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「あたりまえ」を疑う社会学 の商品レビュー

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44件のお客様レビュー

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2023/09/08

社会学のフィールドワークにおいて、研究者自身が自己自身の立場そのものを問いなおされるような経験をすることに目を向け、そうした経験から社会学者はいったいなにを学ぶことができるのかという問題について、著者自身のこれまでの体験を振り返りながら考察をおこなっている本です。 著者は、近年...

社会学のフィールドワークにおいて、研究者自身が自己自身の立場そのものを問いなおされるような経験をすることに目を向け、そうした経験から社会学者はいったいなにを学ぶことができるのかという問題について、著者自身のこれまでの体験を振り返りながら考察をおこなっている本です。 著者は、近年社会学という営みに注目が集まっているといい、社会調査士という資格制度が進められていることに触れたうえで、そこでは計量的な調査技法にかんしては充実しているものの、質的研究がやや置き去りにされているという問題点を指摘しています。調査をおこなうということは、人びとの生きている現場に踏み込んでいくことであり、調査をおこなう研究者自身が彼らとのかかわりを通じて自分自身が変わっていく過程をたどるとともに、そのような体験を通して研究者自身がこの社会を生きている人びとが生身で体験している真実に触れ、それをともに生きることになるのではないかと考えます。 本書では、このような経験をもとにしておこなわれた研究の実践例が紹介されています。佐藤郁也の『暴走族のエスノグラフィー』(1984年、新曜社)をはじめ、大衆演劇の世界に飛び込むことで書かれた鵜飼正樹の『大衆演劇への旅』(1994年、未来社)や蘭由岐子の『「病いの経験」を聞き取る―ハンセン病者のライフヒストリー』(2004年、皓星社)など、質的調査における経験そのもののもつ力を示すような例を通して、社会学という営みがもっている、客観的な調査とはべつの可能性が示されています。 著者の社会学にかける熱い思いがつたわってくる内容でした。

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2023/06/09

カテゴリー化という呪い。どんどん分節化してなにを明らかにしているのだろう。と研究に対して釈然としない時がある。興醒めというのかな。でもそれは研究者の視点やアプローチの工夫次第なのかもしれない。「世の中を質的に調べる」センス、もっと磨いていきたいなぁ。

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2020/11/22

好井さんの社会学のちょうどよいまとめになっている。被差別部落での調査でのやりとり、その具体的なやり取りから自分の立ち位置が明らかになる。 また、鵜飼正樹さんという大衆演劇に実際入ってフィールドワークしている人がいることに驚く。 ミクロ社会学って一言でまとめれるけど奥は深い。

Posted byブクログ

2017/12/30

ビジネス書に慣れてしまうと、とても読みづらい一冊。 大学時代に受けた「社会学総論二」を思い出した。 この講義もフィールドワークを専門にしていた先生のものだった。 書かれていることはむしろ興味がある内容なのに、なぜ読みづらいのか。フィールドワークの世界は対象に一体化することが...

ビジネス書に慣れてしまうと、とても読みづらい一冊。 大学時代に受けた「社会学総論二」を思い出した。 この講義もフィールドワークを専門にしていた先生のものだった。 書かれていることはむしろ興味がある内容なのに、なぜ読みづらいのか。フィールドワークの世界は対象に一体化することが求められる。 しかし、それを外の人に伝える時はスイッチを替えねばならない。 本書は、著者の思いを「好きに語ったもの」だそうだ。ならばよい。 ただ、社会学(フィールドワーク)が、専門外の人に広く理解されないのは、このスイッチの切り替えが出来ていない点にあるのではないかと感じた。

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2016/05/22

こういう社会学の存在には勇気付けられる。 岸先生の「断片のない」もよかったけど、これで学問として現実味が湧いた。 1年後とかに、社会学を少し学んでから読み直すのが楽しみ。そのとき私はどのようなスタンスだろうか。

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2014/11/14

 本書は、本学教員の好井裕明先生によって書かれた、社会学における社会調査、特に質的なフィールドワーク(聞き取り調査、会話分析、参与観察など)をめぐる一冊です。 「私たちが普段生きている意味や価値、暮らしのなかで使用する現実の言葉やさまざまにわきおこる情緒など、いわゆる質的な部分」...

