武満徹の音楽 の商品レビュー
なんていうか、うまい分析が見つからなくて困っている、みたいな感じ。苦労してメシアンとかベルクとかの影響を示唆している。
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本の帯にもあるとおり「武満研究のバイブル」である。 こうした伝記的書籍にありがちな、出所のわからない話が綴られているのではなく、きちんと出典、掲載が明記されているので、大変信頼できる1冊となっている。(著者P・バート氏は新聞の記事まで丁寧に保管している。) まず、音楽書籍...
本の帯にもあるとおり「武満研究のバイブル」である。 こうした伝記的書籍にありがちな、出所のわからない話が綴られているのではなく、きちんと出典、掲載が明記されているので、大変信頼できる1冊となっている。(著者P・バート氏は新聞の記事まで丁寧に保管している。) まず、音楽書籍を書くという点で、ある意味常識でもあるこうしたスタイルをこの本から学ぶべきだと思う。 原典がイギリスで出版されているということから、第1章は日本での西洋音楽の享受史が端的に説明されている。この章だけでもこの著者の能力を見ることができる。 2章からは武満の年表に沿って、純に代表的な作品を解析している。 特に、武満作品の場合、「日本」という意識と視点が非常に重要になるが、この著者の文章では、彼が外国人であることを感じさせないほど、日本という視点に立ち、つまり、武満と同じ視点から、そこに至った経過を見つめている。また、この点では、「作曲」や「邦楽」という立場からも、共感はあっても決して反論は出ないと思う。 分析対象となっている作品は、武満を代表する作品で、おもに大規模なものが中心である。したがって、晩年、合唱などの小品、映画音楽は主要な分析対象にはなってはいない。(帯には、「主要134作品」と明記されています) 分析の視点は、「音列」的なものが多く、和声的な展開やオーケストレーションなどの視点からの分析は少ない。(これは過剰な期待だと思う!) もし、下線を引くなら、すべての行に引かなければならない書籍。 それほどに、正しい記載と明晰な分析にあふれている。 こうした翻訳本にある読みづらさは一切無く、恐らく、翻訳者の小野さんと著者の2人3脚的翻訳作業から完成させたことに、敬意を表します。 日本を代表する国際的な作曲家、武満徹の作品分析は、本書を土台に国内でも盛んに進むことを期待します。
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