1,800円以上の注文で送料無料

長崎乱楽坂 の商品レビュー

3.7

32件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    15

  3. 3つ

    10

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2012/09/20

何とも言えぬ倦怠感が残る。暫くだらっとぼんやり、この怠さが好き。何処かへ行きたい、行けない、いや行かない男。吉田修一の暗は強いな。

Posted byブクログ

2012/08/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

男たちは身体に彫り物を刻んで、毎晩三村の家で酒盛りを繰り返していた。 やくざの伯父たちに囲まれて育った駿、夫に先立たれた母は、やがて父のような存在だった正吾と神戸に行ってしまった。 祖父が死に、伯父も、正吾も、やがて祖母も死に。 時代と共に廃れていくもの消えていくもの失うもの。 ただ、この町から三村の家から、出たかった。 何も変わらなかったのは、いつしか亡くなった人たちが集まるようになった離れだけで、やがて、それすらも燃えていく。 暗いのう。逃れたくても見えない糸に縛られているかのように、 かつて育った家からは出ることなんてできない。踏み出す勇気がなかっただけ、そういうのは、誰にでも言える。 まあ読みやすい)^o^(

Posted byブクログ

2012/04/11

田舎暮らし、愛情に飢えた寂しい暮らしを抜け出したくても抜け出せない、見えない何かにとらわれ続けたような、やくざの家に生まれ育った男の話。 すごく寂しい。読み終えて、空虚さがぽっかりと広がるような、そんな寂しい小説。 決して好きなタイプの話でもないし、見事な名作というわけでもない...

田舎暮らし、愛情に飢えた寂しい暮らしを抜け出したくても抜け出せない、見えない何かにとらわれ続けたような、やくざの家に生まれ育った男の話。 すごく寂しい。読み終えて、空虚さがぽっかりと広がるような、そんな寂しい小説。 決して好きなタイプの話でもないし、見事な名作というわけでもないが、読み終えて引きずられるようなこの余韻はなんだろう。 なんといっても、著者の淡々としているのにそこはかとなく哀切が漂う文章と、あえて「描かない」語りの見事さ、まったく預かり知らない境遇の人間たちのストーリーであるのに、主人公に同化させられたように自分の胸に広がるやるせなさは、著者のうまさと言う以外ないのだろうな。

Posted byブクログ

2012/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

狙っているのか、たまたまなのか、ストーリー全体を通じて神話的な構造が見えるのが不思議。吉田修一版「百年の孤独」と言えるのではないだろうか。 主人公の生まれ育つ家族は言うなればヤクザの一家で、表面的にはいかにも男性上位な家庭である。 しかしながら、「家」という女性的な構造は男性を包み込み、呑み込んでいく。表面的な男性上位はそのなかでの甘えであり、戯れでしかない。それは男性を引きこもらせ、色におぼれさせ、果ては自殺さえさせてしまう「離れ」という存在に具現化している。 この家から出た男が出世する一方、この家を離れない者は哀れな末路をたどる。 こういった状況に対して批判的に見える主人公も、東京に出ようという彼女との約束よりも母親を戻すことを優先することで、輝かしい将来を捨て、「家」という女性的な構造の中に引きこもっていくのだ。

