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翼をひろげて の商品レビュー

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2011/07/16

優しさに癒される本。スズメやカラスからインコに梟まで15羽の鳥たちを大切に飼っていたカルトゥシュケ氏。でも鳥たちはどんなに愛情を注いでもだんだんと元気をなくし歌うことを忘れてしまう。鳥たちの病気は「うつ病」自由を求める鳥たちをカルトゥシュケ氏はそれぞれが一番住みやすそうな場所に放...

優しさに癒される本。スズメやカラスからインコに梟まで15羽の鳥たちを大切に飼っていたカルトゥシュケ氏。でも鳥たちはどんなに愛情を注いでもだんだんと元気をなくし歌うことを忘れてしまう。鳥たちの病気は「うつ病」自由を求める鳥たちをカルトゥシュケ氏はそれぞれが一番住みやすそうな場所に放してあげる。そうして鳥たちが去った部屋で今度はカルトゥシュケ氏が病気になってしまう。「鳥たちを放してやるしかないわね」というシェルツ婦人に氏はこういう。「彼らはみんなわたしのところで快適に暮らしているんだ。・・・ここは牢屋なんかじゃない」「鳥たちのうち何羽かは自分からここに来たんだ」わかっているのに、鳥たちを愛していればこそ本当に鳥たちが何を望んでいるかを。もうこの時点で、カルトゥシュケ氏の病気は始まっているのかもしれない。現実を受け入れようとしてできないこと、自分自身をも欺こうとしていること。そして鳥たちが去ったことで受け入れなければならない現実と向き合うしかなくなってしまう。カルトゥシュケ氏の周りには優しい人たちがいる。一緒に悩んでくれ手助けしてくれるアントンとシェルツ婦人。意地悪に見えるシュメルツェルさんだって、本当はカルトゥシュケ氏が何を考えているか打ち明けてほしかったのかもしれない。最もこちらはアントンたちとは違って面倒そうだなと思ったらさっさと手を引いてしまうだろうけれど。アントンの「いきづまったときは、何も考えないでいれば自然といい考えが浮かんでくる」という助言に静かに目をつぶるカルトゥシュケ氏。そして鳥たちのように自分を解放し飛び立っていく。疲れた大人を癒してくれる優しさのある本だった。

Posted byブクログ