津山三十人殺し の商品レビュー
いっしょに買った本が…
いっしょに買った本が、”「少年A」14歳の肖像”だった。新潮文庫のカバー装画は同じ緒方修一。時間を超えて、兄弟のような事件だ。横溝正史の”八つ墓村”のモデル事件ということである。小学校時代、優等生だった主人公が、気持ちの中で追いこまれていく流れが堪らない。人里離れた山村での閉塞感...
いっしょに買った本が、”「少年A」14歳の肖像”だった。新潮文庫のカバー装画は同じ緒方修一。時間を超えて、兄弟のような事件だ。横溝正史の”八つ墓村”のモデル事件ということである。小学校時代、優等生だった主人公が、気持ちの中で追いこまれていく流れが堪らない。人里離れた山村での閉塞感、というものは想像以上に過酷だとまずは思った。
文庫OFF
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※このレビューにはネタバレを含みます
犯人である都井睦雄の言葉と、被害者の女性たちの証言が結構食い違っていたのが印象的でした、 都井は 「結核のため村人に差別され拒絶された」 と言っており、 私は最初都井のことを可哀想だと思いました。 しかし、女性たちは 「都井が無理矢理関係を迫ってきたので拒否した」 と言っており、 一方の言葉で悪を決めつけてはいけないのだと気付かされました。 また夜這いが結構絡んでいて、現代には無い文化 なので勉強になりました!都井が生まれてから死ぬまでの人生が事細かく書かれており惨殺のシーンは緊迫感があり怖かったです、
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殺し方や死んでいた場所まで書かれた資料は無惨さを語るけれど、死人に口無し。三十人を殺すほどの殺意。それほどまでに恨みを募らせた背景。何が本当なのか、いまいちよく分からなかった。犯人も、被害者も多くが死んでしまったから。被害者の証言を取るのか、犯人の遺書の内容を取るのか。不確実であ...
殺し方や死んでいた場所まで書かれた資料は無惨さを語るけれど、死人に口無し。三十人を殺すほどの殺意。それほどまでに恨みを募らせた背景。何が本当なのか、いまいちよく分からなかった。犯人も、被害者も多くが死んでしまったから。被害者の証言を取るのか、犯人の遺書の内容を取るのか。不確実であろう部分も細く書かれたエピソードは、著者の捏造が入っているのでは?と思ったり。
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2022/1/4読了。 昭和13年に起きた事件ながらも未だに語り継がれる津山事件。当時の警察資料や関係者の言葉をまとめ、当時の緊張感や事件が起きるまでの空気感みたいのを現実味を持って伝えてくる。 引用を挟み過ぎて時折なんの話だっけ?ってなってしまうこともあるが、どれも貴重な資料...
2022/1/4読了。 昭和13年に起きた事件ながらも未だに語り継がれる津山事件。当時の警察資料や関係者の言葉をまとめ、当時の緊張感や事件が起きるまでの空気感みたいのを現実味を持って伝えてくる。 引用を挟み過ぎて時折なんの話だっけ?ってなってしまうこともあるが、どれも貴重な資料って感じで読み応えがあった。 都井は事件について語る前に自害してしまったが、客観的な事件概要については網羅しているのではと思う。
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死人に口無しであり、例え生存者がいたとしても睦雄の良いような証言はしてくれないように思う。外聞が悪い。 もっと村の風習や睦雄の成育歴などを知りたかったのですが、反面これぐらいが精一杯かとも思っています。 亡くなった方に合掌。
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あまたある犯罪本のなかでも名著ではないだろうか。 歴史の闇に埋もれていた事件を戦時下での当時の風俗、社会背景を織り混ぜ、多角的に検証し、掘り起こした著者の努力に敬意を表したい。 されど、“死人に口なし”、犯人の苦悩と狂気の内面までは永遠に捉えられない。 蛇足だが、この事件は過去何...
