寂兮寥兮 の商品レビュー
あの頃(1980年代)の雰囲気が漂う小説ですね、女性たちが「妻」であることに憤懣や、やるせなさを思いながら、思い切っての飛翔は怖いとグラグラふにゃふにゃしている。つまり「妻たちの思秋期」や「翔ぶのが怖い」という言葉が流行りましたね。 そのことを上品に(おぼろげに)かつ果敢に表し...
あの頃(1980年代)の雰囲気が漂う小説ですね、女性たちが「妻」であることに憤懣や、やるせなさを思いながら、思い切っての飛翔は怖いとグラグラふにゃふにゃしている。つまり「妻たちの思秋期」や「翔ぶのが怖い」という言葉が流行りましたね。 そのことを上品に(おぼろげに)かつ果敢に表したファンタジー小説かと。神話の天智天皇、天武天、皇額田女王の世界に題材をとりながら、隣家の男兄弟と兄を失い家付き娘となって婿を迎えた女性とのご近所での恋愛模様。それは神話の世界にもあるし、『嵐が丘』にもあるし、古典的なみやびの世界でもあるので「谷崎潤一郎賞」というのもむべなるかな。
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老荘思想や神話の世界観などが引き合いに出されるが、あまりそういうものにとらわれないで読んだほうがいいかもしれない。隣同士の家に住む幼なじみの男女が互いの連れ合いを交通事故でなくすのだが、実は死んだ者たちが不倫関係にあったことがわかり、当の彼らもその関係を反復するように性愛の仲にな...
老荘思想や神話の世界観などが引き合いに出されるが、あまりそういうものにとらわれないで読んだほうがいいかもしれない。隣同士の家に住む幼なじみの男女が互いの連れ合いを交通事故でなくすのだが、実は死んだ者たちが不倫関係にあったことがわかり、当の彼らもその関係を反復するように性愛の仲になってゆく。筋は単線的ではなく、喚起力の強いイメージや言葉とともに複雑に絡み合っていて、途中で挿入される入れ子の小説が全体に深い暗示を与えている。とにかく主人公の女の徹底的に冷めた感じがうっとりするほどすばらしく、女性という性の最も深いところの孤独と意地悪さを体現していると思う。
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女ってぐにゃぐにゃしたものだな、と思った。 大体、そういう話を読むと、自己嫌悪に落ち入るのだけれど、この本はそうじゃなかった。 説教くさくもなく、罪悪感をあおることもなく、女のぐにゃぐにゃさを描いていると思った。
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大庭みな子『寂兮寥兮』を読む。 はじまりも終わりもなく、登場人物たちの顔もないように感じられる小説。 書かれていることが結婚式なのかお葬式なのかもわからなかったりする。 夢で猫になったりもする。 面白いところはあったから、もう一冊くらい読んでみたい。
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難しい。人間関係とかストーリは分かりやすいんだけど、難解。登場人物の名前から臭すぎる。結局娘の名前はなんて読むんだ。フロイトとか漢詩とか日本史とか天皇とか日本神話とか厄介な伏線がいっぱ張られていてお腹いっぱい。研究のしがいがあるわー。一回読んだだけでは理解出来ないと云うか前半です...
難しい。人間関係とかストーリは分かりやすいんだけど、難解。登場人物の名前から臭すぎる。結局娘の名前はなんて読むんだ。フロイトとか漢詩とか日本史とか天皇とか日本神話とか厄介な伏線がいっぱ張られていてお腹いっぱい。研究のしがいがあるわー。一回読んだだけでは理解出来ないと云うか前半ですでに私の頭のキャパを超えたので、読み直さなくちゃ。初めて読んだみな子作品だったけど、結構好きでした。(難しいけど)谷崎に似た雰囲気を持っていて素敵でした。途中「これって谷崎の『少年』のパロディなのかな」と思う所があって気になりました。みな子は予想外に深すぎる作家でした。ほかの単行本も欲しいけど、本やさんになかなか置いてなくていらっとする。
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夢を見ているような気分になるくらい,すーっと入っていく感じ。まさに本全部が「寂兮寥兮」で,寂寥感とか靄がかかっているような匂いがあると思いました。素敵な一冊です。
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