姜尚中の政治学入門 の商品レビュー
恥ずかしながら政治学というものにあまり目を向けたことがなかった。「政治」にしろ「政治学」にしろ「政治思想」にしろ大変新鮮なものとして受け止められた。この本に上げられていた著書くらいには目を通し、少しは教養を身につけようと言う気になった。しかし、政治学という学問はモデルとしてやたら...
恥ずかしながら政治学というものにあまり目を向けたことがなかった。「政治」にしろ「政治学」にしろ「政治思想」にしろ大変新鮮なものとして受け止められた。この本に上げられていた著書くらいには目を通し、少しは教養を身につけようと言う気になった。しかし、政治学という学問はモデルとしてやたらに変数が多く物事を単純化することが難しくよほど強靭な頭脳を持っているかカンがするどいかでなければ、すぐ話がこんがらがってしまう。その変数の中にはもちろん人間の感情も含まれているのでなおさら厄介だ。しかし、今日政治学の遡上に上っている諸問題には真っ正面から取り組んでおかないといずれ何らかの形でツケがまわってくるのだろう。これから日本人もいろんな意味で大人にならんといかんだろうな。(私もその一人ですが。) **アメリカ やはりアメリカの成り立ちや思想のながれはおさえておくべきだなと。 **暴力 経済学では全てが金だが、政治学では暴力は強力なファクターとなりうるのか。 **主権 やはりホッブズくらい読んどかんと。 **憲法 権力を縛り政府の行動を制限するために憲法がつくられるんだということは、遅ればせながら近年知った。その憲法に国民の義務も入れようという議論はやはりおかしいということはもっと世の中で語られなければならないことだ。 **戦後民主主義 著者は、戦後のいわゆる天皇の人間宣言にかなり戦略的意味を認めているようだ。だとしたら戦前も戦後もだれかがずっとハンドルを握っていたのかなどと勘ぐりたくなる。 **歴史認識 日本人は特に歴史に無頓着だと思う。現状に満足するあまりボタンのかけ違えに気がつかないでいるとこの先かなりヤバい気がする。 **東北アジア 日本が置かれた立場をよく理解しておく必要はある。ただ東北アジアというくくりになった場合には我が国はかなり厳しい立場になるのではないかな。あまり将来は明るくないような…。
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政治学に関するいくつかのkeywordを取り上げ、どのような解釈や問題が起きてきたのかを概説している。 アメリカの共和制や理念や東北アジアなどの国や地域に対する考察と、暴力や主権・憲法などのトピックに分かれる。 彼は東北アジアはエネルギー問題や民主主義政策のスピードを根拠に、地...
政治学に関するいくつかのkeywordを取り上げ、どのような解釈や問題が起きてきたのかを概説している。 アメリカの共和制や理念や東北アジアなどの国や地域に対する考察と、暴力や主権・憲法などのトピックに分かれる。 彼は東北アジアはエネルギー問題や民主主義政策のスピードを根拠に、地政学的に朝鮮半島を中心にしてアジアを囲む4大国(中国、日本、ロシア、アメリカ)をまとめることこそが、今後の姿だと考えているため、日本の昨今の憲法改正議論や領土問題は危険だと考えている。そもそも戦後体制についても天皇の人間宣言は明治期のナショナリズムへの回帰だと言っていて、あまり感覚的にピンとこないというかモヤモヤした。 しかしそういう歴史問題を抱える隣国の感覚を知ることが、まず歴史問題や国交問題を考える上で大事なことだとも思う。 その意味では、この本はただの政治学の一般解説書としては各トピックの解説の分量が少なく物足りないかもしれないけども、為になる、考えさせられる本だと思う。
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政治学の入門にしては専門的な用語がちりばめられており、非常に難解であった。 日本のアジア化という考えには、今後のアメリカとの関係性と将来のアジアでの日本の立ち位置を深く考えさせる内容であったことと著者が「干物」と述べている各分野における古典というものがしっかりと学んで知識にして...
