エイズとの闘い の商品レビュー
薬が必要な患者に使えるようになるまで 有効な薬があったとしても使えない患者がいる メガファーマの特許(知的財産)は 保護されるべきという米国の考え方 日本(小泉首相)もこれを 指示する アメリカは どんどん規制を強める 10年前と事情は変わってない 病気・医薬品・経済 お...
薬が必要な患者に使えるようになるまで 有効な薬があったとしても使えない患者がいる メガファーマの特許(知的財産)は 保護されるべきという米国の考え方 日本(小泉首相)もこれを 指示する アメリカは どんどん規制を強める 10年前と事情は変わってない 病気・医薬品・経済 お金がなければどんなに良い薬があっても使えない これは世界の現状 病人を傷つけ金持ちの薬を作っている
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1980年代にアフリカの貧困国がHIVの治療が出来なかった事が謎だったのですが、特許を含めたWTOの関わり等を挙げてその疑問の紐を解いてくれます。 アフリカのHIV陽性者がHIV陽性を公言する事をタブーとされる社会の中、アフリカは一丸となって、エイズ会議でHIV陽性者が討論をし、最終的に署名を100万人めました。結果、「貧困国でのHIVの高額な治療は不可能だ」と専門家が言っていたにも関わらず、アフリカの勇気ある陽性者達やそれを支援した国民によって、2年後には貧困国にもHIVの治療が行われるようになり、歴史を覆した事実が記載されています。人を変えるのは、政治家でも、国連でも、NGOでもなく、一人一人の意思が一丸となる事が何よりも重要である事を教えてくれます。 HIVを通して、世界の変革の現場を垣間見れる1冊で、とても興味深い内容でした。
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途上国でもエイズになったら生きられる国と生きられない国があることを知った。 安価なジェネリック医薬品を作り、配布できる国ではほとんのエイズ患者は大人になるまで生きられる。 でもそうでない国は5歳になる前に死んでいく。 このジェネリック医薬品の特許を巡り、インド政府とアメリカの製薬会社が裁判を起こしたという話が載っていたが、人命は特許よりも尊いものではないのだろうか。 自分の利益と命を秤にかけたら当然自分の命の方が大事だろうが、自分の利益と途上国の他人の命を天秤にかけたら自分の利益の方が大事なんだろう。 金持ちの考えは私には分らないが。 政府が勝訴して当たり前だと思ったが、たくさんのエイズ患者がこれを支えていたと言うことに驚いた。 自分は死ぬと分っていて他の子たちのために活動を続けた彼女たちを心から凄いと思った。
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『人間の条件 そんなものない』で立岩さんが紹介していた本。この小さなブックレットは、エイズが「単なる病気ではなく、人間としての尊厳を脅かす問題」(p.16)であることを伝え、世界のルールが、治療によって助かる子どもと治療を受けられずに死んでいく子どもとを分けていること、そのルール...
『人間の条件 そんなものない』で立岩さんが紹介していた本。この小さなブックレットは、エイズが「単なる病気ではなく、人間としての尊厳を脅かす問題」(p.16)であることを伝え、世界のルールが、治療によって助かる子どもと治療を受けられずに死んでいく子どもとを分けていること、そのルールを変えていくために、世界の人々が声をあげ、声を集め、ついにルールを変えたことをおしえてくれる。 「知的所有権」の保護、つまりは、誰かが思いついた「作り方」をマネしたらあかんというきまりがあるために、せっかく開発されたエイズ治療のための新薬が高くて買えない状態になっていた。開発したアメリカ合衆やヨーロッパの会社が「知的所有権」をふりかざすので、作る設備があったとしても、ヨソの国では作れない状態になっていた。 「知的所有権」保護の路線は、もう世界のなかで決まってしまって、力にものを言わせてるアメリカに、日本まで尻馬に乗って、もうこれは、なんぼ「命にかかわること」であっても、どうにもならへんと思われていた。いったん作られてしまったルールをひっくり返すのは無理やろう、と。 人々の声が、ルールを変えた。 ▼ルールを変えること、世界の政治のあり方を変えることが、現実の人の生存に結びついた。アフリカにも希望を与え、沈黙を吹き飛ばした。(p.57) ブラジルという国は、特許や知的所有権を掲げるアメリカとの闘いに勝ち、エイズ治療薬の自国生産をはじめた。薬を作っただけではなく、数種類の薬を併用する療法を確立した。それを国民に無料で提供することで、ブラジルでは感染者の死亡率を半減した。 著者の林さんは、ブラジルは政治に強いと書く。 ▼政治に強いということは、大国からの圧力に屈しないこと。国内にも優れた制度をつくり、これを実行に移すこと。国民の生活や命を守ること。一貫してこれらのことをやりとげることであったのだ。(p.36) そのブラジルの政治の強さは、自治力に支えられている。 ▼80年代半ばまで軍事政権が続いてきたブラジルでは、福祉や教育など地域で生きるために必要なことはすべて、住民組織によって担われてきた。政府をあてにしていては日々生きることができない。そのために、筋金入りの住民組織が育ってきたのだ。この住民組織が、新政権が発足した時点で世界各地から戻ってきた亡命知識人と結びついたのである。国全体が住民組織とNGOでできているようだ。こうしたブラジルの特徴がエイズ対策にも生きてくる。(p.48) 南アフリカでは、ザキ・アハマットが行動を起こした。「本当に必要なところに治療薬はない。エイズがないところに薬はある」(p.39)。 1998年に製薬会社と南アフリカ政府の間で裁判が始まった。知的所有権の保護とエイズ治療の闘いだった。ザキ・アハマットは感染者を代表して法廷に立ち、問題を語った。 裁判の流れはそこから大きく変わった。世界に呼びかけられた署名は、最終的に100万人から集まったという。裁判所も、製薬会社に対して、エイズ治療薬の開発にいくらかかり、これまでいくら利益を上げ、新薬の開発から何年でもとがとれたのか根拠となる資料の提出を求めた。 2001年4月、製薬会社は訴えを取り下げる。 ▼世界最大手の製薬会社のすべてを敵に回したような闘いに、南アフリカ一国ではたちうちできない。しかし、世界中からの応援があれば、勝敗は逆転する。(p.53) 2001年11月、WTO会議では、WTOの知的所有権に関する協定に、「特許・知的所有権の保護を理由に公衆の健康を妨げてはならない」という宣言が付け加えられた。 どうにもならないように受け止められていることも、変えられる。その希望を感じさせてくれる一冊だった。
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著者の林氏は1954年生まれの今年51歳。愛媛大学医学部卒の医者でもあり,6年前に直腸がんを患った患者でもあります。 『手術は成功し,一命はとりとめた。つらかったのはその後である。排便の不自由がいつまでも続く。これまでのように元気に飛びまわることができない。生きがいを失い,精神的...
