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リンさんの小さな子 の商品レビュー

4.3

45件のお客様レビュー

  1. 5つ

    25

  2. 4つ

    10

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2023/03/15
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すごく悲しくて辛いストーリーなのに、 なぜか心が温まる不思議な本だった どこの国か、いつの時代か、すら説明が不要なほど すっきりとしたシンプルな読み心地だった 言葉の通じない2人の 喪失感を抱えながら、だからこそ築くことができた友情に感動し救われた

Posted byブクログ

2021/10/27
  • ネタバレ

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喪失と希望の物語ーーと書くと、こそばゆいのですが、思わずそう言いたくなってしまう本。 東南アジアを思わせる国から、難民として戦禍を逃れ、腕に抱いた幼子と鞄1つとともにフランスに降りたった老人・リンさん。 収容施設で孤独な日々を送りながらも、同じく孤独を抱えたフランス人・バルクさんと知り合います。 お互いの名前すらわからず、言葉も通じ合わない2人。 けれども、自分自身を形づくる大切な物を失っているという共通の経験によって、気持ちを少しずつ通い合わせ、やがてかけがえのない友人となっていきます。 実は、ラスト直前に起こるある出来事に動揺しすぎて、最後に明かされる真実に気がつかないまま、本を読み終えてしまったんですよね。 で、ネットの書評やブクログの他のレビュアーさんの投稿で、気がついたという……(汗)。 でも、その真実をふまえてラストを読み直すと、そこで提示されている希望がどういうものか、くっきりと浮かび上がってくるように思います。 作中でリンさんが腕に抱える幼子の名前が、「サン・ディウ」といって、リンさんの国の言葉では「穏やかな朝」という意味なのですが、フランス人であるバルクさんには「サン・デュー(神なし)」と聞こえているんですよね。 苦しみとともに、くりかえし朝が訪れること。 その中で、自分自身が拠り所にするものによって、人が生かされていること。 生きることの厳しさと力強さに胸がうたれた1冊でした。

Posted byブクログ

2021/08/21

難民の問題もあるがそんなことより言葉も通じないおじいさんと大男の間に繋がった奇跡のような友情の美しさに言葉を失う。リンさんの小さな子が本当はなんであったのか最後に分かるが、彼女はリンさんの失われた家族であり後にした故郷であったのだ。そして心優しいバルクさん、あなたがいてくれて良か...

難民の問題もあるがそんなことより言葉も通じないおじいさんと大男の間に繋がった奇跡のような友情の美しさに言葉を失う。リンさんの小さな子が本当はなんであったのか最後に分かるが、彼女はリンさんの失われた家族であり後にした故郷であったのだ。そして心優しいバルクさん、あなたがいてくれて良かった。

Posted byブクログ

2021/08/17
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ブックオフで何度も目が合って?「読んだ方がいいよ」と話しかけられている気がして手に取った本。 150ページ程度の中編で長さも丁度いよく、翻訳も読みやすい。読み終えるのがもったいない気持ちになる本。 難民の話がベースとしてある物語。最初はどこの国かわからない様な話だけど、訳者のあとがきにも記載があるように作者はフランス人で、おそらくリンさんはベトナム人だろうと。フランスの植民地だったから。 現実世界でも(日本でも)難民問題は取り上げられていて、15年前の作品であるにも関わらずタイムリー。しかも内容は美しいという、不思議な作品
 太った友人「バルクさん」との心温まる友情の日々。 美しいイメージの描写。 後半になるにつれ、どうしょうもない違和感が頭をもたげる。 リンさんが物語のはじめから大事に世話を焼き、 常に肌見放さず抱いている、 「リンさんの小さな子」=「サン・ディヴ」=「サン・デュー(フランス語で”神なし”の意味)」 乳幼児なのにずっと大人しすぎるほどで、泣くこともせず食欲もない… 同じ作者の「灰色の魂」という本はフランス本土でベストセラーになったという ことだが、訳者によるとどちらかというと訳しづらい難解な作品のようだ。 そちらもぜひ読んでみたいが、本書は「これぞ小説」といった 読書の醍醐味を楽しむことが出来、文学的な上にエンタテインメント性も 兼ね備えている。 文句なしの傑作。

