大英帝国衰亡史 の商品レビュー
本書はイギリスの立場から書かれている。マフディー戦争を「土民の反乱」と表現する(132頁)。エンタメ作品でも腐敗した政権の圧政に立ち向かう組織をマフディーと名乗らせる例がある(富野由悠季『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)。土民の反乱との理解は古さを感じる。これは当時のイギリ...
本書はイギリスの立場から書かれている。マフディー戦争を「土民の反乱」と表現する(132頁)。エンタメ作品でも腐敗した政権の圧政に立ち向かう組織をマフディーと名乗らせる例がある(富野由悠季『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)。土民の反乱との理解は古さを感じる。これは当時のイギリスの感覚であって、それを著者が正当化している訳ではない。むしろイギリス帝国主義の「感傷的な戦線拡大の危うさ」を批判している(135頁)。これは第二次世界大戦の日本軍や戦後の土建国家の乱開発にも該当する批判になる。 本書はトランスヴァール共和国で起きたジェームソン侵入事件を破廉恥で強欲なイギリス帝国主義であり、世紀末の変質と見る(176頁)。しかし、アヘン戦争も十分に破廉恥で強欲である。依存性薬物を売りつけていたのだから。理念として自由主義を評価することは良いが、19世紀の英国も理念としての自由主義からすると卑怯であり、陰謀家的体質が強かった。公正な市場主義とは言えない。
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前近代(1700年代)の産業革命から始まるイギリスの繁栄が、 二度の大戦を経て衰退し、覇権をアメリカに譲るまでの歴史を解説したもの
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[落日と矜持と]「二百年の興隆、二百年の衰退」の後,歴史の一ページに刻まれることとなった大英帝国。類稀なる外交力と威厳で他の追随を寄せ付けなかったこの帝国がなぜ衰退したのかを,歴史の大きな流れの中で示した作品です。著者は,本書で第51回毎日出版文化賞と第6回山本七平賞を受賞した中西輝政。 大きな物語としての大英帝国が人物譚を中心として描かれており,歴史を学ぶことの面白さを存分に味わうことのできる一作。衰亡という着眼点だけではなく,その着眼点を掘り下げていく中西氏の筆が,冴えに冴えているのを感じた読書体験でした。 〜ほんとうに「時代が変わるとき」、それは人びとの心を劇的に変化させるがゆえに、瞬時にして次の時代の大半をかたちづくるようなところがある。〜 執筆からしばらく年月が経っていますが古さがまったくない☆5つ
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イギリスを中心とする文明史の研究者である著者が、大英帝国の興亡を描いた本です。 著者は、大英帝国の衰亡の歴史を、アメリカ独立戦争、ボーア戦争、スエズ戦争の三つを画期として論じています。その際、単なる歴史的な事実を追うのではなく、誰が国の進むべき道を示し、それを国民がどのように受...
イギリスを中心とする文明史の研究者である著者が、大英帝国の興亡を描いた本です。 著者は、大英帝国の衰亡の歴史を、アメリカ独立戦争、ボーア戦争、スエズ戦争の三つを画期として論じています。その際、単なる歴史的な事実を追うのではなく、誰が国の進むべき道を示し、それを国民がどのように受け入れたのかということに焦点を当てることで、文明の衰亡の精神史的なエポックを描き出そうとしているように思います。 たとえば、ボーア戦争に関しては、ヴィクトリア時代の精神史的な気風が失われ、「抑制のない感情の単線的な高ぶりに身をまかせる、精神的な放埓さがあった」という指摘がおこなわれ、そのことが「邪悪で貪欲なイギリス帝国主義」という汚名を、国内にも国外にも広げる結果となったことが、イギリスの衰退を示していると論じられます。 また、第一次世界大戦からスエズ戦争での失敗に至るまでのイギリス外交史において、勃興するアメリカニズムへの対応を誤り、覇権挑戦国であるドイツへの包囲を強めていく中で、悪循環のプロセスへと入り込んでいったことに触れられ、そこにはパクス・ブリタニカの特徴の一つであった、柔軟さと脅威を使い分ける「宥和の伝統」を逸脱するという過ちが見られるという指摘がなされています。 少しうろ覚えなのですが、著者がどこかで、イギリス留学時代、指導教授に国際関係論を勉強したいと言ったところ、国際関係論などという学問は存在しない、あるのは外交史だけだ、という内容のことを言われたという発言をしていた記憶があります。本書では、大英帝国の各時代を代表する指導者たちが、どのような外交政策をおこなってきたのかを説明するとともに、その歴史を通じて垣間見ることのできる文明史的なストーリーを読み取ろうとする意図をうかがうことができます。著者が留学時に開眼することになった外交史という学問が、単なる瑣末な事実を収集するだけの営みではなく、人間のたどった壮大なドラマを理解することにつながっていたのではないかと考えさせられました。
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大英帝国の発展と衰亡をコンパクトにまとめた良書です。論点が明確なため非常に読みやすく、栄華を極めた帝国が徐々に衰えていく様子とそれを押し止めようとする人々の努力が読者の胸に迫ってきます。
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大英帝国の本質とは何か、その衰亡の原因とは何か。それを追う本書ですが、帝国衰退の横で反骨精神旺盛に膨張するアメリカの成長の過程が、読んでいて非常に面白かった。 (自分がアメリカ史好きなのもありますが) あのアメリカという国が、独り立ちしたその時から如何に大英帝国の背中を野心を持...
