ハイデガーとハバーマスと携帯電話 の商品レビュー
2004年出版。10年経った今、ハバーマスが言う所の "メッセージ"が溢れすぎた社会になったとは思う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルの奇抜さに驚いて読みました。ハイデガーと携帯電話がどう結びつくのか?ハイデガーがコミュニケーション論への影響があったというのは気がつかなかったことですが、「存在が現前するのは、存在が人間に近づき、人間に触れることによる」という言葉は確かに携帯と哲学的に結びつくのでしょうか?それにしても携帯がコミュニケーションの手段としてよりも、メール送信そのものということをとおして結びつきを感じさせる道具になっているというのは、つまり『伝える情報内容がほとんどどうでもよく、互いに接続し合っていくということが確認、享受されている』という一節は全くその通りです。なお、
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ケータイから、コミュニケーションをどう考えればいいのだろうか ケータイ的コミュニケーションが希求するのは、他者の極限の近接性である。これは無論、原理上ありえない近接性だ。なぜなら、他者の意図が宿る内面を直接覗き込むことは誰もできないからだ。にもかかわらず、携帯電話は、決して踏破...
ケータイから、コミュニケーションをどう考えればいいのだろうか ケータイ的コミュニケーションが希求するのは、他者の極限の近接性である。これは無論、原理上ありえない近接性だ。なぜなら、他者の意図が宿る内面を直接覗き込むことは誰もできないからだ。にもかかわらず、携帯電話は、決して踏破できないはずの距離を無化する魔術的装置をして迎えられているのだ。(p118) ケータイを用いる若者たちは、他者の接触的な近さを常に感じていたいという傾向が強い。ケータイでつながる極限の近さは、テーブルの幅よりもさらに近いのではないか?
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電話とはモノであり、技術である。しかし同時にそれは思想体系の一部でもあり、さらには日常生活についての見方ですらある。 ハバーマスから見ると、コミュニケーションをとるのは欲望を満たすためではなく、ここが極めて重要なのだが、欲望や目的を知らせるためである。 同じように、応答する反論は...
電話とはモノであり、技術である。しかし同時にそれは思想体系の一部でもあり、さらには日常生活についての見方ですらある。 ハバーマスから見ると、コミュニケーションをとるのは欲望を満たすためではなく、ここが極めて重要なのだが、欲望や目的を知らせるためである。 同じように、応答する反論はどれも、もとの論が何についてのものかという、一緒にいる存在にすでに共有されている理解に、もっとも近いところから直接に起こる。 古い哲学から見ると、同じ未来が違って見える。まずハバーマスには、新しい社会にはコミュニケーションにおける変化が伴う、という考えがある。 ケータイはそこらへんにあるものをみんなシステムに変え、理解に達する過程を追い払い、意味のかわりにメッセージ、合意のかわりに指示、洞察のかわりに情報をもってくる至高の媒体となることだろう。
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よく理解できたと言う自信がないけど・・・ ハイデガー『存在と時間』およびハーバーマス『公共性の構造転換』と、携帯電話の広告とを比較していく本。 ハイデガーやハーバーマスからしてみれば、コミュニケーションとは、相手のことを理解する行為。 たとえばハーバーマスの理想化したコミュニ...
よく理解できたと言う自信がないけど・・・ ハイデガー『存在と時間』およびハーバーマス『公共性の構造転換』と、携帯電話の広告とを比較していく本。 ハイデガーやハーバーマスからしてみれば、コミュニケーションとは、相手のことを理解する行為。 たとえばハーバーマスの理想化したコミュニケーションは、19世紀のカフェやサロンに集まった意識高い人たちの討論を指す(多分)。報道して稼ごうといった目的があるわけでもなし、利害関係のない中で、有識者たちが自由に論議して、そのなかで相手の考えだとか立場だとか理解していく。 アテネのスコレーを思わせる、とっても暇で悠長な人々だ。 一方、携帯電話のコミュニケーションは、単に情報を手に入れる手段に過ぎない場合がある。そうなると、情報だけが重要視されて、情報発信した人が無視される。フィンランドの携帯電話会社ノキアの広告からも、凄まじいスピード感を持つコミュニケーションの有りようが伝わってくる。 近代と現代とでは、コミュニケーションの速度が随分違う。そうすると、コミュニケーションの意味や価値も随分変化してくる。 内容は以上だが、最後の大澤真幸の解説も欠かせない。 携帯電話のコミュニケーションは、確かに情報の収集という側面もあるけれど、それだけでなく、一時も他の人から離れたくないという、他者を思う気持ちも働いているだろう、と言われている。 本書の理解を深めるための参考文献まで書かれていて、親切だと思った。
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