Posted byブクログ

2020/12/28

同じ言語を話せても、相手を理解できるとは限らない。その一方で言葉が通じなくても、理解できることもある。相手に理解してもらえたって思うことが、相手を理解することなのかもね。

Posted byブクログ

2022/01/29

戦争で自国が崩壊し、難民となった東南アジア人の老人がフランスに渡って生活した、半年程を描いた話。人の心の美しさが散りばめられた作品でした。ただ、気になった点がいくつか。まず街の人々の心無い態度には、心底嫌な気持ちにさせられた。街中での通りすがっただけなのに、冷やかしや悪口を言いに...

戦争で自国が崩壊し、難民となった東南アジア人の老人がフランスに渡って生活した、半年程を描いた話。人の心の美しさが散りばめられた作品でした。ただ、気になった点がいくつか。まず街の人々の心無い態度には、心底嫌な気持ちにさせられた。街中での通りすがっただけなのに、冷やかしや悪口を言いに、わざわざ声をかけるのは国民性?今この時代でも、フランスにアジア系の人が渡ったら、そういう扱いをされるのでしょうか?こんなに差別的なのかと、ただただ不安に。また戦争が原点にあるストーリーだからこそ、現実的に描かれてると思いきや、異様にずっと大人しい幼子、幼子の前で煙草を吸いまくる友に対して、もっと吸って欲しいとでも言うかのような喫煙に対する喜びが、ちょっとピンと来なくて理解に苦しみました。

Posted byブクログ

2019/11/28

温かい小説。何を見て気になったのかは忘れたけど、YA向けブックガイドだったか。サラッと読み通せる中編なんだけど、内容はなかなかに重厚。言葉の通じない者同士、かつ男同士、しかも老人と中年の交流ってのがポイント。小さな子も重要だけど、家族を亡くした者同士、お互いの態度のみを通じて分か...

温かい小説。何を見て気になったのかは忘れたけど、YA向けブックガイドだったか。サラッと読み通せる中編なんだけど、内容はなかなかに重厚。言葉の通じない者同士、かつ男同士、しかも老人と中年の交流ってのがポイント。小さな子も重要だけど、家族を亡くした者同士、お互いの態度のみを通じて分かり合う姿が、良い。突き詰めると、どうして二人はここまでお互いに対して熱くなれるんだろう?っていう疑問がない訳じゃないんだけど、それはまあ、些末な問題ってことで。