大英帝国の本質とは何か、その衰亡の原因とは何か。それを追う本書ですが、帝国衰退の横で反骨精神旺盛に膨張するアメリカの成長の過程が、読んでいて非常に面白かった。 (自分がアメリカ史好きなのもありますが) あのアメリカという国が、独り立ちしたその時から如何に大英帝国の背中を野心を持って睨み続けていたかが、二国間の交渉から垣間見られます。 特に 「幼稚にも見える自己中心性と理想主義の一方で、到底それらと普通には同居しえないほどの鋭敏な感覚と複雑な”計算”能力をもつ、それが当初より国家としてのアメリカの本質であった」 の一文には、ものすごく上手いこと言ってる感に心を掴まれました。 第二次世界大戦が終わり、徹底的に帝国の息の根を止めにかかるアメリカの血気迫る様子に、国は理性で動くものでは到底ないことを感じます。 あ、当の大英帝国のお話も非常に面白いので、是非ご一読下さい。
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これは面白い。 本の厚さに負けぬ内容です。面白すぎる。内容の硬さのわりにするする読めます。面白すぎて。 一度は世界の覇者となった大英帝国が、どのようにして衰亡していったのかという部分に焦点をあてた本。 大英帝国滅亡に関する本はたくさんあるけど、この本は衰亡そのものよりも、衰亡の...
これは面白い。 本の厚さに負けぬ内容です。面白すぎる。内容の硬さのわりにするする読めます。面白すぎて。 一度は世界の覇者となった大英帝国が、どのようにして衰亡していったのかという部分に焦点をあてた本。 大英帝国滅亡に関する本はたくさんあるけど、この本は衰亡そのものよりも、衰亡の過程に関わった人物たちの描写に力を入れていたような気がします。 そのためか、多くのドラマがあって胸にせまるものがありました。ゴートンのくだりは泣けた…。 そして、大英帝国がゆるやかに衰退していった流れ。これには、色々考えさせられました。世界の流れは残酷だなあと。 何はともあれ、戦争が早くなくなればいいのにと…と思います。 ただ1つ言うならば。 この作品、個人的には大絶賛ですが、世界の流れというよりも完全に大英帝国側にたった本なので、イギリスに興味がない人はきっとすごくつまらない内容になっていると思います。
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英国の発展から衰退までを叙述した著作。 基本的に問題点やポイントを明瞭に表現しているので、高校の歴史程度の基礎知識があれば、著者の述べようとしている歴史の流れは問題なく理解出来る。 ギボンを意識してか、歴史の「潮流」を大変重視する傾向があり、時にやや情緒的で宿命論的に見えるきらい...
英国の発展から衰退までを叙述した著作。 基本的に問題点やポイントを明瞭に表現しているので、高校の歴史程度の基礎知識があれば、著者の述べようとしている歴史の流れは問題なく理解出来る。 ギボンを意識してか、歴史の「潮流」を大変重視する傾向があり、時にやや情緒的で宿命論的に見えるきらいはあるが、少なくとも英国の発展に対する視点は納得が出来るものであり、歴史事件の材料としても、著者の選択基準は適切なので、予備知識なしに近代英国史の概説書として読むにも、それなりにとっつきやすいだろう。
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