去など要らない。 過去が必要なのは、あるはずだった未来の代わりに、こぼれ落ちてしまった空白を何かで満たさずにはいられない、切実な喪失感からだと思う。 知れば知るほど自分の知らなかった過去が掘り起こ...

自殺した恋人の過去を求めて彷徨う主人公。 隣にいるべき人がいてくれさえすれば、過去など要らない。 過去が必要なのは、あるはずだった未来の代わりに、こぼれ落ちてしまった空白を何かで満たさずにはいられない、切実な喪失感からだと思う。 知れば知るほど自分の知らなかった過去が掘り起こされる。 けれど、それは主人公が恋人のことを知らなかった、ということにはならない。 本当に繋がっている者同士においては、たとえそれが虚構(あるいはその人の一部)であったとしても、相手が自分に見せている部分が、その人が与えたかったものの全てなのだから。 ましてそれを貫き通したまま去っていったのであれば、それこそが相手の本質、最も大切な真実なのだと思う。 だからこそ死者の気持ちを代弁するのは不粋に過ぎる。としても、敢えて最後に香水を送った気持ちを想像で補完するならば。 語ることのなかった過去の全てを、言葉にすれば嘘になってしまう種類のものを、自分にとって唯一真実に値する、香りという形で主人公に贈りたかったのだろうか…。 それだけでもう、あぁこの人は心から愛されていたのだろうな、と、そんな風に思う。

Posted byブクログ

2021/01/26

丁寧な描写で死んだ恋人の過去を探っていく作品。 日本での話とプラハでの話が交互に来ていて、少しずつ自分の知らなかった恋人の姿が明らかになっていく構成。 自分が過去を偽られていたという虚しさや自分の知らない過去を知っている人が居るという嫉妬心を決して激情するわけではなく静謐に描き出...

丁寧な描写で死んだ恋人の過去を探っていく作品。 日本での話とプラハでの話が交互に来ていて、少しずつ自分の知らなかった恋人の姿が明らかになっていく構成。 自分が過去を偽られていたという虚しさや自分の知らない過去を知っている人が居るという嫉妬心を決して激情するわけではなく静謐に描き出していた。本当にこの人は日本語が綺麗。 最後まで読んでも、自分が教えもしなかった過去を何故香水に込めて贈ったのかは分からなかった。読み直したら何か分かるんだろうか…?

Posted byブクログ

2020/09/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 母の期待に応えるべく頑張ったあげく、押しつぶされ、逃げた息子。息子が全てでの めり込み、精神をやんでいる母。兄も母も見捨てず尽くす弟。愛した男に自殺され、原因を探るうち、男のことを何もしらなかったと気づかされる主人公。 みんな悲しい。何だか歪んでいる。  これがほんとだよ、変わっているのは貴方かも知れないよ、と言われているような、淡々とした文章。小川洋子の作品は、いつもそんな気分にさせられる。

Posted byブクログ

2016/12/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

調香師という仕事をしていた弘之が、香りによって記憶を定義付けしている部分の描写が、とても小川洋子の文章が持つ静けさと美しさにマッチしていて読んでいて、不思議な気持ちにさせられました。「凍ったばかりの明け方の湖」「締め切った書庫。埃を含んだ光」この2つが特に好きです。 主人公である涼子の恋人、弘之が死んでしまったところから始まる物語。涼子は、弘之の弟と弘之の生きた記憶を辿ったり、彼らの実家に訪れたり、プラハに旅立ちます。何が現実で、何が幻なのか。温室に孔雀とともにいた人物は何者なのか。 弘之が自殺してしまった理由も明らかにはなりませんでした。小川洋子の世界にどっぷり浸かった事による疲労感と、結局物語のなかで何が起きていたのかわからないまま終わる、突き放されたような感じがとってもすきな一冊でした。

Posted byブクログ

2014/10/12

数学の規則性が持つ静謐さや、調香師など一般的ではなく謎めいた職業を描くところが小川洋子らしくてよい。 ただ謎にうっすらと包んだまま終わるには長編だと物足りない感じもある。

Posted byブクログ

2013/08/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

30歳で突然自ら命を絶った弘之(ルーキー)と1年間同棲していた涼子の前に初めて登場した弘之の弟・彰。彰から聞く弘之の過去はあまりにもかけ離れた姿でした。その謎を求めて涼子が仙台の史子を訪問、そしてプラハへ。亡くなった弘之のスケート、数学そして香りへの天与の才能と爽やかな人柄は印象に残ります。同じ著者の「博士の愛した数式」を思い出しました。それだけに、弘之が何故死を選んだのか、何故、脚本家であるなどと履歴に嘘があったのか、など疑問のままであることが、十分に熟成していないのではないかと、やや残念です。

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2013/06/23

いかにも理科系の作家による文章という感じ。 もっと香り(調香士)について 出てくると思ったが あまりなかった。

Posted byブクログ

2012/08/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

香水工房につとめていた恋人の弘之は前触れもなく突然死んだ。自殺だった。 それによって明らかになる弘之の過去、偽りの履歴書、数学コンテストにスケート、弟の彰の存在。 何一つとして知らなかった弘之のこと。 なにか、なんでもいいから彼の足跡を探しにむかったチェコのプラハで見たもの知ったこと。 取り戻せないもの、戻れない過去、残ったのは、ともに過ごした記憶と彼からもらった香水だけ。 賢い故に生まれながらの才能の扱いに苦労して優しい性格だからこその決断だったのかな? 表現が豊富すぎてうっとりした)^o^(

Posted byブクログ

2012/05/03

全てが少しずつ説明不足という気がしたけど、 それでも描写の美しさが素晴らしいと思えた。 夢の中の物語のよう。悪い夢で、きれいな夢。 恋人が自分のために作った香水、一滴ずつ消えて行くけど 全てが無くなった時、彼女は幸せに暮らせているだろうか。

Posted byブクログ

2012/04/12

弘之の美しい鼻、あらゆるものを分類していく姿、数式を操り回答を導く様、それら1つ1つに色気があり、ため息が出た。 また、プラハの描写も丁寧で、目に浮かぶよう。 小川洋子先生は、よほど数学が苦手と見える。なぜなら、小説を通して、数式を操る人に対する尊敬と憧れの感情が溢れ出て伝わ...

弘之の美しい鼻、あらゆるものを分類していく姿、数式を操り回答を導く様、それら1つ1つに色気があり、ため息が出た。 また、プラハの描写も丁寧で、目に浮かぶよう。 小川洋子先生は、よほど数学が苦手と見える。なぜなら、小説を通して、数式を操る人に対する尊敬と憧れの感情が溢れ出て伝わるからだ。

Posted byブクログ