著者の林氏は1954年生まれの今年51歳。愛媛大学医学部卒の医者でもあり,6年前に直腸がんを患った患者でもあります。 『手術は成功し,一命はとりとめた。つらかったのはその後である。排便の不自由がいつまでも続く。これまでのように元気に飛びまわることができない。生きがいを失い,精神的に滅入っていた。そんな時期に私は,HIV感染者に出会ったのだ。医者として援助を行う立場の人間として出会ったのではなく,患者として友人として出会ったのである。彼らは当時四十五歳の癌患者であった私よりずっと若かった。健康上の苦しみだけでなく,精神的な苦しみをかかえていた。それに関わらず彼らは,同じ病気仲間として私に気づかってくれた。「エイズ」との出会いは私に新しい生きがいを与えてくれた。「エイズ」を夢中になって追いかけているうちに,私の病気も回復に向かっていた。』(「p.15) 今の林氏は,アフリカ日本協議会代表として,アフリカ・エイズ問題に取り組んでいます。この著書は,林氏本人がエイズと闘ってきた記録でもあります。 p.3では,2002年に著者が訪ねた同じ11歳の子どもの写真が登場します。一人はブラジル人の少女,もうひとりは南アフリカの男の子。 二人ともエイズをおこすウィルス(HIV)をもらっています。決して裕福な家庭に生まれたわけではありません。 しかしブラジルの女の子は,国から無料で薬がもらえるために,エイズを発病しないで生き続けることができます。一方,南アフリカの男の子は。死を待つ施設・ホスピスにいます。薬も与えられたいません。すでにエイズとしての症状が出始めていました。 なぜ,同じ子どもに対して,このような違いが出てきたのか。そして,このような子どもが多くいる南アフリカの事態はどうなったのかという疑問を解くのがこの著作の意味の一つでもあります。 アメリカなどのグローバル企業を守るために,エイズの特許権を主張した世界貿易機関(WTO)などに対して,ブラジルが,ブラジルのNGOやエイズの感染者がいかにして,闘ってきたかが実にスリリングに語られているのです。 そして,製薬会社を向こうにまわして,南アフリカの政府が闘ってきた裁判でも,被告に代わって感染者が法廷に立つことによって,流れが変わります。 「アフリカの感染者たちの行動は,世界中の人々の意識を呼び覚まし,声援の輪が広がった。そして,声援の数がある一線を超えたとき,突然,決着がついた」(p.52) 南アフリカの裁判の結果は,南アフリカ一国の出来事にとどまらず,世界のルールを変える引き金となりました。ルールが変われば,国連が動き出します。その結果,画期的な国際機関ができます。 「エイズ対策20年にして,本格的にエイズ対策を行う仕組みが出来たのである。エイズという病気を予防する対策だけでなく,感染者を生かす対策が始まった」(p.55) しかし,エイズについての理解は日本では悲しくなる程進んでいません。 林氏は,エイズと戦っているアフリカの友人に聞いたそうです。 「私はいったい何をしたらよいのか」と。 個人やNGOができることは限られています。だから,あえて聞いたのです。どうしてほしいのか…。 友人は答えました。 「日本を変えてくれ。日本の人口1億2000万人を変えてくれ」 日本の人口は世界の人口の約2%です。でも,日本の国民総生産は世界の14%を占めています。海外から見ると,良くも悪くも結構,日本は力をもっているのです。日本がどちらを向くかで世界の未来は異なったものになるはずです。もちろん,エイズへの対策も変わってくるでしょう。 友人はそのことを言いたかったのです。 ブラジルでは,感染者の人々の命を救うために「ブラジルの社会全体を変え,貧困対策を進めるために大統領まで変えてしまった。」そして,アフリカでは,「一国の政治を変えるだけでなく,世界の仕組みまで変えた」のです。 なぜ,日本人が日本を変えることができないんだ! そろそろホームラン打者日本人の打席だ!がんばれ! 世界のこのような動きを知るにつけ,そう声援されている気がしてなりません。 とにかく,一気に読めて,力が湧いてくる本です。 ぜひお読み下さい! 480円です。
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