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シブミ(下) の商品レビュー

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2011/07/07

作品として、面白いのか退屈なのかの判断に迷うが、強い印象を残す一冊なのは確か。 スパイ・スリラーとしての展開を期待したが、読了してみれば、ニコライ・ヘルという特異キャラのためのストーリーだったような気がする。大きく分けると、「シブミ」を会得するまでと会得後の構成になっており、そ...

作品として、面白いのか退屈なのかの判断に迷うが、強い印象を残す一冊なのは確か。 スパイ・スリラーとしての展開を期待したが、読了してみれば、ニコライ・ヘルという特異キャラのためのストーリーだったような気がする。大きく分けると、「シブミ」を会得するまでと会得後の構成になっており、そこに乾いた雰囲気と鋭い描写が加わることで、絶妙な世界観を創り出している。 圧巻なのは、日本人特有の作法や、詫び寂の精神世界についての奥深い表現である。日本人でもここまで描ききれる作者はなかなかいないだろう。西欧社会のスタイルが当たり前となっている現在だからこそ余計に、「シブミ」の世界に感銘を受けた。 日本の「シブミ」とは対照的に、商業社会だと切り捨てるアメリカやアメリカ人に対する風刺は凄まじい。作者がアメリカ人なので却ってリアルに聞こえてしまう。シンプルに判りやすい言葉で、何のよどみもなく次から次へと出てくる描写に感嘆することしきり。 物語がはっきりと動き出す下巻まで、ニコライの半生と「シブミ」については面白く読めるが、停滞するシーンも少なからずある。大して重要でもないそのエピソードに費やすページが多かったりで、残念ながら一気読みとはいかなかった。 ウィンズロウが書きたくなるのもわかる気がする。「シブミ」一作で終わらせるのは余りにも惜しい世界、キャラクター。彼の技法によって蘇るニコライ・ヘルが楽しみで仕方ない。

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2011/08/08

母会社とニコライの戦いを描く下巻。 なのだけれど、そこにものすごくページを割いている訳ではなく。 なのに死闘と言う文字がぴたりとはまる。 下巻においても戦いそのものの描写よりもニコライの生き様に焦点が当てられている。 母会社との死闘もニコライの「シブミ」を表す1手段に過ぎなくな...

母会社とニコライの戦いを描く下巻。 なのだけれど、そこにものすごくページを割いている訳ではなく。 なのに死闘と言う文字がぴたりとはまる。 下巻においても戦いそのものの描写よりもニコライの生き様に焦点が当てられている。 母会社との死闘もニコライの「シブミ」を表す1手段に過ぎなくなっている。この僅かばかりの死闘が、それでも十分に思えてしまう。 なんとも不思議な作品だった。このニコライの若い頃をウィンズロウがどう調理しているのか、楽しみだ。

Posted byブクログ

2011/01/13

上巻での前フリを経て、ついに始まる〈マザーカンパニイ〉との本格対決。〈シブミ〉を会得し、囲碁、数ヶ国語、暗殺術のみならず、性技をもマスターした主人公ニコライヘルがスゴ過ぎw。アクションシーンはアッサリめながらも、二度の洞窟シーンのスリルとサスペンスは圧巻。全編に渡るアメリカニズム...

上巻での前フリを経て、ついに始まる〈マザーカンパニイ〉との本格対決。〈シブミ〉を会得し、囲碁、数ヶ国語、暗殺術のみならず、性技をもマスターした主人公ニコライヘルがスゴ過ぎw。アクションシーンはアッサリめながらも、二度の洞窟シーンのスリルとサスペンスは圧巻。全編に渡るアメリカニズム批判も興味深い。ウィンズロウが書く前日譚『サトリ』が楽しみ ♪

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2010/01/20

 覆面作家トレヴェニアンが、2005年の12月に亡くなったことを、近々公開になる映画「ミュンヘン」とのかねあいで、どーんと再販されてます。  なぜにミュンヘンなのか、前置きを書くと長くなるのではしょりますが、幼年期を日本ですごした暗殺者ニコライ・ヘルを主人公にしたサスペンス。導...

