なぜ「話」は通じないのか の商品レビュー
著者が講演などで悩まされてきた、人の話を聴いたり読んだりして理解しようとする努力を怠り、特定のキーワードに定型的な反応を示す「パブロフのワン君」たちのエピソードを紹介するとともに、彼らに対する著者の怒りがぶちまけられます。また著者は、こうした読者や聴衆が生まれる背景には、「大きな...
著者が講演などで悩まされてきた、人の話を聴いたり読んだりして理解しようとする努力を怠り、特定のキーワードに定型的な反応を示す「パブロフのワン君」たちのエピソードを紹介するとともに、彼らに対する著者の怒りがぶちまけられます。また著者は、こうした読者や聴衆が生まれる背景には、「大きな物語」としてのマルクス主義が凋落したという思想史的な理由があったと論じています。いつものことながら、著者のこうした芸風には「よくやるなあ」と感心してしまいます。 イラクの人質事件をめぐる「自己責任」論争や、加藤典洋と高橋哲哉の間でなされた「敗戦後論争」などの議論のすれ違いをくわしく検討しているところは勉強になりましたが、それ以外はおおむね楽しく読めるエッセイといった内容の本でした。もっとも、著者の芸風が気に入らないという読者にはお薦めできないのはいつものことなのですが、本書はそのなかでもとくに怒りのぶちまけ具合が抜きんでている印象です。
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著者が体験した一方的なコミュニケーションの話や「話」が通じないことが多くなった理由について論考する。 各自の「物語」を他人に伝えるには面倒な手続きがあるのでお互いにルールを守っていかなアカンのにどれだけ無責任で不誠実な連中が多いのかを嘆く本。そういう連中の悪口だけに終わらない...
著者が体験した一方的なコミュニケーションの話や「話」が通じないことが多くなった理由について論考する。 各自の「物語」を他人に伝えるには面倒な手続きがあるのでお互いにルールを守っていかなアカンのにどれだけ無責任で不誠実な連中が多いのかを嘆く本。そういう連中の悪口だけに終わらないでそういうふうにならないようにするための対策がきちんと書いてある。 ネット上で見聞きするありがちな話が多く自戒すべきこと多数あり。 著者の困惑と怒りがいささかキツイ風に思えるがこれも芸か。
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作者の怒りがここまで伝わってくる本は、珍しいような。自分が読みたかった本とは違ったが、著者が言うところのパブロフのワン君になったつもりで読破。
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人文・社会科学の諸領域で活躍する仲正昌樹先生のご本。 タイトルだけを見て単なるコミュニケーションのHow to本やビジネスにおけるスキルアップを図るための本だと思ったら、それは勘違い。この本の内容をざっくり言うと、偉人の理論を悪用して大言壮語する思想オタクや、匿名性の高いネッ...
人文・社会科学の諸領域で活躍する仲正昌樹先生のご本。 タイトルだけを見て単なるコミュニケーションのHow to本やビジネスにおけるスキルアップを図るための本だと思ったら、それは勘違い。この本の内容をざっくり言うと、偉人の理論を悪用して大言壮語する思想オタクや、匿名性の高いネット上のブログ、掲示板において根拠もないお話で盛り上がるネット住民、また他人の話をよく聴かずに、気に入らない言葉が発っせられるやいなや反射的にかみつく学者きどりの者達等々、現代社会に跋扈する誇大妄想家達の奇言奇行を具体的に例示しながら、明晰にそれらの誤りを指摘し、論駁するというものです。 人文系の学問を専攻している私には耳が痛い話ばかり。本書を介して仲正先生に説教されている気分になりました。現在大学生、大学院生として大学に在籍している人は、自身の悪癖や悪しき傾向性を「解毒」するためにも是非とも読むべき。「自分はそんなことない。自分は良識的で見識のある人間だ」と思ってる人こそ、手にとってみてください。なぜなら、自分は正しいと思っている人ほど、自分の誤りに無自覚なことがしょっちゅうあるからです。こんな時パスカルの言葉が想起されます。 「人間の弱さは、それを知っている人たちよりは、それを知らない人たちにおいて、ずっとよく現れている」 参考までに、下に章のタイトルを記しておきます。 第一章 敵は「同じ言語」を語る 第二章 秩序なき「物語」の増殖 第三章 噛み合わない論争 第四章 「話」は通じるか?
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小谷野敦に次ぐ「お怒り系」論客っていう感じ。「バカ〜!」と盛んに怒っていらして、粘着質な怒りっぷりが笑える。けどうなずかされる考察もたくさん、勉強にもなった。ハウ・ツー的な本だと誤解なきよう。けっこう固めの現代思想を土台にしたものでした。
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