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会計制度の経済学 の商品レビュー

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2010/07/09

会計制度を経済学的に分析しようという内容で、特に取引費用から制度を考える新制度派経済学の理論を背景にしている(あと、比較制度分析の考え方も一部援用)。 ファイナンスの世界では経済学的な考え方や分析手法が割と普通に使われているけれど、会計で経済学的な分析というのは考えてみたらあま...

会計制度を経済学的に分析しようという内容で、特に取引費用から制度を考える新制度派経済学の理論を背景にしている(あと、比較制度分析の考え方も一部援用)。 ファイナンスの世界では経済学的な考え方や分析手法が割と普通に使われているけれど、会計で経済学的な分析というのは考えてみたらあまり出会ったことがない。実際、IFRSがどうの、という話題になっても、その経済学的な背景とか帰結とかということが話題になることはないと思う。望ましい会計基準は何か、 IFRS適用は企業行動や日本経済にどんな影響を与えるか、という議論においてそのあたりがちゃんと語られていないというのはおかしな話と言えばおかしな話(研究者の間で語られているのかもしれないけど、それが下まで降りてくるほどには盛り上がっていはいない)。会計学と経済学の学際的な研究というのは、まだ発展途上ということなんだろう。 この本にしても、新制度派や比較制度分析を考え方を用いて制度会計の記述を試みてはいるけれど、まだ定性的な記述で、こういう分析ができる可能性があるよ、というところ。明確なモデル化がなされているわけではないし、制度内の各システムの相互作用も明らかにはなっていない。そういう意味で、まだまだイントロダクションだと言えるかもしれない。この分野での研究の蓄積がもっと厚くなれば、そこでの成果が会計基準や開示制度の設計に活かされることになるかもしれない。そうしたらまた今とは違うロジックでの制度が生まれるんだろう。

Posted byブクログ