政治学の入門にしては専門的な用語がちりばめられており、非常に難解であった。 日本のアジア化という考えには、今後のアメリカとの関係性と将来のアジアでの日本の立ち位置を深く考えさせる内容であったことと著者が「干物」と述べている各分野における古典というものがしっかりと学んで知識にしておけば、まるで本物の干物のように噛めば噛むほど味がでてきて、骨董から輝く宝飾へと変わり十二分に現代に適応できるということが知ることが出来て古典の大事さを学んだ。
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多くの問題意識が提議されているが、結論が十分に表されていない印象を持った。 政治学入門というタイトルは本書の中身を表していない。例えば、「一政治学者が抱いた現代日本への問題提議」みたいなタイトルの方がふさわしいかもしれない。 しかし、昨今の憲法論議に関して、憲法九条とともに二...
多くの問題意識が提議されているが、結論が十分に表されていない印象を持った。 政治学入門というタイトルは本書の中身を表していない。例えば、「一政治学者が抱いた現代日本への問題提議」みたいなタイトルの方がふさわしいかもしれない。 しかし、昨今の憲法論議に関して、憲法九条とともに二〇条政教分離原則もセットに議論を深めるべき、との指摘は興味深かった。
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多角的な視点を持つということは、それなりに、自身の偏見と向き合うことになるということだ。これからの時代は、そういう偏見を持つことによる感情の困難さと、自分という存在の相対的な価値の低下に、どれだけ、そういう孤独に耐えられるかということにかかってくる。 そのうち、宇宙の膨張により、...
多角的な視点を持つということは、それなりに、自身の偏見と向き合うことになるということだ。これからの時代は、そういう偏見を持つことによる感情の困難さと、自分という存在の相対的な価値の低下に、どれだけ、そういう孤独に耐えられるかということにかかってくる。 そのうち、宇宙の膨張により、銀河同士の距離が離れて、消えていくように、人同士の絶対的な価値感が、限りなく薄くなっていく時代が来ると思う。そういう意味では、多角的な視点を持つというのは、刹那的に、心を保つための、癒しになると思う。
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「アメリカ」、「暴力」、「主権」、「憲法」、「戦後民主主義」、「歴史認識」、「東北アジア」の7つのキーワードをもとに戦後の日本と世界の関係を説いている。 「政治学入門」とあるが、学生時代に歴史の授業を真面目に受けてこなかった私にとっては難解な用語が多く、読むのに時間がかかったし、...
「アメリカ」、「暴力」、「主権」、「憲法」、「戦後民主主義」、「歴史認識」、「東北アジア」の7つのキーワードをもとに戦後の日本と世界の関係を説いている。 「政治学入門」とあるが、学生時代に歴史の授業を真面目に受けてこなかった私にとっては難解な用語が多く、読むのに時間がかかったし、一度読んだだけでは半分も理解できなかった。 しかし、著者が伝えたいことはあとがきで述べていることが全てなのだろう。私なりの解釈も加わるが、大まかには以下の通りである。 百聞は一見にしかずと言うけども、全ての判断材料を見ることは不可能で、時にはメディア等を通して偏った情報のみを目にすることもある。結局のところ決断時に頼りになるのは第六感なのである。この第六感の精度を上げるのは、過去と現在の比較による思考実験であり、そのためには幅広い歴史認識が必要である。 本書も単なる政治史(過去)の解説ではなく、著者の「思考実験」による今後の展望についても述べられている。5年前に書かれたものなので、やや話題は古いが、充分勉強になる。
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政治学の入門書ということで分量は多くはなかったが、「アメリカ」「暴力」「主権」「憲法」「戦後民主主義」「歴史認識」「東北アジア」という著者が選択した7つのキーワードから話題が展開しており、非常に興味深いものであった。 ホッブズ・ルソー・カント等の過去の偉大な思想家から、ブッシ...
