江戸っ子長さんの舶来屋一代記 の商品レビュー
サン・モトヤマの会長の書かれた本。若い人たちに語り掛ける、というちょっと面白い形式でまとめられている、ビジネス本。成功した年配の方の「私の履歴書」のような本は、鼻につく自慢話の列記だったり、「昔はよかった」的な回顧潭に過ぎなかったりするのもある。が、この本はそういうフレーバーもち...
サン・モトヤマの会長の書かれた本。若い人たちに語り掛ける、というちょっと面白い形式でまとめられている、ビジネス本。成功した年配の方の「私の履歴書」のような本は、鼻につく自慢話の列記だったり、「昔はよかった」的な回顧潭に過ぎなかったりするのもある。が、この本はそういうフレーバーもちょっとなくはないが、盛りだくさんに教訓が込められていて、かなり実になる内容。 戦後の闇市で父の仕事を引き継ぎ、最初は物のない日本でアメリカの高級品を売って儲けた。有名な写真家に「欧州の文化を売れ」と諭されて、まだ日本で存在していなかった欧州ブランドの輸入販売を行った。 常に「感」を働かせることが必要だと説く。また、自らは商人であり、顧客との絆を結ぶ「情」を大切にしなきゃならないと説く。一方で、それは江戸っ子のお馬鹿な欠点でもあり、関西商人の方が商売は上手だとも言う。読んでいくと、とても考え方がしなやかで、常に先を見ている。そして、人からの忠告を大切に聞く姿勢を持っている。失敗して反省はしても後悔はしない。物事の見方が決して一方的にならない。そうやって、成功しても浮つかず、「情」を、すなわち顧客を大切にし、謙虚に、そして先を読むしなやかさで、長く商売を沈ませずに成功に導いてきた。 夢は見るものではなく、夢を持たなければならない、という言葉にもはっとさせられる。見ているということは実現させようとしていないということ。持ってこそ実現しようと行動に移そうとする。 謙虚に、常に先を考え、失敗したらすぐ反省し、夢を持って、たゆまず努力する、そうすれば、もちろん運不運は多少あったり、失敗することも時にあっても、きっと人は幸せをつかむことが出来る。たぶんそういうことなのかな、と思うし、著者のお話には、そういう説得力がある。 戦争に行って何度も死ぬ寸前の体験をされ、生還された、というのはきっとどこかで考え方なりに影響しているのでは、と思うが、あまり深く掘り下げて語られてはいない。そもそも根っから商いが好きで好きで、面白くてたまらなかったのだろう。それこそ、自ら言われている通り「飽きない」でずっと一筋に努力されてきたのだ。 欧州のブランドが巨大企業化し、かつての高級ブランド商品が今はもうどこでも手に入るようになってしまった。アウトレット店があちこちに出来て、著者が手掛けてきた商売はもうできなくなっている。しかし、決して、嘆いたり、そういう時代を批判しようとしない。現状を淡々と分析し、これからは、何が起きるか、今は何をするべきか、しなやかに考えている。もう自分は長く生きていないと言いながら、未来について考える情熱を持ち続けている。 自分も、ITの世界でエンジニアとして長く経験を積んできて、そこからさらにまた経験を少し広げて、じゃあどうしようか、ということをまさに今考えている。いったん後ろに下がって仕事をするのがいいのか、それともあくまで現役として突っ張り続けるのか。体力的にも気力的にも、若い人に並んで同じように突っ張るのはちょっとしんどいかも、と思う。少し下がって、でも、若い人達を盛り立てて前に出る、そんな立ち位置が理想なのだろうか。著者からすればまだまだ若いと言われる年齢なのだろうが、迷っている。ずばりの答えをくれたわけではないが、なかなかいい本だった。
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[ 内容 ] グッチ、エルメスを日本に紹介した男は、生粋の江戸っ子商人。 戦後の闇商売時代から一貫して「文化を売る。 美しいものを売る」舶来屋一筋。 日本のファッションブランドビジネスの立役者として内外に知られた存在であり、その半生はひとつの痛快な戦後史でもある。 本書はその江戸...
[ 内容 ] グッチ、エルメスを日本に紹介した男は、生粋の江戸っ子商人。 戦後の闇商売時代から一貫して「文化を売る。 美しいものを売る」舶来屋一筋。 日本のファッションブランドビジネスの立役者として内外に知られた存在であり、その半生はひとつの痛快な戦後史でもある。 本書はその江戸っ子が語り下ろした商人の道。 「商い」は「飽きない」、商売に必要なのは「感情」と「勘定」―。 生きたビジネス指南は巨大資本ビジネスの行き着く先の、そのまた先を読む知恵袋。 [ 目次 ] 1 「長さん」と呼んでおくれ(「笑顔が一番」舶来商売はじめて五十年、祖父の代から百年;「商いは飽きない」祖父から学んだ江戸っ子商人気質 ほか) 2 商売の上手な人 下手な人(「文化を売れ!」僕が舶来屋になった理由;「買ったのは、実は日本のソニーだった」はじめてのヨーロッパ旅行 ほか) 3 商人の道(商売に向く人、向かない人;直感力のすぐれた人は、商人として大成する ほか) 4 夢は見るものでなく、掴むもの(イタリアのアルタガンマから「名誉アソシエイト」を授与される;夢は夜見て、昼開く ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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二次大戦中は中国戦線へ行き戦後の混乱も乗り越え、日本にヨーロッパのブランドを紹介し多くの方々に広めてきた方。この本を読んで真面目にお客様に喜びを伝え、商品だけでなくその世界観を大切にしてその気持までもお客様へ伝えようとすることの大切さがわかった。 中国でも慰安婦へ走らず、真面目...
二次大戦中は中国戦線へ行き戦後の混乱も乗り越え、日本にヨーロッパのブランドを紹介し多くの方々に広めてきた方。この本を読んで真面目にお客様に喜びを伝え、商品だけでなくその世界観を大切にしてその気持までもお客様へ伝えようとすることの大切さがわかった。 中国でも慰安婦へ走らず、真面目に現地の方を守る役を務めたり、その結果現地の方からお礼を受ける。お礼としてもらったお金を、日本軍の移動などで刈り出された中国人に支払うことで彼らと良い関係を築いたことが素晴らしい。当時そんな考え方をする人はほとんどいなかっただろう。日本軍の物資を運ぶために馬を提供したり、協力するのは当たり前と思われていただろうに。それに対価をきちんと出したのだ。
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