クオリア降臨 の商品レビュー
2007年7月。パリに休暇で向かう機内で読了しました。この一年前に、同じ茂木健一郎氏の著書、「脳内現象」を読んでいましたので、是非この本も読んでみたいと思い、手に取りました。 クオリア(質感)は、ベンヤミンが「複製技術時代における美術作品」の中でいうところの、アウラ(オーラ)に...
2007年7月。パリに休暇で向かう機内で読了しました。この一年前に、同じ茂木健一郎氏の著書、「脳内現象」を読んでいましたので、是非この本も読んでみたいと思い、手に取りました。 クオリア(質感)は、ベンヤミンが「複製技術時代における美術作品」の中でいうところの、アウラ(オーラ)に相当すると言えましょう。 本書で著者は、芸術作品(特に文学)について、各々の作家の所謂息づかい、とでも言うべき独特のリズムや筆遣いを味わうことを鑑賞や読書の楽しみと言います。作家の人柄、苦悩が文面に染み出ているうような文章に高い評価を置いているように感じました。小林秀雄や夏目漱石がそうした作家として称揚されています。 特に小林秀雄については、彼の美術批評が主観に過ぎるという理由で、一部に敬遠されているのに対し、坂口安吾が小林を表面的には批判しながらも、小林が酔って水道橋の駅から転落したエピソードなどから、彼の人柄をして愛すべきものとしていたことを紹介しています。 芸術を至高のものとすることを否定し、人生の大部分は働き、社会と交流することに費やされるのが当然であり、人生の現実から切り離された芸術はあり得ない、としていることに共感を持ちました。
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クオリア=質感。 こんなに分かりやすく、自分の感じていた言葉にならないものをきちんと言葉にしてくれた本は初めてかもしれない。 思えば私は、質感をとても重視しながら生きてきた。 それは間違っていなかったのだと教えてくれた本。 たくさん本の紹介があったのも良かった。 三四郎をまずは...
クオリア=質感。 こんなに分かりやすく、自分の感じていた言葉にならないものをきちんと言葉にしてくれた本は初めてかもしれない。 思えば私は、質感をとても重視しながら生きてきた。 それは間違っていなかったのだと教えてくれた本。 たくさん本の紹介があったのも良かった。 三四郎をまずは読んでみよう。 世界が、ちょっとだけ見えるようになる本。
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人間の経験は2度と起こらないような一回性のできごとによって彩られている。 文学は世界を引き受けることを志向しつつ、肉体の限定性から決して離れない。離れてしまっては、世界を引き受けることを志向しつつ、肉体の限定性から決して離れない。 ITの発展のもたらした情報の洪水は人間の精神を脅...
人間の経験は2度と起こらないような一回性のできごとによって彩られている。 文学は世界を引き受けることを志向しつつ、肉体の限定性から決して離れない。離れてしまっては、世界を引き受けることを志向しつつ、肉体の限定性から決して離れない。 ITの発展のもたらした情報の洪水は人間の精神を脅かす公害になりつつある。人間の無限の成長のシナリオはデジタル情報を最終的に重要し、その意味を見いだす脳という人間の内なる自然が無限のキャパシティを持っているということを前提に描かれている。 数学も科学も文学も芸術も、要するに生きるという上での実際的な配慮に比べれば大した問題ではない。
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縦横無尽に疾走する茂木健一郎氏の展開力には、 ハラハラと見守っているうちに 終わってしまった感じがする。 一筋縄でいくものではないとわかっていても 何とか、この本の中身をひき釣り出してみたいと思うが・・ 最初に出てくる言葉が・・ 『世界を引き受けるために』・・・・ 出だしから...
縦横無尽に疾走する茂木健一郎氏の展開力には、 ハラハラと見守っているうちに 終わってしまった感じがする。 一筋縄でいくものではないとわかっていても 何とか、この本の中身をひき釣り出してみたいと思うが・・ 最初に出てくる言葉が・・ 『世界を引き受けるために』・・・・ 出だしから強烈である・・ 『人間は、有限を生き、やがて死すべき存在である。』 『死すべきものであり続けながら、 その有限な生の中で、無限を志向する。』 ふーむ・・・ クオリアが降臨しそうな気配であるが・・ で、小林秀雄への溺愛を書いたが・・。 この本は、文学をとおして語られているなかから クオリアを明らかにしようとしているようだ。 批評をする・・・・というのは、 そのコアな部分の状態を掴み取り、 どこに向かっていくのかを指し示す ものだとおもっている。 『批評家は芸術の解体業者ではあっても、 建設家には決してならない。 印象の解体、分析ではなく、 印象の純粋さ自体に向かった としても何の不思議があろうか?』 クオリア降臨 茂木健一郎 その批評の中心的なコアは、 『印象の純粋さ』・・・と言うことである。 どのように感じ、どのように受けとめるのか? そのことを真摯にやり遂げたことへの評価である。 読み終わったが・・ 私には、クオリアは降臨しなかった。 それが、私の理解の実力を現している・・。
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水辺で飛び込む順番を譲り合うペンギンたちは、なぜ逡巡しているのか? 漱石のユーモアは、どのような痛ましい内面生活から生まれたのか? 恋愛感情が高まると、前頭葉のどこの部位の活動が低下するのか? どんなに懸命に美しく、充実した人生を送ったとしても、やがて全ては終わり、痕跡さえ次第に...
水辺で飛び込む順番を譲り合うペンギンたちは、なぜ逡巡しているのか? 漱石のユーモアは、どのような痛ましい内面生活から生まれたのか? 恋愛感情が高まると、前頭葉のどこの部位の活動が低下するのか? どんなに懸命に美しく、充実した人生を送ったとしても、やがて全ては終わり、痕跡さえ次第に色あせていくものであるならば、私たちの生きた時間はどこに行ってしまうのか……。 すべては、クオリアから始まる。
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クオリア降臨というタイトルに違和感を覚えながら読んでおりましたが、雑誌連載してたものを単行本にまとめる時に、つけられたタイトルってあたりに、やや売らんかな的印象を感じてしまいました。 文学論とクオリアをミックスしたあたりに、クオリアを分かりやすく説明したいんだろうな、と思いま...
クオリア降臨というタイトルに違和感を覚えながら読んでおりましたが、雑誌連載してたものを単行本にまとめる時に、つけられたタイトルってあたりに、やや売らんかな的印象を感じてしまいました。 文学論とクオリアをミックスしたあたりに、クオリアを分かりやすく説明したいんだろうな、と思いました。 しかし、高校生の現代文ですっかり苦手意識を持ってしまっている、小林秀雄の評論を題材に取り上げられているため、読み進めるのに時間がかかってしまいましたので、個人的に☆3つ。
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正直少し難しく、何度も読まなければわからない部分も多かった。けれどこれを読んで高校の卒業間近に校長先生がして下さったお話が、太宰治の『人間失格』だったと知ることが出来たのは収穫。
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