Posted byブクログ

2021/10/27
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「リンさんの小さな子」(みすず書房)  フィリップ・クローデルという人のことを僕は知らなかった。「リンさんの小さな子」(みすず書房)という作品は、たしか保坂和志の「試行錯誤に漂う」(みすず書房)というエッセイ集の中で、同じクローデルの「ブロディの報告書」という作品が紹介されていて、読みもしていないのに、この作家の作品を立て続けに買った。その中にあった小説だ。僕は時々そういう本の買い方をするが、紹介している人を信用しているか、尊敬している場合に限る。今回は信用している場合だ。    結果的にズバリ的中した。この作品は2016年から2017年にかけてぼくが読んだ小説の中でベストワンといっていいと思う。    「リンさん」はその名の響きから類推すると東南アジアのどこかの国の貧しい農民であるらしいが、戦争の中で息子夫婦を失い、戦場となった故国を逃れ、たった一人残された孫、生まれたばかりの小さな子を連れてフランスに逃れてきた難民であるようだ。長い船旅のすえ、ようやくたどり着いたフランスの港町の難民収容所に暮らし始める。  殺伐とした収容所を抜け出し、小さな女の子を抱きかかえて街を歩き回る日々の中で、フランス人の老人と知り合いになる。フランスの老人は妻に先立たれたさみしい老後を暮らす身の上であるらしいが、海の見える公園まで散歩してベンチに座り込みパイプ煙草をふかしながらボンヤリ思い出の時間を過ごすのが日課だ。    そんなある日、彼はひとりの東洋人の老人と知り合いになるというわけだ。妻も友達も失った人生の黄昏を生きる一人の男と、働いてきた土地も家族も失い、望んだわけでもないのに異国の地に連れてこられ、で、そんなふうにさまよっているリンさんとの出会いと、二人のお付き合い。  フランスの老人はリンさんの言葉を理解できないし、リンさんはリンさんでフランス語が、まったく理解できない。二人は「こんにちは」というそれぞれ国の挨拶の言葉を互いの名前だと取り違えて呼びかけあう。実に頓珍漢な会話を交わしながら、互いの寂しさが感応しあうかのように友達になってゆく。  小説は二人の老人の、奇妙といえば奇妙な友情を、淡々と描いてゆく。友情というのは、本当はこういうものだ。60歳を越えた読者である僕は久しぶりに友達や友情について考える。それが「生きる」ということが「いいことだ」という考え方を支える大切な何かであったことに気づく。  リンさんは、戦場の故郷で死ななくてよかった。死んでしまいたかったリンさんを支えたのが、残された小さな子の命を守るという文字どおり必死の思いであったのだが、生きていてよかった。  新しい友達はリンさんの小さな子のために可愛らしいドレスをプレゼントし、かつて、妻と誕生日にはやってくることにしていたレストランでの食事に招待する。リンさんは小さな子にフランスの子供服を着せ、初めて食べるフランス料理やワインがおいしいのか、まずいのかわからない不思議な喜びを味わう。フランスの老人はそんなリンさんの様子が面白くてしようがない。  しかし、小説はここでは終わらない。リンさんは、最初に収容された場所から、新しい収容施設への移動を命じられる。同じ町の中にあるらしい、美しく清潔な建物へ自動車で運ばれたリンさんは、そこがどういう場所であるのか、なぜそこに運び込まれたのか、そこにいる人々は何をする人なのか全くわからない。  読者にもよくわからない。善意の施設であるらしいのだが、リンさんがここへ移送される理由も良くわからない。  その美しい白亜の建物には門番がいてリンさんは繰り返し外出しようと試みるのだが、行動は監視され、外出は禁じられる。リンさんは友達と会うことができない。意を決したリンさんは、その建物からの脱走を試みる。まんまと逃げだすことに成功したものの、友達がいるはずの港の見える公園がどこにあるのかわからない。  街をさまよい続けたリンさんは、ついに、あの友達の姿を見つけることができる。  車道を駆け出したリンさんを、無情にも一台の自動車が跳ね飛ばす。瀕死のリンさんと投げ出された小さな子がフランス人の老人の目に映る。  小説はそこで終わる。そこで初めて読者は、二人の老人の悲しみの深さを知ることになる。作品の結末の哀しみの深さはリンさんの死にではなく生のほうにあった。どうぞお読みください。(S)  追記2021・10・27   ブログにも感想を載せています。よろしければ覗いてみてください。  https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201904240001/

Posted byブクログ

2016/06/05
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高山なおみさんのおすすめ本だったので、頑張って読んでみました。本ブームが去りそうなときだったので、かなり頑張って読んだ。読みだすとするするといくのだけど。 内容は戦争もからんでるのかな?すこし重め。 ちょっとゾッとするところがあったけれど、リンさんの人柄が小説をやわらかいものにしている。なかなか衝撃なラスト。海外モノはそんなにいいと思うことないんだけど、ふつうによかったです。 <高山なおみさんの感想> すごくいい。ゆっくりのスピード。言葉で書いてあるのに、言葉にはならないことを読んでいる。でも、れっきとした言葉になっている。真ん中へんで、どうしようもなく涙がぼろぼろこぼれた。本を読んでここまで泣くのはひさしぶり。なんて素晴らしいんだろう。 最後になっていろんなことに気づかされ、体ごと裏返しにされるような、驚きと感動を味わった。涙をひと流しし、ほーっとため息をつきながら眠りにつきました。素晴らしい世界だった。

Posted byブクログ

2016/03/01

私はリンさんを よく知ってるような気がしてくる。 やっぱり知ってる人だと思う。 でも誰かはわからない。 希望のような絶望のような。

Posted byブクログ