1,800円以上の注文で送料無料

暗い抱擁 の商品レビュー

3.9

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

アガサクリスティーが…

アガサクリスティーが別名義で発表した純文学小説。人は自分のことさえ本当に理解は出来ないのに、他人のことなど何も分からないのだと感じた。

文庫OFF

このタイトルよりも原…

このタイトルよりも原題の『The Rose and the Yew tree(薔薇とイチイ)』のほうが雰囲気をよく表している。これは美女と野獣の物語だ。この野獣の不幸は、彼が本当に美しいものを知っていて、そして自分がそれを手に入れられないことを自覚していることだった。この葛藤と嫉...

このタイトルよりも原題の『The Rose and the Yew tree(薔薇とイチイ)』のほうが雰囲気をよく表している。これは美女と野獣の物語だ。この野獣の不幸は、彼が本当に美しいものを知っていて、そして自分がそれを手に入れられないことを自覚していることだった。この葛藤と嫉妬で彼は苦しむ。この嫉妬の苦しみをアガサはシェイクスピア『オセロ』のイアーゴにうまくリンクさせている。葛藤ゆえにゆがんだ野獣の悪態も醜さもいとおしくなる物語だ。

文庫OFF

本書は、推理小説では…

本書は、推理小説ではないのでご注意ください。恋愛小説ですよ。既婚者イザベラが婚約者を捨て、ゲイブリエルとの駆け落ちをするというありがちなストーリーです。クリスティーの恋愛小説であれば『愛の重さ』のほうをお薦めします。

文庫OFF

2025/12/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

その人生を幸福と呼ぶか。 ヒュー・ノリーズの元にゲイブリエルが死にそうだと報せが来る。ノリーズはゲイブリエルを憎んでいた。イザベラを死なせたゲイブリエルを。ノリーズの語るゲイブリエルの物語。 一気に読ませる。メアリ・ウェストマコット名義の作品なのでいわゆるミステリではない。しかし最後に明かされる真相に向かって進み、最後の打撃に痺れるという点では実によくできたミステリ的。 軽薄で自己宣伝的な醜男ゲイブリエル。彼の根底に流れる高貴なものへの歪んだ感情。生まれながらに貴族というのが日本には(一応)ないので、ここら辺の大英帝国的な価値観を完璧に理解はできないけど、なんとなく感覚的にはわかる。自分がつまらない、みっともないものだと思わされてしまう存在がそこにいて、それを愛してしまう苦しみ。ゲイブリエルの吐露には活字なのに巻き込まれそうな勢いがある。 まっすぐなイザベラ。彼女は自分で決めたことしかしない。そんな彼女の前でゲイブリエルが襲われた。銃弾に貫かれたのはイザベラだった。それが意味するところとは。背表紙のあらすじを読むと(本当にこのあらすじが9割)キリスト教的博愛とは『塩狩峠』みたいなもので、この話はイザベラがゲイブリエルを愛していたという解釈ではないのかと思ったが。 ダメ男に次々と引っかかる感傷的な女性とか、大袈裟におせっかいを焼く高齢女性とか、悪人ではなく平凡なまとめ役とか、ズレていると思いきや放った不思議な一言が真実を指している芸術家とか、相変わらず登場人物の描き方が秀逸。カッコいいと思ったのは、大英帝国の大奥様を象徴するレディー・セント・ルーと、クールに周囲の観察をして如才なく立ち回る義姉テレサ。語り手のヒューには病んでいるように見えて、その根は健康な精神を持っていると感じた。 第二次世界大戦末期における大時代なイギリスの終焉が感じられるのも面白い。この先に『日の名残り』があるのだと感じる。

Posted byブクログ

2024/09/16

アガサ・クリスティのミステリを読み尽くした人ほど読んで欲しい一冊。クリスティらしさもありつつ、新たな愛の物語を体験することができるだろう。

Posted byブクログ

2024/07/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

お世辞にも見た目が良いとは言えないが、天性の人たらしで自分の魅力をアピールする能力に長けたゲイブリエル。障害のために日頃腫れ物のように扱われるヒューに対しても一切気を遣わないゲイブリエルのあけすけなところに、ヒューはある種の感銘を受ける。人当たりのいいゲイブリエルがヒューの前でだけ仮面を脱ぎ、虚勢の下に隠された劣等感や弱みを曝け出す。ヒューの立場から彼を見るからこそ、読み手もゲイブリエルのコンプレックスと裏腹の虚勢を垣間見て彼の人間くささを感じ取ることができる。 ゲイブリエルとイザベラのどこまでも暗い逃避行。取り澄ました(とゲイブリエルが思い込んでいる)イザベラにどうしようもない劣等感を刺激されたゲイブリエルは、彼女を泥水に引き摺り込むも、彼女が汚れることはついぞなかった。どこまでも自分勝手だが、それこそがゲイブリエルにとっての苦しみ。そしてそれを見せつけられてもどうすることもできないヒューにとっても地獄。 兄嫁のテレサの存在がこの世界の秩序のように思える。

