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硫黄島に死す の商品レビュー

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2010/11/12

先日読んだ阿井 文瓶の『伏龍』がとても面白かったので、似たような少年特攻兵が出てくる小説を探したら、『小説予科練 一歩の距離』という中編作品に当たった。このタイトルは現在複数の文庫、全集などに収録されているのだが、せっかくだから一番ボリュームのありそうな全集で読むことにした。この...

先日読んだ阿井 文瓶の『伏龍』がとても面白かったので、似たような少年特攻兵が出てくる小説を探したら、『小説予科練 一歩の距離』という中編作品に当たった。このタイトルは現在複数の文庫、全集などに収録されているのだが、せっかくだから一番ボリュームのありそうな全集で読むことにした。この全集には『硫黄島に死す』『草原の敵』『マンゴーの林の中で』そして『一歩の距離』の四編が収録されている。 『硫黄島に死す』はイーストウッドが監督した『硫黄島からの手紙』の原作なんじゃないのかと思うほど映画の内容と酷似。バロン西を主人公にした硫黄島での死闘を描く。 『草原の敵』は戦車に憧れる若き少年兵がモンゴルあたりでソ連に攻めこまれ…といった少年戦記物。 『マンゴーの林の中で』。大戦末期のモーターボート特攻、震洋隊で訓練する少年兵たちの物語。まさに読みたかったのはこんな感じのもの。 『一歩の距離』。特攻に志願するかしないか。回天で華々しく散ったもの…。特攻に志願するも恐怖に苛まされ挙句訓練中に受けた度を越したシゴキで死んでしまうもの…。特攻に志願しきれず、志願しなかったことを悔やみ悩み苦しむもの…といった少年兵たちの群像劇。戦争という狂気に翻弄され不条理な訓練を強いられる少年たちを描いた日本版フルメタルジャケット。 城山三郎本人も伏龍隊で訓練中に終戦を迎えているため、少年兵を描いた作品は、どれも体験したものにしか描けない生々しさを秘めており、読むものを強く惹き込む。夢中になって三五〇ページを一気に読んでしまった。

Posted byブクログ