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カフェー考現学 の商品レビュー

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2020/11/06

『カフエー考現学』(1931年、日日書房)と『歓楽の王宮カフヱー』(1929年、文化生活研究会)のほか、雑誌『中央公論』に発表された論考「大阪カフエー弾圧史」が収録されています。 本巻に収録されている著作で著者は、大正から昭和初期にかけて華やかな都市を彩った都市文化の実態をジャ...

『カフエー考現学』(1931年、日日書房)と『歓楽の王宮カフヱー』(1929年、文化生活研究会)のほか、雑誌『中央公論』に発表された論考「大阪カフエー弾圧史」が収録されています。 本巻に収録されている著作で著者は、大正から昭和初期にかけて華やかな都市を彩った都市文化の実態をジャーナリストの視点でえがき出しています。とくに著者は、「カフェー」と呼ばれる接待をともなう飲食店と、そこに務める「女給」たちの置かれている境遇に目を向けています。 著者の取材対象となっているのは、主に大阪の道頓堀や千日前などミナミの繁華街です。著者は、関西学院大学で犯罪学とジャーナリズムの授業を担当していたこともあり、その演習としてこれらの繁華街で「考現学」的な手法にもとづくフィールド・ワークをおこなった成果も示されていて、当時の状況を知るよすべになります。また、1927年のダンスホールに対する規制強化や、1929年のカフェーの経営に対する大阪商工会議所の建議書の提出と、それにつづく規制強化についての報告も含まれています。 著者は、ジャズやダンス・ホール、カフェーといった新しい都市風俗の隆盛を、近代化の進展によって人びとが従来以上に強い刺激を求めるようになったことによるとしています。そのうえで著者は、こうした都市文化の「闇」として、女給たちの陥っている苦境に目を向け、彼女たちの苦しみを生んだ同時代の社会問題に対して鋭い批判を展開しています。こうした点で、著者自身の問題意識が濃厚に反映されてはいますが、それも含めて当時の都市文化について知ることができる内容になっています。

Posted byブクログ