 覆面作家トレヴェニアンが、2005年の12月に亡くなったことを、近々公開になる映画「ミュンヘン」とのかねあいで、どーんと再販されてます。  なぜにミュンヘンなのか、前置きを書くと長くなるのではしょりますが、幼年期を日本ですごした暗殺者ニコライ・ヘルを主人公にしたサスペンス。導入とかでハリウッド的な派手なアクションを期待すると肩すかしをくらいます。中盤は青春小説ですな。  にしても、トレヴェニアンはすごい。  ヘルは、すでに引退した暗殺者として登場するのだけど、もうその設定からしてシブイ。日本で育ち、囲碁を通して、シブミの境地にいくことを目標としているヘル。その洞察は日本人以上に日本人です。  日本を舞台にした海外小説はいくつかあるけど、どれも???な部分がある。が、これは違和感が全くなかったです。  最初はちょっとなんだか読みにくい。  「ワイオミングの惨劇」も最初がちょっとしんどかったので、多分トレヴェニアンはそういうタイプの作家なんだろう。  でも、あとはぐいぐいとひっぱっていってくれます。  最後の最後まで、息が抜けない。  ああ、いいもの読んだぜ。

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2009/10/04

 下巻では、洞窟探検と巨大組織との戦いが描かれていて、戦いのほうも十分に楽しめるのですが、なんといっても洞窟探検の様が緊張感にあふれ圧巻。信頼するパートナーと真っ暗な縦穴にザイル一本で降りていく恐怖。その先に待っているであろう未知の世界への期待感などなど、とても興奮し手に汗握りな...

 下巻では、洞窟探検と巨大組織との戦いが描かれていて、戦いのほうも十分に楽しめるのですが、なんといっても洞窟探検の様が緊張感にあふれ圧巻。信頼するパートナーと真っ暗な縦穴にザイル一本で降りていく恐怖。その先に待っているであろう未知の世界への期待感などなど、とても興奮し手に汗握りながら読めました。  とてもおもしろい小説なのですが不満が一つ。ニコライ・ヘルがあまりに凄すぎ。六ヶ国語を話し、囲碁の名手。その囲碁で学んだ論理的思考法と常に冷静でいられる心の持ち主。日本で身近にあるものを武器にして人を殺す格闘技を身につけて、とこれだけでも十分に超人なのですが、まぁ、ここまでは許しましょう。ここにさらに、普通の人には無いある種の感覚・超能力を持っていて、となったらもう・・・。ニコライ・ヘルの物凄さを強調したかったのでしょうが、これではあまりに超人すぎでしょう。超能力までは必要なかったような気がします

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2009/10/04

ミュンヘン五輪テロ事件の首謀者グループへの復讐のため、立ち上がったユダヤ人武装グループ。しかし計画は事前に察知され、空港での待ち伏せ攻撃により壊滅してしまう。一人生き残ったハンナは、父の友人であり、伝説的暗殺者であるニコライ・ヘルを頼るが… というお話です。25年前の作品ながら...

ミュンヘン五輪テロ事件の首謀者グループへの復讐のため、立ち上がったユダヤ人武装グループ。しかし計画は事前に察知され、空港での待ち伏せ攻撃により壊滅してしまう。一人生き残ったハンナは、父の友人であり、伝説的暗殺者であるニコライ・ヘルを頼るが… というお話です。25年前の作品ながら、実に秀逸な作品ですね。 読んでいて古さを感じるとすればコンピュータ関連の部分だけで、あとは概ね満足ではないでしょうか? しかしこの作品の本当の肝はアクションではなく、上巻の『日本を舞台にしたニコライの学習と成長』の部分かと。 主人公の精神的成長の要素として、囲碁や桜、侘びなどの要素を実に正確に読み解いて記述し、成長を描いています。 また極東軍事裁判やアメリカ人の精神に対しても、非常に正確かつ手厳しいことを書いており、文化的批評としても素晴らしいかと。 『9・11』を経た後に読んでも違和感を覚えない、というのは実はすごいんじゃないですかねー。何せ、それぐらい本質をズバッと突いている、ってことですから。 ということで、冒険小説好き以外にもオススメできる一冊であります。

Posted byブクログ