魔女の法廷 の商品レビュー
魔女狩りといえば『魔女への鉄槌』、それを書いたのはシュプレンガ―とインスティトーリス……までは良いとして、『魔女への鉄槌』を筆頭とする悪魔学の受容・実践等に焦点を当てている。 日本語で書かれたもので類書はあるのだろうか。寡聞にして知らないものの、非常に読みやすい印象を受けた。
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ルネサンス期において魔女は間違いなく存在した。しかし、物語にでてくる魔術、奇跡のような技を自在に操る魔法使いといった一般にイメージされるような生易しいものではない。現代においては、あくまでも括弧付の存在として容認されていることは自明のことである。とはいえ、当時においては、人々の...
ルネサンス期において魔女は間違いなく存在した。しかし、物語にでてくる魔術、奇跡のような技を自在に操る魔法使いといった一般にイメージされるような生易しいものではない。現代においては、あくまでも括弧付の存在として容認されていることは自明のことである。とはいえ、当時においては、人々の頭の中には魔女の、あるいは悪魔の存在が容認されていた。法律にその存在が記述されることによって、世間の中で実体性をもつものにもなった。 ちょうど「セクハラ」という概念が「セクハラは罪である」と法的に根拠付けられることによって人々に認識されることになるように。 歴史家のミシュレがその著書『魔女』の中でこう綴っている。 魔女はどこから始まったのか。私は躊躇することなく言おう、「絶望の時代からだ」と。教会世界が生んだ、深き絶望からだと。私は躊躇することなく言おう、「魔女は教会の犯した犯罪である」と。 教会制度にみられる社会的制度による抑圧の結果として、人間の生態としての、身体的、精神的歪みがある種の幻惑を、悲劇を生み、物語となっていったこと、それが広く世間に知られ、事実をして受け入れられたことは、印刷術の発達と無縁ではなかったであろう。グーテンベルグの印刷術が1455年頃、ちょうど、魔女が裁判のコンテクストに埋めこめられるようになった15世紀と一致するのである。
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