Posted byブクログ

2022/09/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

暗い抱擁 アガサ・クリスティ メアリ・ウェストマコット名義のクリスティ小説④ *☼*―――――*☼*――――― 一生車椅子生活となる事故を結婚間際に起こしてしまったヒューが語り手。その後、義姉と共に政治活動に関わることになり、そこで出会ったのが政治家のゲイブリエル。 政治家なんて俳優とそう変わらないと思ってるんだけど、結局見せ方だよなと。ゲイブリエルはかなりの野心家だけど、劣等感で溢れていたんじゃないかな。ヒューに対してゲイブリエル曰く私の愚痴を聞くために存在するというように、人を見下すことによって自分を保っていたようにも思う。 ミリー・バートのような人はメアリ名義小説に必ず出てくる。済んでしまったことをいつまででもクヨクヨする在り来りな(ちょっと私みたいな)女性。彼女がゲイブリエルに助けを求め、彼はいつもと違って紳士らしく振舞ってしまったがために、事件になった。 イザベラはルパートと再会し婚約、結婚することをとても嬉しく思っていたようなのに、ゲイブリエルと駆け落ちするとヒューに告げたところが突然すぎて意味が分からなかった。 ただ、結婚とか一生を共にするとか言う意味で着いて行ったのでは無いと言うのは分かった(彼女の心理については書いてないので謎)。ゲイブリエル的には、ミリーが助けを求めた時に一緒に逃げようという気持ちがあったのに、イザベラが台無しにしてしまった。 最後からプロローグに繋がるというパターン。 ゲイブリエルは結果的にはちゃんとした人としての人生を送っていたよう。 選挙と恋愛を一緒にした小説で難しいかと思ったけどそんなことも無く、とても面白かった。 2022/07/16 読了(図書館)

Posted byブクログ

2022/01/26

悪い男に攫われても、お姫様はお姫様でした。 同じくメアリ・ウェストマコット名義の 『春にして君を離れ』を「女性の理性の勝利」とするならば、 本作は「男性の感情の敗北」と感じました。

Posted byブクログ

2021/12/17

メアリ・ウェストマコット名義作品 これは面白かった。途中までメアリ・ウェストマコット名義作品とは知らずに読み進めていたが、プレリュードから引き込まれた。 一番好きな登場人物はテレサ。とても素敵な人だと思う。 印象的なフレーズは、ある事件についてレディー・セント・ルーが一度だけ意見...

メアリ・ウェストマコット名義作品 これは面白かった。途中までメアリ・ウェストマコット名義作品とは知らずに読み進めていたが、プレリュードから引き込まれた。 一番好きな登場人物はテレサ。とても素敵な人だと思う。 印象的なフレーズは、ある事件についてレディー・セント・ルーが一度だけ意見を述べた部分から。 「上層階級の特権だけでなく、その義務をも受け入れるが故に、敢えて臆さずに自分を上層階級と呼ぶ人を選ぶべきだったのです」(p.325) アガサ・クリスティー完全攻略の著者の忠告に従って、文庫の裏表紙のあらすじは読まずに読み進めたが正解だった。読了後にあらすじを読んで、霜月蒼氏の言うようになにもかも台無しの内容にびっくりした。

Posted byブクログ

2020/12/19

2004年発行、早川書房の文庫本。解説は宇田川拓也(書店員)。今回もミステリー風味はないな、と思ってたのだが、駆落ちシーンでの女性側の態度への示唆部分を読んで驚いた。あのシーンはそう読む必要があったのか、と。イザベラの行動はいろいろと解釈できると思われ。あと主人公の一人称小説でな...

2004年発行、早川書房の文庫本。解説は宇田川拓也(書店員)。今回もミステリー風味はないな、と思ってたのだが、駆落ちシーンでの女性側の態度への示唆部分を読んで驚いた。あのシーンはそう読む必要があったのか、と。イザベラの行動はいろいろと解釈できると思われ。あと主人公の一人称小説でないと成り立たないだろう。主人公が平均的な人物でないところも。

Posted byブクログ