Posted byブクログ

2011/10/26

不在の人物(幽霊になって登場したりもしますが)が強い小説。地方を舞台にした、力のある作品。吉田修一は、読むたびに毎回うならされる作家だ。

Posted byブクログ

2011/06/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この数週間は吉田修一に時間を費やしています。 僕はワインに関しては、若い時に友人の勧めで、”酒神の会”なるものに入らせて頂き、白ワインを少しだけ勉強しました、その程度の経験しかありません。 しかし、もし吉田ワールドをワインに例える事が許されるならば・・・・・、それは豊潤な香りの中に様々な味わいがありますが、油断をして飲み込んでしまうと、「えっ!一体今のは何だったんだ?」そのように感じてしまう、それが吉田ワールドのような気がしてなりません。 さまざまな食・ワインとの”出会い””経験”の中に、ワインの持つ素晴らしさを発見できる楽しさがあるとすれば、吉田ワールドは、さまざまな人生経験と角度を変えた感受性を持ってして、初めて吉田文学のコク・味わいが分かりあえる、そのようにも感じました。 今回読ませて頂いた本は”長崎乱楽坂”・・・ながさきらんらくざか・・・と読みます。 物語は、戦後の”古いやくざ”組織を尻目に跋扈した愚連隊が旧来の広域組織に呑み込まれ、そして近代やくざに変貌する中、時代に乗り切れる者と乗り切れなかった者の真っただ中に生まれ育だった”駿”の振り子のような心を描いています。 それは、「人間は裸になれば、みな業と情けしかない。」と豪語する井口への憧れ、片や、自分自身の人生の定めに対して内面的にしか反駁出来ず、命を自ら断ってしまった優しい心を持った叔父、哲也への憧れであります。 そして、駿が大人になるまでの様々な出会いの中に、矢張り、井口や正吾の様な荒くれ者と、気の優しい哲也の背中を見てしまい、その時その場所での駿の揺れ動く心を、8つの時の流れと共に描いています。 ある日、駿は全ての思いを断ち切り東京へ旅立ちの決心をしますが・・・、結局は出来なかったのです。 かつて駿が家を出て東京に逃げようと思っていた頃、職場の先輩はこんな言葉をつぶやきます。 「出て行くのにも勇気がいるけど、黙って残るのにも勇気がいってな。 若かったころには、どんなことでも自分で決めんと、何かに負けたように思うけど、実際には、自分だけで決められることなんてなーんもなかったって話さ。」 そして駿は大人になってからこんなことを言います。「なんもせんで生きとるのも、なかなか難しかとぞ」と。 またこのような言葉があります。映画のスクリーンに映るのは、確かに自分たちが見知っている長崎の町なのに、そこに本物の長崎の人間を見出せたことがない、それは撮影風景の中で張り巡らされたロープの外に立たされているような感じだ。「長崎の人間は義理人情にあつかとよ。」僕にはそのように聞こえました。 吉田ワールドにはこの様に人生についての様々な見方が多々あります。例えば悪人では 「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人間がおらん人間は、なんでもできると思い込む。自分には失うものがなかっち、それで自分がつようなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした眼で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ。」と言います。 長崎乱楽坂、物語の最後には、自分たちを縛り続けた”家”全てが燃え上がる炎の中、全て灰となってしまいます。その時、駿たちは全員で聞くのです、逝ってしまった者たちの笑い声を。「わいたちはもうよか、自由にやれ!おいたちも、もう自由ばい・・・。」

Posted byブクログ

2011/06/16

・いいじゃんこれ。パーク・ライフにあった無駄な小道具やら思わせぶりな描写が一切なくなってる。かつ、flowersにあった感情移入し辛さも無くていい感じにバランス取れてる。余韻も悪くない。無駄にオシャレな東京描かないで九州の事書いてるといいんだね。同じ作家とは思えなかった。 ・近く...

・いいじゃんこれ。パーク・ライフにあった無駄な小道具やら思わせぶりな描写が一切なくなってる。かつ、flowersにあった感情移入し辛さも無くていい感じにバランス取れてる。余韻も悪くない。無駄にオシャレな東京描かないで九州の事書いてるといいんだね。同じ作家とは思えなかった。 ・近くの市民センターの図書室で借りた。この人「悪人」の原作者なんだな。映画はクソだったけどなあ〜、読んでみるか。

Posted byブクログ

2011/05/22

初期の著者の作品には、本作のような長崎の下町に住む少年を描いた作品が幾つかありますが、私はあまり好きではありません。一方でパーク・ライフなどの静謐な雰囲気漂う作品を書きながら、このような作品群が存在するからには、何か著者なりの思い入れがあるのでしょう。

Posted byブクログ

2010/07/29

父が事故死し、母の実家にいる駿は幼いときから「三村の家の子」と呼ばれていました。母の兄、つまり伯父はヤクザであり、家には年老いた爺さん婆さんや伯母のほか、伯父が拾ってきた女や体に彫り物がある若い衆たちが一緒に暮らしていました。男たちを嫌い、いつかはこの家を長崎を出たいと願う駿の成...

父が事故死し、母の実家にいる駿は幼いときから「三村の家の子」と呼ばれていました。母の兄、つまり伯父はヤクザであり、家には年老いた爺さん婆さんや伯母のほか、伯父が拾ってきた女や体に彫り物がある若い衆たちが一緒に暮らしていました。男たちを嫌い、いつかはこの家を長崎を出たいと願う駿の成長とともに、羽振りのよかった三村の家は傾いていきます。  吉田修一の作品は作品ごとにそれぞれが違うインパクトを持っているので、今度はどんな話だろうという期待が他の作家より強いです。泥臭く、汗や埃の匂いがむんむん感じられるこの作品はクールな他の作品群と較べると異質のように思えたのですが、家の呪縛にとらわれた男の行く末が気になって、読んでいくうちに引きこまれていました。吉田ワールドは奥深いなぁ。

Posted byブクログ

2010/04/27

吉田修一好きだけどこれは…男の世界なのか。全然違うんだけど筒井さんの男達が描いた絵を思い出した。 ただやくざってだけか

Posted byブクログ