イエスの生涯 の商品レビュー
初版時に読了。再読。 今もなお魂が揺さぶられる作品。 遠くガリラヤで何の罪もない無抵抗の一人の男が 十字架にかけられ処刑される。 彼は後のイエス・キリスト。 『英雄的でもなく、美しくもなく、 人々の誤解とあざけりと、唾の中で犬の死よりもみじめで醜悪な形の死』を、なぜ彼は受け入れた...
初版時に読了。再読。 今もなお魂が揺さぶられる作品。 遠くガリラヤで何の罪もない無抵抗の一人の男が 十字架にかけられ処刑される。 彼は後のイエス・キリスト。 『英雄的でもなく、美しくもなく、 人々の誤解とあざけりと、唾の中で犬の死よりもみじめで醜悪な形の死』を、なぜ彼は受け入れたのか? なぜ弟子たちは奇跡を起こせなかった無力のイエスを師と尊び迫害に耐えながらも、過酷な布教活動に命を賭けたのか? なぜ?なぜ?なぜ? クリスチャンである遠藤文学の重要なテーマになった“無力のイエス”。 渾身のペンで綴るその文章からは遠藤氏の血がにじんでいると思えるほど。 クリスチャンの方々から抗議を受けたと聞きますが、キリストは神である前に、神になる前に、“懊悩する一人の人間”でもあったことを教えてくれます。
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この書籍はイエスの本当の人物像、または歴史をできるだけありのままに書いた物です。一見して宗教色的なものが匂うかもしれませんがあくまでも正しい知識を読み解く為に読みました。 この中ではイエスはごく普通の青年であり特別な能力などは持っていなかったが哲学面で人間の為の神の正しい存在を解...
この書籍はイエスの本当の人物像、または歴史をできるだけありのままに書いた物です。一見して宗教色的なものが匂うかもしれませんがあくまでも正しい知識を読み解く為に読みました。 この中ではイエスはごく普通の青年であり特別な能力などは持っていなかったが哲学面で人間の為の神の正しい存在を解いていた。
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『沈黙』で描かれたイエス・キリストの生きた姿。かくも優しく無垢な人間が、過去に本当に存在したという事実に胸を打たれます。『沈黙』同様、遠藤文学を知る上でぜひとも読んでおくべき作品です。
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09/6/23 ★★★☆ 遠藤周作の視点からイエスを姿に迫る。 王のものは王のもとへ、神のものは神のもとへ 幸いなるかな 心貧しき人 天国は彼等のものなればなり 何もできなかったイエスという真実、絶対的な裏切り者とされているユダの葛藤、 などの遠藤周作の解釈がおもしろい。
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遠藤周作が、日本人の小説家としての観点からイエスの生涯を綴った本。しかしそこから導きだされるイエス像は決して偏狭なものではなく、国家を超えた普遍的なものを持って我々に迫ってくる。最終的に現れてくるイエスは非常に単純明快な意味での『愛の伝道者』なのだ。 これだけを書くとありふれた...
遠藤周作が、日本人の小説家としての観点からイエスの生涯を綴った本。しかしそこから導きだされるイエス像は決して偏狭なものではなく、国家を超えた普遍的なものを持って我々に迫ってくる。最終的に現れてくるイエスは非常に単純明快な意味での『愛の伝道者』なのだ。 これだけを書くとありふれた事しかこの小説には書かれていないと思えるが、そこに至るまでの話の運び方が秀逸である。様々な紆余曲折、イエスの孤独な悩みの描写を経たのちに辿り着くこの結論は、ただ結論だけを述べられるよりも遥かに分かりやすさと深みを持って理解される。 著者は聖書で語られているイエスの奇跡描写の言及を極力排し、あくまで一人の人間を見る目でイエスを見つめる。そこには奇跡を行うことで、苦しんでいる者を具体的な苦しみから直接救うイエスは描かれていない。 苦しんでいる者は、病気などの具体的な苦しみよりも、むしろ誰からも愛されないという苦しみが根本にあると言う事をイエスは熟知していた。そして深く同情し、自らが彼とともに苦しむ事によって彼の根本の苦しみから解放しようと言うのがイエスの愛だ。奇跡的な側面を描かない事で、このような『愛』の構造がより深く理解できる。そしてこのように描写されたイエスは、いっそう人間的な魅力を持つ人物として我々の目に映る。 この他にも、このような考え方のイエスがなぜ当時の人々に全く理解されなかったか、ユダはどんな感情の変遷を経た後にイエスを裏切ったのか、などの興味深い事柄が、遠藤周作の独自の、しかし非常に真実味を帯びた語調で語られる。 とかく奇跡を崇拝する宗教だと誤解されがちなキリスト教だが、この作品ではキリストが崇拝される理由を、極めて人間的な部分においている。ゆえに宗教は信じないと力んでいる日本人にも違和感なく受けいられる。キリスト教をただ崇拝するだけでなく客観的に見る事が可能な日本の小説家だからこそできた事だろう。
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田川建三によるこっぴどい、この「イエスの生涯」における遠藤批判を読むと、なるほど、と合点もいき納得もするのだが、30年以上も以前にこれを読んだ頃は、少し影響も受けた。 そしてその時のイエスのイメージは、今も残っている。 その時、ボクが受け取ったイメージ自体はそれほど間違っていな...
田川建三によるこっぴどい、この「イエスの生涯」における遠藤批判を読むと、なるほど、と合点もいき納得もするのだが、30年以上も以前にこれを読んだ頃は、少し影響も受けた。 そしてその時のイエスのイメージは、今も残っている。 その時、ボクが受け取ったイメージ自体はそれほど間違っていないのではないかと、じつは今も思っている。 ただし、この作品で周作氏が強く打ち出すイメージ・・・<無力なるイエス>ではなく、<寄り添う神、同伴者イエス>の方だ。 新約理解として正しいか間違っているかではなく、ある概念としては受け入れやすかった。 その後、ずっとキリスト教からは距離を置いた暮らし方をしていたので、うっちゃっておいたのだが、またアレコレ考え、いろいろと読み出すと、周作氏から受け取っていた諸々のものが、どうも事実とは違っていることに気が付いた。 だが、それらがどう違っているのかを考えはしなかった。 もう一度、読み返してみようとすらしなかった。 ボクの中ではもう、周作氏のイエス像は終わっていたからかも知れない。 (この項、書きかけ)
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涙が出てきそうになりました。 悲しいとか、かわいそうとか、嬉しいとか。 そういう涙じゃなくて、心の中がぐちゃぐちゃにわけがわからなくなって溢れちゃいそうになりました。 イエス・キリストが起こした奇跡。 それに反して、恐ろしく呆気ない終幕。 ずっと疑問だったその二つ...
涙が出てきそうになりました。 悲しいとか、かわいそうとか、嬉しいとか。 そういう涙じゃなくて、心の中がぐちゃぐちゃにわけがわからなくなって溢れちゃいそうになりました。 イエス・キリストが起こした奇跡。 それに反して、恐ろしく呆気ない終幕。 ずっと疑問だったその二つが、少しつながったように感じます。
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神としてではなく、人間イエスとして愛を表したその姿を表現。 それこそ神と一体でなければありえない。 08/5/14
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遠藤周作が書く、イエスの生涯。 あまりに無力なイエス。 まわりの人々の大いなる期待と反抗。 なんだか切ない。 処刑の時のイエスの台詞の解釈が一番好きですね。 最後まで神に身を預けていた…。
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遠藤周作の目線が優しすぎて涙が止まらなかった。神や信仰を持たない私が最も納得し、共感するイエス像がここにある。
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