おーいでてこーい の商品レビュー
著者のショートショー…
著者のショートショートは本当にどれも不思議で面白いです。本書は、その膨大な作品数の中からの傑作選なので、さらに秀作揃いです。読んで損なしです。
文庫OFF
行間を読む 文,特に小説類を読むときは,「行間を読む」ことが大切だ,とよく言われています。 以前は,何のことかよく分かりませんでした。きちんと説明してもらえなかったのではないかと思います。 しかし,教える立場に立つようになって,分かってきました。 ぼくもこれまでの...
行間を読む 文,特に小説類を読むときは,「行間を読む」ことが大切だ,とよく言われています。 以前は,何のことかよく分かりませんでした。きちんと説明してもらえなかったのではないかと思います。 しかし,教える立場に立つようになって,分かってきました。 ぼくもこれまでの読書経験によって,自然に行間を読むことができるようになっていたのです。 子どもたちに読書をさせると,行間を読んでいないことが分かるのです。ぼくが読むとっていることを子どもたちは読み切れていない。 子どもたちも大好きな星新一の「ボッコちゃん」を紹介しましょう。これはいいですよ。つぎはぎです。(中略)を入れると読みにくいと思うので,入れません。またつなぎのために少々変更も加えています。 「おーい でてこーい」におさめられています。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ そのロボットは,うまくできていた。女のロボットだった。完全な美人ができあがった。しかし,頭はからっぽに近かった。 マスターは,それができあがるとバーにおいた。 美人で若くて,つんとしていて,答えがそっけない。お客は聞き伝えでこの店に集まった。ボッコちゃんを相手に話をし,酒を飲み,ボッコちゃんにも飲ませた。マスターは時どきしゃがんで,足の方のプラスチック管から酒を回収し,お客に飲ませた。 お客のなかに,ひとりの青年がいた。ボッコちゃんに熱をあげ,通いつめた。そのため,勘定がたまって家の金を持ち出そうとして,父親にこっぴどく怒られてしまったのだ。 「もう二度と行くな。この金で払ってこい」 彼は支払いに来た。 「きみぐらい冷たい人はいないね」 「あたしぐらい冷たい人はいないの」 「殺してやろうか。」 「殺してちょうだい。」 彼はポケットから薬の包みを出して,グラスに入れ,ボッコちゃんの前に押しやった。 ボッコちゃんは飲んだ。 マスターは青年がドアから出ると,残ったお客に声をかけた。 「これから,わたしがおごりますから,みなさん大いに飲んで下さい」 おごりますといっても,プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が,もう来そうもないからだった。 お客も店の子も,乾杯しあった。マスターもカウンターのなかで,グラスを上げてほした。 その夜,バーは遅くまで灯りがついていた。しかし,だれひとりも帰りもしないのに,人声だけは絶えていた。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 3色ボールペン式で読ませます。 ぼくは, 「彼はポケットから薬の包みを出して,グラスに入れ,ボッコちゃんの前に押しやった。」 と 「おごりますといっても,プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が,もう来そうもないからだった。」 に赤線を引いていないと,×にします。 すると,×になった生徒は,間違い直しにやってきます。ぼくは訪ねます。 「登場人物は,ボッコちゃん,青年,マスター,お客だね」 「うん」 「では,最後にお客やマスターはどうなったの?」 100%の子が「んんんん?」ですね。 「店に泊まって寝ている」 「タクシーで帰っていった」 「お店で飲んでいる」 などなど,適当な答え。 ボッコちゃんが飲んだお酒はどうなるの? 青年は何をした? そして,マスターはどうした? などと質問して,答えさせるうちに, 「あっ,死んだんだ」と気付くのです。目を大きくして,驚きを表す子が多いです。 「死んだ」ということは,書いてありません。しかし,それは読みとることができるはずです。材料はすべてそろえて示してある。あとはちょっとした想像で考えてください。すると,お客は死んでなければいけないではないですか。 ということです。 つまり「行間を読む」とは,書いてあることから,書いてないことを推し量ることです。 でも,それは読者の勝手に読んでいいものではありません。作者は読者がこのように読むことを期待して書いているのです。そして,それが読みとれない場合は,筆者の書き方が悪いか,読者の読み方が悪いかです。 小説文の場合は,書いてないことを推し量らせようとします。だから有る意味で分かりにくいです。そこを書いてしまってはおもしろくない。小説の場合には,この「おもしろさ」というのが大切なのです。 しかし,説明文,(論文など)は,おもしろさよりも,書き手のいいたいことが読み手に伝わるかどうかが大切。だから,重要なことは繰り返し繰り返しでてきます。おもしろくなくていいから,分かってくれよ,というところでしょうね。
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