政治学の入門書ということで分量は多くはなかったが、「アメリカ」「暴力」「主権」「憲法」「戦後民主主義」「歴史認識」「東北アジア」という著者が選択した7つのキーワードから話題が展開しており、非常に興味深いものであった。 ホッブズ・ルソー・カント等の過去の偉大な思想家から、ブッシュ・小泉など近年の政治家までカバーしており、ところどころ知らない学者や思想がでてくるため、理解に時間がかかったが、問題点・議論はブレることなくわかりやすかった。 ただ、著者のアジア共同体構想は興味深いものではあったが、手放しに賛成することは難しいと感じた。
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韓国人学者による政治学の手引き。 執筆当時、日本を取り巻く状況をキーワードでとり上げつつ、 それらについて、古典からの議論を参照した上で自説を展開する。 正直、政治学を全く学んだことのない身からすれば、個々の政治学者の主張内容を当然の前提としている本書よりかは、 他の、もう少...
韓国人学者による政治学の手引き。 執筆当時、日本を取り巻く状況をキーワードでとり上げつつ、 それらについて、古典からの議論を参照した上で自説を展開する。 正直、政治学を全く学んだことのない身からすれば、個々の政治学者の主張内容を当然の前提としている本書よりかは、 他の、もう少し堅い「政治学入門書」の方が今後の自分のためにはなるような印象。 もっとも、そのような教科書的書籍は現状に対する考察などがない場合があるので、 現実の問題とリンクさせる端緒となる点では、ある程度有益ではある。
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アメリカは、世界にとっての超越的な「参照系」になっているのです。p14 フランス革命を経た世界が脱却しようとしたのは、少数者による専制支配でした。しかし、民主主義がめざす人民(多数者)による政治は、見方を変えれば、マジョリティによるマイノリティの専制支配と背中合わせでもあります...
アメリカは、世界にとっての超越的な「参照系」になっているのです。p14 フランス革命を経た世界が脱却しようとしたのは、少数者による専制支配でした。しかし、民主主義がめざす人民(多数者)による政治は、見方を変えれば、マジョリティによるマイノリティの専制支配と背中合わせでもあります。p35 親密圏と公共圏の往来をさらに豊かなものとし、先述の共存・共生関係をベースとした公共空間がふたたび編成されたならば、暴力や権力の問題に対する新たな局面が見えてくるのかもしれません。p58 「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」by トロツキー p60 今、なぜ「帝国」なのか、また、国連なのかと問われる背景には、国民国家に代わる主権をいかに再構想するのかという課題が、いよいよ先延ばしにできなくなった事態があるのでしょう。それこそが、現在を生きる私たちが直面する、数々の問題の本質なのです。p75 憲法学の世界では、主権者の政治的な意思こそが究極の根拠であるという立場と、憲法の内在的な独自性の論理を重んじる立場があるわけです。p84 アウタルキー経済=輸入に依存しない自給自足的な経済p150 歴史の時間の幅を広くし、そして過去との「類比」を行う「思考実験」を試みてみれば、眼前のシーン(この場合はイラク戦争の新しい局面)は、違った意味を帯びてくるのです。p168
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そもそも論が多いなぁと感じましたが、そもそも政治学とはそういうものなのでしょう。政治思想学の考え方がなんとなく理解できたのが良かったです。 引用されているのは古典ばかりにも関わらず、現代にも通じるはっとさせられるような鋭い指摘があるんですよね。 ただ、割とぽんぽんと古典の有名...
そもそも論が多いなぁと感じましたが、そもそも政治学とはそういうものなのでしょう。政治思想学の考え方がなんとなく理解できたのが良かったです。 引用されているのは古典ばかりにも関わらず、現代にも通じるはっとさせられるような鋭い指摘があるんですよね。 ただ、割とぽんぽんと古典の有名人の話を出してくるので、高校の倫理か世界史程度の予備知識はあった方が良いかもしれません。
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