あまたある犯罪本のなかでも名著ではないだろうか。 歴史の闇に埋もれていた事件を戦時下での当時の風俗、社会背景を織り混ぜ、多角的に検証し、掘り起こした著者の努力に敬意を表したい。 されど、“死人に口なし”、犯人の苦悩と狂気の内面までは永遠に捉えられない。 蛇足だが、この事件は過去何作もの『八つ墓村』の映画・TVドラマでの重要なテーマになっているが、吉岡秀隆主演で2019年にドラマ化された再現シーンが一番リアルだったと思う。 また、映画では西村望原作『丑三つの村』の映画化が良かった。
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あの有名な「八つ墓村」の直接的なモデルとなった津山三十人殺しのルポ。事件の様子や生存者の証言、犯人である都井睦雄の遺書などをまとめた章と、都井の一生を辿った章の二つにまとめられている。 個人的な感想 事件全体を通して不明なことが多すぎるように感じる。芥川の「藪の内」のようだ。周囲の証言や遺書などには被害者と都井との関係や名誉の保持のため明らかに食い違う描写も多く、解釈により事件の全貌を推測するしかない。特に都井の女性関係や、都井自身の病状であったりは明らかにおかしな記録が多く、それらを比較しつつある程度の形にまとめることができたのは筆者の努力と執念に因るものだろう。しかし、事件を決定つける重要な「なにか」が欠けているようにも感じる。あるいはそのもやもやがもやもやのまま事件へと発展したのかもしれない。センセーショナルな事件に対して「なにか」を求め過ぎるのは客観的でないが、「なにか」があるように感じざるを得ない点でもこの事件は不明な点が多い。 個人的な都井についての考察 彼は肥大した自意識と世間の現実の中に上手く折り合いをつけられなかったように思える。祖母による長男としての特別扱いや小学校での優秀な成績、彼は「特別」として育ったが家庭の都合で中学校(当時の高等教育である)には進学できなかった。そこから肺病を病み彼の「特別」にはケチがついた。それを女性関係を通して満たそうとしたが、彼はとうとう金銭的関係や武力(猟銃による脅し)を通じて以外の関係を築けず、その金銭的関係ですら裏切られた(彼の主観だが)。そこに不治の病(という認識がまだ残っていた)肺病への悲観から、自分の将来を信じられなくなり、もう自分は死ぬものと考えた。「無敵の人」の誕生である。これから彼は持っていた猟銃に加え刀剣を集め計画を立てた。一度はバレて水泡に帰すもそれすら油断を誘う策として用いた。念密に立てられた計画は不幸にも完璧に成功し、三十人という未曾有の悲劇が起きたのだ。 私が分からないのは「無敵の人」から計画を立てるまでだ。なぜそこで衝動的なままに殺人をしなかったのか、なぜ念密に計画を立て装備を整えてまで実行しようとしたのか。どういった考えでそこまでの熱意を注ぎこむことが出来たのだろうか。これを「サイコパス」と一蹴してしまうのはあまりにも無責任で傲慢である。事件発生は1938年ともはや百年近く前でもあるが、新たな資料や類似の事件から再び分析の目が当てられることを期待したい。
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これ、フィクションではなく、実際にあった犯罪なんだよな。 そんなことはネットで見て知っていたはずだが、ここまでつまびらかに描写し語られることで、ある種の「実感」を持ち、それ故に陰惨たる気持ちになってしまった。 筆者はジャーナリストらしく、文献と取材にあたり、状況からの推測は立...
これ、フィクションではなく、実際にあった犯罪なんだよな。 そんなことはネットで見て知っていたはずだが、ここまでつまびらかに描写し語られることで、ある種の「実感」を持ち、それ故に陰惨たる気持ちになってしまった。 筆者はジャーナリストらしく、文献と取材にあたり、状況からの推測は立てるが、憶測を含まず事実から淡々と事件の概要を構築し、事件そのものと、犯人・都井の人生に向き合う。その姿勢がすごく良い。阿部定事件に犯人が執心していたというのも唸らされる。 30人殺しの描写は息が詰まるリアリティだった。
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横溝正史の「八つ墓村」のモチーフとなった事件が実際にあったと知り読んでみた。 「八つ墓村」に登場する要蔵の奇妙なかっこうも、実は「津山事件」の犯人・都井睦雄が事件当時していたものとほとんど変わらないと知って驚いた。 写真や殺害現場の見取り図などを効果的に使い、ひとつひとつの惨劇の...
横溝正史の「八つ墓村」のモチーフとなった事件が実際にあったと知り読んでみた。 「八つ墓村」に登場する要蔵の奇妙なかっこうも、実は「津山事件」の犯人・都井睦雄が事件当時していたものとほとんど変わらないと知って驚いた。 写真や殺害現場の見取り図などを効果的に使い、ひとつひとつの惨劇の様子を事細かに検証していて、申しわけないけれどちょっと気分が悪くなってしまった。 それほど臨場感にあふれていたということだろう。 犯人の生い立ちを丁寧に追っているのだが、動機らしきものはわかるのだけれど。 出口のない迷路をぐるぐると回っているうちに、被害妄想的な発想に拍車がかかってしまったような気がする。 しかし、これほどまでに用意周到な犯人の心理がとても怖い。 犯行そのものも勢いに乗って…ではなく、ひどく冷静に淡々とこなしていたのでは?と感じる。 わずかな時間内に多くの殺戮を繰り返すのは体力がいる。 徴兵検査で実質的な不合格になったのに、人を殺すために体力には不自由しなかったんだなぁと。 時代や土地に根づいた因習に縛られたことが影響しているかもしれないけれど、何となく薄気味悪さしか残らない事件だ。
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「八つ墓村」のモデルとなった事件のノンフィクション。聞き込みによる殺戮の経過は圧巻。2016.12.11
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