「おろかもの」の正義論 の商品レビュー
「死」はどのように決…
「死」はどのように決められるか,科学は正義を決められるか,選択の自由があることはいいことか,民主主義は「正しさ」を実現できるか,などふと頭に浮かぶ疑問を時には正論から,時には変わった切り口から論じる.なかなか考えさせられる内容.
文庫OFF
少し前に読んだ『さもしい人間』に比べると、具体的な諸課題に即した現実的な正しさを論考している処は評価できる。ただ、それでもなお「正しさ」を研究する意味が最後まで理解できなかった。 死刑制度や脳死、交通事故など賛否の分かれる社会問題に対し、こういう見方もある、いやそうでなくて別の見...
少し前に読んだ『さもしい人間』に比べると、具体的な諸課題に即した現実的な正しさを論考している処は評価できる。ただ、それでもなお「正しさ」を研究する意味が最後まで理解できなかった。 死刑制度や脳死、交通事故など賛否の分かれる社会問題に対し、こういう見方もある、いやそうでなくて別の見方もある、と複数の視点を提供しているのだが、その先に何があるというのだろう?ある人は「死刑は誤審のリスクがゼロにできないから反対」と考えるだろうし、別の人は「遺族感情を考慮すればそれもやむを得ない」と考えるだろうし、どちらが「正しい」と決めることは絶対にできない。考えても仕方のない事は考えないというのは大人の知恵であると、著者自身も述べている。 著者の狙いは、より自由に考えられる手助けをすることにあると言っていて、「正しさ」の研究意義は個人の思想形成の補助にあると読める。個人が先入観を排して自由に意見を持つ事は重要なことではあるが、一体「私はこれが正しいと思います」と考えることが社会の何の役に立つのか。為政者や扇動者に騙されないリテラシーを身に着けられるという事か? それはさておき、死刑制度にしろ脳死判定にしろ交通事故にしろ、本書で挙げられている正しさの基準は単にリスクとベネフィットがバランスする線をどこに引くかに過ぎないのではないか?その判断は十人十色なのだが、それがそれほど根源的な問題たりうるのだろうか? 理科バカにはさっぱり訳がわからない。
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なぜ人を殺してはいけないのか?ということについて考える。 法律で決めることは、別の次元で正しい⇒正義という考えがある。人間の尊厳を公理に出来るか? 個人個人の価値観、教え、「自由」という概念は一貫性は無い。 また、死を決める規範について、脳死から考える。臓器移植においては、依頼者...
なぜ人を殺してはいけないのか?ということについて考える。 法律で決めることは、別の次元で正しい⇒正義という考えがある。人間の尊厳を公理に出来るか? 個人個人の価値観、教え、「自由」という概念は一貫性は無い。 また、死を決める規範について、脳死から考える。臓器移植においては、依頼者の視点から見ている事になる。 暴力を楽しむ社会、死刑、犯罪者を殺したい心理、「正義」の名のもとの殺人、これら感情論を超えて、 人は人を殺すことによって、大切な何かを失うと感じるから 事実とは(自然科学では)他の場所でも起こっている シェイヨルという星 (他者の苦痛とは
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【「正義」は勝ちも負けもしない】p15 「正義は勝つ」「悪を滅ぼして正義を示す」よく見かける言い方だ。だが、もし正義がそういうものでしかないとしたら、正義は悪に依存することになる。▲メモ「勝てば官軍負ければ賊軍」 こういう正義感を私は「暗黒的正義観」と呼んでいる。 「盲亀浮木」:広い広い海の中に一匹の目の見えない亀が住んでいる。その亀が住むその広い海には、一本の流木が浮かんでいる。その流木には小さな穴が一つ開いている。流木は広い海の中を波のまにまに漂い、揺れ動く。その穴はときに天を向き、ときに水に潜る。そして、その亀は100年に一度、海面に浮かび上がってくる。その亀が海面に顔を出した時、ちょうどその木の穴の中に顔を出すことがあるだろうか。 そんな偶然はほとんどありえない。だが、われわれはそれ以上に「あり難い」幸運にめぐり会っているのだ、と釈迦は説く。 欲求は個人的なものだが、「価値」は社会的なものだ。p38 【生命の「絶対的な」価値―メタ価値としての「正しさ」】p45-7 生命はほかのあらゆる価値とは異なる特別な価値である。それは、生命が他の価値を享受する前提になっているからだ。 生命には最高ではないにしても「絶対的な」価値がある。(基底的) 何が正しいのかについて絶対的な基準が存在しない社会においては、生命を最も尊重しなければならない。それは、生命より重要な価値が存在しないからではなく、生命より重要な価値を尊重するためには生命をも尊重しなければならないからだ。 事実は規範によって決定される。p76 民主主義は「質より量」の制度であり、これは本質的な欠陥である。民主主義は必然的に衆愚的傾向を内包しているのだ。p203 われわれの「正しさ」の感覚も道徳も、長い歴史の中で形づくられてきた。そして、人類の数百万年の歴史の中で、自分の想像も及ばない遠くにまで力を及ぼすことができるようになったのは、ごく最近のことにすぎない。p228 【滅亡の恐怖?】p231 人類という意識を創り出すための第一歩は、逆説的に聞こえるかもしれないが、その意識を拒否することから認めることかもしれない。p231
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「正さ」とはある一方を排除するものではなく、異なった価値観の間で調和を取ること。 それはもちろんどっちつかずの日和見でもなく、容易に結論の出る方法ではないけれども、まず思考することこそが大事なのだということを、具体的な例題をあげながら繰り返し書かれている。 作者の狙い通り、分かり...
「正さ」とはある一方を排除するものではなく、異なった価値観の間で調和を取ること。 それはもちろんどっちつかずの日和見でもなく、容易に結論の出る方法ではないけれども、まず思考することこそが大事なのだということを、具体的な例題をあげながら繰り返し書かれている。 作者の狙い通り、分かりやすくとてもおもしろかった。
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本書のきっかけともなった「子供を作るという選択への課税」、「逆しまの箱船」という考えは一考の価値がある。
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正しさ、正しいとはなにか。それは規範レベルと事実レベルの混同から議論の質の低下がはじまるということがよくわかる。
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なぜ人を殺してはいけないか、脳死は死なのか、死刑問題、民主主義は正しいか.等々興味深い論考がわかりやすい比喩と共に平易かつ論理的に書かれている. 著者が後書きにも書いているが面白いからこそわかりやすいし、飽きずに読めた.哲学者の固有名詞が出てこないのも非常に高ポイントです.
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正しさとは、人の上にもなく、心の中にもなく、人と人の間にある。 神の存在が証明できないなら、神を仮定すればよい。 事実は規範によて決定される。 国家が人間の道具にすぎないなら、愛国心は好みのひとつにすぎないのだろうか?
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他者への配慮を伴う正しさを行動ルールとする。思いやりが生き延びるチャンスを増やす。 正しくなければ、生きていけない。 コンパッションが世界を救う。
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