エル・アレフ の商品レビュー
博識で、平易かつ高度で、素晴らしい! 19世紀初めの人だなんて信じられない。 巻末の解説が簡易版ボルヘス伝記となっており、その意味でも参照する価値がある。書誌学か…。
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相当、コアな人だと改めて思う。 これは、普通じゃない、 やりたいことは、この、人間とゆう、永年の流れから見た、過去から本来への未発達な人間の原始的な生命を神学的に高度に描いているように思える。 悠久のたどたどしい、生命の吐息 これは、確かに偉大で、これから先もずっと、残る本だが、...
相当、コアな人だと改めて思う。 これは、普通じゃない、 やりたいことは、この、人間とゆう、永年の流れから見た、過去から本来への未発達な人間の原始的な生命を神学的に高度に描いているように思える。 悠久のたどたどしい、生命の吐息 これは、確かに偉大で、これから先もずっと、残る本だが、 正直、退屈で仕方ない くやしさもあるが、まぁ仕方ない、天才だなこの人 これがわかる人は、おそらく、相当な想像力と、相当な手練れだわ、世界は広いな、思い上がれねぇわな
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衒学的で神秘的でありつつ、同時に妙に俗っぽく、 そこが面白いボルヘスの短編集。 情報量が非常に多いので、 フムフムとページを捲るものの、 一編読了して一旦本を閉じると何を読んだか忘れてしまう…… といったことは『伝奇集』のレビューにも書いたが、 凡人の頭がオーバーフローを起こすの...
衒学的で神秘的でありつつ、同時に妙に俗っぽく、 そこが面白いボルヘスの短編集。 情報量が非常に多いので、 フムフムとページを捲るものの、 一編読了して一旦本を閉じると何を読んだか忘れてしまう…… といったことは『伝奇集』のレビューにも書いたが、 凡人の頭がオーバーフローを起こすのは致し方なし。 作者は自由自在に読者をどこへでも連れ出してくれるが、 束の間の旅から戻るや否や、何を見聞きしたのかきれいサッパリ、 といったところ。 以下、特に感銘を受けた作品について、若干ネタバレ臭が漂います。 ■不死の人 骨董商カルタフィルスが貴人に売った『イリアッド』の 最終巻(第六巻)に挿入されていた手稿の内容。 自分が何者かを忘れてしまうほど長く生き、 さまよい続けた「私」は、付き従う蛮族の一員と共に、 砂漠に降った雨をきっかけに記憶を取り戻した。 本来別個のものであるはずの二者の合一という、 清潔なエロティシズムを偲ばせる物語。 ■神学者 古代ローマの神学論争と火刑。 しかし、天上の神には勝者も敗者も関係なく、 同じ一人の人間としか見なされない。 ■ドイツ鎮魂歌 ナチスの幹部だったオットー・ディートリヒ(1897-1952)が 戦犯として収監され、静かに内省に耽る様が、 ナルシスティックに描出されるが、 本文では当人が1908年生まれと述懐しているし、 現実には恩赦によって釈放された由。 死刑前夜の諦念と興奮の描写は ボルヘスの想像力の産物か。 ■ザーヒル 地域や文化によって名指される対象は異なるが、 いずれにせよ、考え始めると、 その形象や概念に取り憑かれたようになってしまう 「ザーヒル」について。 死を覚悟したボルヘスは 亡くなった美女に想いを馳せつつ 「ザーヒル」の一つである アルゼンチンの20センターボ硬貨のイメージを弄び続け、 頭の中でコインが摩耗する頃には 神の姿を見出せるだろうと考える。 しかし、現代アルゼンチンの硬貨 センターボ(1センターボ=1/100ペソ)の種類は 5,10,25,50なのだとか。 それでは神はボルヘスの心象風景にだけ現れる幻なのか。 ■戸口の男 インドのムスリムの町で起きた騒乱を鎮圧するために送り込まれ、 事後、失踪したスコットランド人、 デヴィッド・アレグザンダー・グレンケアンについて、 クリストファー・デューイが語ったこと。 エリアーデの小説のような時間の歪みが生じて読者を眩惑する。 ■エル・アレフ 恋慕していた女性が亡くなり、 命日に彼女の家を訪問するようになったボルヘスは、 彼女の従兄(弟)ダネリと親しくなる。 詩人を自称する彼は生まれ育った家が取り壊されるのを嘆くが、 単なる感傷だけが理由ではなかった。 ボルヘスはダネリ邸の地下に隠された秘密に触れて衝撃を受ける……。 宇宙の神秘を垣間見るかのような荘厳な物語かと思いきや、 創作家として嫉み合う二人の男の関係性に苦笑させられつつ、 聖‐俗の対比の見事さに唸る。
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エル・アレフ ボルヘス(1899-1986)が1952年に出版した短編小説集である。17篇の短編がはいっているが、そのもとになるのは最初の「不死の人」ではないかと思う。この小説では、主人公が不死の人をさがして、蛇食い人種の土地を旅して、迷宮に迷い込んだりするが、最終的には言葉を話さない付き添いの男が「不死の人」であることをしり、それがホメロスであったことをしる。そして、永遠があるなら(そして物質が有限であるなら)、すべての人にすべてのことが起こり、なにもかもがもう起こったことであり、結局、人類は一人であるということになる。つまり、永遠の相でみれば、あなたはわたしで、わたしはあなた、すべての人は一人ということになるのである。 つまり、神の目線でものをみればこういうことであり、神というのは特有の視点そのものであるともいえる。神の視点も視点であることにはちがいないので、われわれ人間が個々にもつ視点とそれほど変わらないのかもしれない。結局われわれは神の一部分ということになる。 ほかの短編も結局、そうした視点から書かれているということになるだろう。論争相手を断罪した神学者、二度死んだ男など、すべては神の一部である。 歴史や文学をはじめた人類は神の視点を獲得しようとしてきたのかもしれない。5が見えているサイコロについて一人の視点から、同時に2を見透かすことはできない。これが視点であり、2を見ている人とはちがうということになるだろうが、1や3を見ている人とは共通する部分もでてくる。これが社会というものだろう。展開図にひらけば1から6を見わたせるだろうが、これは人間流に神の視点を翻訳したものであり、神があるとすれば、サイコロのまま1から6のすべての目をみることができるだろう。神がいないなら、個々の視点のみがあって、神の視点は抽象物であるということになるだろう。 表題作は狂った詩人の家の地下室で、「エルアレフ」というゴルフボールくらい球体をみる話しで、全世界の全歴史を同時にみる話である。永遠や無限の視点を獲得する話である。