 本書は、本学教員の好井裕明先生によって書かれた、社会学における社会調査、特に質的なフィールドワーク(聞き取り調査、会話分析、参与観察など)をめぐる一冊です。 「私たちが普段生きている意味や価値、暮らしのなかで使用する現実の言葉やさまざまにわきおこる情緒など、いわゆる質的な部分」(p.35)を詳細に調べようとする時、アンケート調査や質問紙調査という量的な調査方法では限界があります。そこで、用いられるのが聞き取り調査・会話分析などの質的な調査手法です。  とはいえ、本書は、そのような質的調査に関する技法や方法論、倫理などを一般的に説明するような教科書的なものではありません。「世の中を質的に調べる」うえで、著者が基本であり大切だと考える「リサーチ・マインド」について書かれた一冊であります。そのため、質的調査の入門書の「副読本」として、本書を位置付けていただくといいかもしれません。  構成としては、社会学の質的研究における古典的名作と言われる面白い論文や書籍(佐藤郁也著『暴走族のエスノグラフィー』、ガーフィンケル著「エスノメソドロジー命名の由来」等)を数多く取り上げ、各研究の概要に触れつつ、調査手法の面におけるそれぞれの特徴をわかりやすく順に解説していくというかたちをとっているので、とても読みやすいと思います。これから卒論で質的調査を行おうと考えている3年生や、大学院進学を考えている4年生にオススメの一冊です。 (ラーニング・アドバイザー/教育 SAKAI) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1271369

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2014/06/03

フィールドワークに興味があるので、読んでみた。 これまであんまりなじみのない本やったけど、自分の感覚にフィットしているような、そんな気がした。 フィールドワークは先入観を排して、徹底的に、ひとりひとりと向き合う作業である、そんな印象でした。おもしろく読めた。

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2014/05/16

エスノメソドロジーを「人々の方法」と説明してあるところ(181ページ)が分かりやすかった。ただ、社会学はそれを疑うから左翼思想となり、それを大切にする保守思想と対立すると思った。

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2014/02/12

素晴らしい本でした。構成も、文章も明快で読みやすく理解しやすい。おそらく著者が専門家として大事にしていることと通じるからだろうが、必ず「自分がこう思った感じた」ことと、客観的な事実とを、きっぱり分けて書いてある。勝手な押し付けが皆無。これほどクリアなのに、思わず引き込まれて泣いて...

素晴らしい本でした。構成も、文章も明快で読みやすく理解しやすい。おそらく著者が専門家として大事にしていることと通じるからだろうが、必ず「自分がこう思った感じた」ことと、客観的な事実とを、きっぱり分けて書いてある。勝手な押し付けが皆無。これほどクリアなのに、思わず引き込まれて泣いてしまう部分が、いくつもあった。紹介されていた本はどれも読んでみたくなった。とにかく素晴らしかった。ありがとうございました。

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2014/02/04

見えていて、やっているけど、意識されないこと。日常の様々な場面に存在するし、大衆演劇の役者内にあったり、LGBTの人々の中にあったり。 それを明らかにする方法として、質的な社会学、エスノメソドロジーがある。 既に行われた優秀なエスノメソドロジーの実践を紹介しながら、心構えや考え方...

見えていて、やっているけど、意識されないこと。日常の様々な場面に存在するし、大衆演劇の役者内にあったり、LGBTの人々の中にあったり。 それを明らかにする方法として、質的な社会学、エスノメソドロジーがある。 既に行われた優秀なエスノメソドロジーの実践を紹介しながら、心構えや考え方について語る。入門書であり、一般書。

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