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エンド・ゲーム の商品レビュー

3.2

198件のお客様レビュー

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終わらないゲーム

『光の帝国』に収められた『オセロゲーム』の続編。正体不明の敵と戦い続ける排島一族の物語だ。「裏返す」「洗濯」など、耳慣れた言葉が奇妙に響く世界。白と黒の境目は曖昧なまま、終わらないゲームが続く……。

abtm

2024/06/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

常野物語の第三弾。タイトルを見ると、シリーズもこれで終わりか、と思わせますが、その真偽たるや如何に!? ・・・ で内容ですが、今回はどちらかというとモダンホラー的な風合い。 「私たち、誰かに狙われている?」「あいつらが出てきたら、「裏返す」の。分かった?」 みたいな会話がなされたかどうかは分かりませんが、主人公の時子とその母暎子は常野の血を引く特殊能力を持つ家系。 常に「あれ」と戦うことを余儀なくされた血を受け継ぐ母暎子とその娘時子。失踪した夫は「裏返」されたのか、それとも・・・。 失踪した夫の真実とは、夫の残したメモの先はなにか、「洗濯屋」の正体は、夫の家系と結婚に潜む謎等々が次第明らかに。 因みに、「光の帝国 常野物語」所収の「オセロゲーム」からのスピンオフという位置づけ。 ・・・ 今回も恩田氏のモダンホラー的ストーリーテリングにやられて、一気に一日で読了。 常野物語は、通底するテーマが超能力、超常現象、こうした能力の混合や遺伝等々。これは私の大好物分野の一つです。 でも、本作はどちらかというと、もう一つのテーマとして「不条理」みたいなものがあるように思えます。 なぜ、夫は失踪してしまったのか。なぜ我々は「あれ」と戦わなくてはならないのか。なぜ我々は常野の一族と距離を置いているのか。 不条理と併せて、語られない細部にヤキモキするのですが、これを少しずつ、気持ちよく埋めていく語りの作法が気持ちよいです。 能力の持ち主暎子と娘時子に迫る危機。否、これは救いなのか? 「洗濯屋」は味方なのか敵なのか。 最後の大団円ではモダンホラー的要素はすっかり抜けて、むしろファンタジー的なテイストでありました。 ・・・ ちなみにですが、本作で「特殊能力をすっかり失い、そして記憶も失う。だけどその後は普通の人生を生きていける」というような選択についてのくだりがありました。 能力を持った暎子と時子の母子は、その提案に逡巡するのですが、それを読んで感じたこと。 「記憶とはアイデンティティそのもの」 自分を失うという事は具体的にどういうことか。つまりは記憶を失うということなのでは、と思います。 それまでの良いこと悪いこと、頑張ったこと悲しかったこと等すべてひっくるめて今の自分が形成されているのですが、それを「はい、リセットしまーす」と言われて即座に「賛成!」といえる人は少ないと思います。やはり自分の自我・自己に愛着が少なからずあるのではないでしょうか。でも、この自我の記憶が無くなったら、どう感じるのでしょうか?不安じゃないですか? ・・・ そういうことを考えると、痴呆や認知症というのはどういう状況かと。 自我・自己の記憶が辺縁から崩れつつあるのを、時に認識しながらも、何とか生きていく、そういう状況なのかな、と。 ビーカーという「自己」に水という「記憶」が入っており、割れたビーカーの底から水が漏れている。水が漏れるに従い、ビーカーのイメージがどんどん消えてゆき、水が無くなった瞬間に暗転。そういう状況なのでしょうか。 あるいは記憶喪失。記憶喪失はビーカー「自己」に傷も割れ目もないのに、水が一滴も入っていないようなイメージなのでしょうか。 痴呆が進み過食が進行中の父親。彼に思いを馳せつつふと考えた事柄でした。 ・・・ ということで常野物語の第三弾でした。 モダンホラー、超能力系が好きな方でしたら楽しんで読める作品だと思います。

Posted byブクログ

2023/08/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『光の帝国 常野物語』の中の短編『オセロ』の続編。 あるものに対して嫌悪感や恐怖を抱いているのは皆同じで、それらの恐怖にどう立ち向かっていくのか、どう負けずに生きていくのか、ということは、周りの人との愛情関係も大事なんだなぁと思った。ハッピーエンドで良かった。

Posted byブクログ

2023/07/22

世界観が大好きな常野物語シリーズ。不思議な力を有する常野一族の中で「裏返す、裏返される」戦いをする拝島家、一作目からこの家族の未来が気になっててん。本作で色々明かされ面白かったんやけど、一族達についての続編出やんかなぁ、と次は一族の未来が気になる。

Posted byブクログ

2023/07/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シリーズ1作目の『オセロ・ゲーム』を深く切り込んだモノなのかな? ”裏返す”って、一族の呪いを可視化したもの? ……最近、呪術な漫画にハマっているから、そこから連想してしまいました(笑) 一族の記憶をしまいながら生きるのだし、在野に散れば向き合わなくてもいい残酷な人生だってあるのだし、それが刻刻と化け物になってしまうのかもしれない。 洗濯屋は、そんな優しい一族を救う存在であったのか? 嫌な思いや残酷なものを見たり聞いたりするぐらいなら、記憶ごと消してくれたほうがぜんぜんいい。

Posted byブクログ

2021/12/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

失踪した夫であるハジメは、自業自得とは言え妻子を面識のある男に取られて恐らく娘の結婚式にも呼ばれないんだろうなとリアリスティックに想像したらエグいなと思った。最後の別れの挨拶で何を想ったのか…余り感情移入出来なかったし、したくなかったw 読みやすいけど面白くはなかった。普通でした

Posted byブクログ

2021/08/22

おすすめの本で紹介されていたのを見て読んだ。ずいぶん読んでから、実はこれはシリーズ3作目だということに気づいた。これはこれで面白かったし他作品を読んでいなくても流れを理解できるようにはなっているが、やっぱり最初から読みたかった。うっかりだー。これから遡って前作も読むことにする。

Posted byブクログ

2020/10/24

ある家族の話。もう少し能力の描写があって、どんな事ができるのかわかった方が面白い。火浦ができることは具体的に書いてあったからわかるけど。 概念的な話になってしまっていて、すぐ寝落ちしてしまい、読了に日にちがかかってしまった。表紙が読書感想画のようだな。

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2020/10/01

1作品目と違い、完結したなと思える話でした。裏返す話を洗濯するということや、お父さんとお母さんの謎など、私は、一作目よりこちらの方が好みにあっており、とても楽しく読めました。

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2020/08/13

 1作目のオセロゲームだけ異色だったこともあり、続編が気になっていました。「裏返す・裏返される」闘いのお話かと思いきや、全く違いましたね。新たな洗濯屋が出てきたり、展開的には予想を越えてましたが、珍しく完結したと感じました。  常野にしては何の役にも立たないように思われる裏返す...

 1作目のオセロゲームだけ異色だったこともあり、続編が気になっていました。「裏返す・裏返される」闘いのお話かと思いきや、全く違いましたね。新たな洗濯屋が出てきたり、展開的には予想を越えてましたが、珍しく完結したと感じました。  常野にしては何の役にも立たないように思われる裏返す力。少数派は消える運命と言われているようで、切なくもある。お父さんだけ可哀想な気もするけど、一応の幸せが訪れて、これからも続けば良いと単純に思いました。

Posted byブクログ