経済失政はなぜ繰り返すのか の商品レビュー
自著。もう15年前の本になってしまった。新聞というメディアと経済政策の関係を昭和恐慌という歴史的イヴェントを事例に分析した本。分析には甘いところもあるし、もう少し前後の変化も織り交ぜながら論じた方が良かったかなという反省点もあるが、これはこれとして完成品。
Posted by
昭和恐慌時のメディアや政府の言い分と現在のそれとが類似している──経済理論で考えると明らかに間違いである政策が最善策であるかのように喧伝される──のはなぜか?という内容と思わせつつ、昭和恐慌時の論調を追いかけてるだけの内容でちょっとタイトル詐欺な気もするが、当時の雰囲気を探るには...
昭和恐慌時のメディアや政府の言い分と現在のそれとが類似している──経済理論で考えると明らかに間違いである政策が最善策であるかのように喧伝される──のはなぜか?という内容と思わせつつ、昭和恐慌時の論調を追いかけてるだけの内容でちょっとタイトル詐欺な気もするが、当時の雰囲気を探るには良い本だと思う。 現在の日本を考えるうえで近代史は重要だと思うんだけどね。
Posted by
恐慌前夜、昭和4年8月28日宰相・浜口雄幸は 全国民に呼びかけた。伸びんがためにまず屈せね ばならぬと。 本書は、メディア(新聞等)が金解禁をどのよう に伝えたのかを検証した本である。 城山三郎の小説に男子の本懐という作品がある。 首相浜口雄幸と蔵相井上準之助による...
恐慌前夜、昭和4年8月28日宰相・浜口雄幸は 全国民に呼びかけた。伸びんがためにまず屈せね ばならぬと。 本書は、メディア(新聞等)が金解禁をどのよう に伝えたのかを検証した本である。 城山三郎の小説に男子の本懐という作品がある。 首相浜口雄幸と蔵相井上準之助による金本位制復 帰の話である。現在の通貨には、信用の裏付けが ない。信用の裏付けとして金が用いられたのが金 本位制である。金本位制の基では、発行する通貨 量は、金の保有量によって制約されるが、戦争な どによって財政支出を増加させなければならない 場合、金準備を上回る通貨を発行して、戦費をま かなう。そうするとインフレになるため、金流出 を避けるために金本位制を一時停止する。 日本も第一次世界大戦のため、金本位制を停止し ており、浜口内閣では、金本位制の復帰を目指し ていた。 本書の結論としては、「昭和恐慌は井上デフレと 名づけたほうが適切な経済政策の失敗に基づくも のであり、一部ではそのことが早くから認識され、 正しい処方箋が提示されていたにもかかわらず、 メディアは誤った理論と意図的な偏向報道によっ て政策転換の遅延をもたらした」というものであ る。金本位制復帰のため、政府は緊縮財政政策を とったが、これによりデフレが進むこととなった。 デフレとは、物が売れないので、物を売るため、 製品の値段を下げる。そのためには労働者の給料 を下げる必要があり、給料が下がると消費が冷え 込み、さらに物が売れず不景気が続くことである。 (と私は理解しましたが) 本書を読むと、政府の経済失策とメディアーのミ スリードが良くわかる。歴史は繰り返すと言うが、 現在のデフレも、昭和恐慌時にも似た感じがして ならない。本書を読んでいて、政府の方向(公務 員給与問題、消費税、財政再建、TPP等)は間違っ ていないか、メディアがミスリードしていないか を改めて考える必要が感じられた。 現在の報道をみると柔軟性が感じられない。これ しかないという、固定観念で突き進めば、同じ過 ちを繰り返すこととなろう。為政者にも柔軟な発 想が求められる。本書を読んでも解決しなかった 疑問が1点ある。大蔵官僚であった浜口と日銀出 身の井上がなぜ金解禁に固執したのかということ である。経済通であるはずの彼らが何を目的とし ていたのかが分ると、良かったと思う。
Posted by
昭和恐慌当時の大阪毎日新聞の記事から当時のマスメディアが何を報じていたかを丹念に調査した書籍です。マスメディアがデフレを称賛するのはいつの時代も変わらないというのがわかりました。小泉改革時代に書かれた本ですが、今の財政再建の話と照らし合わせると面白いです。 分析も深く鋭く面白い...
昭和恐慌当時の大阪毎日新聞の記事から当時のマスメディアが何を報じていたかを丹念に調査した書籍です。マスメディアがデフレを称賛するのはいつの時代も変わらないというのがわかりました。小泉改革時代に書かれた本ですが、今の財政再建の話と照らし合わせると面白いです。 分析も深く鋭く面白いのですが、なぜマスメディアが経済について正しく報道できないかという部分についての提言がなかったのが残念で、星マイナス1です。
Posted by
昭和恐慌(井上デフレ)と2000年代前半のデフレを比較し、メディアでの経済政策の取り上げ方を詳細に研究して経済失政を論じたもの。引用が多くてちょっと読みにくい。やや難。浜口雄幸と井上準之助による金解禁を肯定的に評価する歴史観、城山三郎の『男子の本懐』をあくまでもフィクションとして...
昭和恐慌(井上デフレ)と2000年代前半のデフレを比較し、メディアでの経済政策の取り上げ方を詳細に研究して経済失政を論じたもの。引用が多くてちょっと読みにくい。やや難。浜口雄幸と井上準之助による金解禁を肯定的に評価する歴史観、城山三郎の『男子の本懐』をあくまでもフィクションとして否定している。現代のデフレと昭和恐慌の類似点として、■為替の乱高下を金本位制に復帰しないせいだと煽っていたメディアと、円高・円安が日本経済を大きく揺るがしているかの如く説く現在のメディアが酷似していること。■楽をすることは悪で痛みに耐えることは善であるという経済思想が一般大衆の人気を博し、さらにそれを新聞などのメディアが煽り、相乗的に世論を形成していったことを挙げている。/昭和恐慌の時代にも大阪毎日新聞、東京朝日新聞などの大新聞が誤れる経済政策をもたらしていた。皆さんはメディアに踊らされることなく間違った世論を作るなよ!大衆!というのが著者の言いたいことでしょうか。今も昔もメディアはデフレを歓迎する。それは日本人に植えつけられた倫理観(耐えるは善!のような)によくマッチするからだ。しかしそれは間違っている!! デフレで得をするのは既得権益を持ったいわゆる資産家だ。そしてデフレを肯定的に書くメディアの人間は皆高給取りである! 知識のない一般大衆はグルになった政府とマスコミに騙されている。正しい経済ジャーナリズムが世論をつくることはない。これは無知な大衆が悪いのか、政府・マスコミが悪いのか…。うーん、両方かな。
Posted by
出版社 / 著者からの内容紹介 昭和恐慌前夜、メディアに誘導された世論は、浜口雄幸・井上準之助の「シバキ上げ」政策を熱狂的に支持した。未曾有の経済危機を招いた大新聞の「偏向報道」を明らかにする。
Posted by
- 1