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「不死の人」★★★★ 「死んだ男」★★ 「神学者」★★★ 「戦士と拉致された女の物語」★★ 「タデオ・イシドロ・クルスの伝記(一八ニ九-一八七四)」★★ 「エンマ・ツンツ」★★★ 「アステリオーンの家」★★★ 「もうひとつの死」★★ 「ドイツ鎮魂歌」★★★ 「アヴェロエスの探求」★★★ 「ザーヒル」★★★ 「神の書き残された言葉」★★★ 「アベンハカン・エル・ボハリー、自らの迷宮に死す」★★★ 「二人の王と二つの迷宮」★★★ 「待つ」★★ 「戸口の男」★★★ 「エル・アレフ」★★★
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砂漠のように広大な短編集。 読みはじめると、とにかく喉が乾く。でも水を飲んでいるうちに、作品が蒸発してなくなってしまう気がして我慢する。やがて現実が蜃気楼に思えてきて、本の中にこそ真実があることに気がつく。 もっと具体的に翻訳するなら「今のあなたを疑いなさい」といったところだろう...
砂漠のように広大な短編集。 読みはじめると、とにかく喉が乾く。でも水を飲んでいるうちに、作品が蒸発してなくなってしまう気がして我慢する。やがて現実が蜃気楼に思えてきて、本の中にこそ真実があることに気がつく。 もっと具体的に翻訳するなら「今のあなたを疑いなさい」といったところだろうか。 これでもわからない人は、読んでも多分、わからない。
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短篇集。白水Uブックスからも『不死の人』の邦題で翻訳があるが、こちらは平凡社ライブラリー版。タイトル『エル・アレフ』は原題通り。 ボルヘスというと、矢張り、書痴の天国『バベルの図書館』を思い出すが、この短篇集でも『無限の何か』を感じられる。『無限』といっても広大ではなくあくまでも...
短篇集。白水Uブックスからも『不死の人』の邦題で翻訳があるが、こちらは平凡社ライブラリー版。タイトル『エル・アレフ』は原題通り。 ボルヘスというと、矢張り、書痴の天国『バベルの図書館』を思い出すが、この短篇集でも『無限の何か』を感じられる。『無限』といっても広大ではなくあくまでもミニマムなのがボルヘスらしい。
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不死の人 死んだ男 神学者 戦士と拉致された女の物語 タデオ・イシドロ・クルスの伝記(1829−1874) エンマ・ツンツ アステリオーンの家 もうひとつの死 ドイツ鎮魂歌 アヴェロエスの探求 ザーヒル 神の書き残された言葉 アベンハカン・エル・ボハリー、自らの迷宮に死す 二人の...
不死の人 死んだ男 神学者 戦士と拉致された女の物語 タデオ・イシドロ・クルスの伝記(1829−1874) エンマ・ツンツ アステリオーンの家 もうひとつの死 ドイツ鎮魂歌 アヴェロエスの探求 ザーヒル 神の書き残された言葉 アベンハカン・エル・ボハリー、自らの迷宮に死す 二人の王と二つの迷宮 待つ 戸口の男 エル・アレフ
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17の短編と結び。「不死の人」「もう一つの死」「神の書き残された言葉」が特に好き。迷宮と円環の独特の世界観に引き込まれる。訳者解説にもあるが、著者のボルヘスはとても博識な人なのだと思う。歴史、宗教、哲学、文学、そういうものが短い物語の随所に散りばめられている。一般の読者が全てを理...
17の短編と結び。「不死の人」「もう一つの死」「神の書き残された言葉」が特に好き。迷宮と円環の独特の世界観に引き込まれる。訳者解説にもあるが、著者のボルヘスはとても博識な人なのだと思う。歴史、宗教、哲学、文学、そういうものが短い物語の随所に散りばめられている。一般の読者が全てを理解するのは不可能かもしれない。ギリシャ神話やダンテの神曲にはいつかチャレンジしてみたい。
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道を歩いていて、この角はさっき曲がったぞという感覚に陥るようにボルヘスの作品は読んでいて、この作品は前に読んだんじゃないかなと思わせる。そもそも同じ発想から生まれた比喩が散りばめられることから当然のことでして。そのような作品同士の交錯がこの濃い文体で行われることが迷宮と呼ばれる所...
道を歩いていて、この角はさっき曲がったぞという感覚に陥るようにボルヘスの作品は読んでいて、この作品は前に読んだんじゃないかなと思わせる。そもそも同じ発想から生まれた比喩が散りばめられることから当然のことでして。そのような作品同士の交錯がこの濃い文体で行われることが迷宮と呼ばれる所以だなぁ。
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