ローマ人の物語(13) の商品レビュー
ローマが「ローマ」でなくなっていく… という帯の文章がぴったりな内容だった。 元老院の地位はいよいよ落ちぶれ、税制は変わり果て、首都も変わり、キリスト教が台頭しはじめる。 コンスタンティヌスによる帝国の延命は、暗黒の中世を呼び込む。
Posted by
研究者によっては、この本で描かれた時代でローマ帝国は終焉を迎えたという人もいるそうな。「ローマが『ローマ』でなくなっていく―」と、帯にも書かれているな。国家の最大の責務とは、防衛だ。その防衛が守れなくなってきて、ローマ帝国は危機を迎える。帝国再建のため、ディオクレティアヌスは二頭...
研究者によっては、この本で描かれた時代でローマ帝国は終焉を迎えたという人もいるそうな。「ローマが『ローマ』でなくなっていく―」と、帯にも書かれているな。国家の最大の責務とは、防衛だ。その防衛が守れなくなってきて、ローマ帝国は危機を迎える。帝国再建のため、ディオクレティアヌスは二頭政、四頭政と帝国を分割して統治することで、なんとか再建しようとする。一時は果たせたものの、その過程でローマはどんどん変質していくんだね。 「いかに悪い結果につながったとされる事例でも、それがはじめられた当時にまで遡れば、善き意志から発していたのであった。」というユリウス・カエサルの言葉がエピグラフとして巻頭を飾っている。本書を読み進むにつれて、この言葉の含蓄が増していくような気がしたなぁ。 さらにいえば、どれだけ小なりといっても、組織、チームに責任のある立場としては、問題に対する解決は、あとでどんな結果につながるかは覚悟しておけ、ということを考えさせられる。先の先なんて、そうそう読めないんだけどさ。 ディオクレティアヌスの後、コンスタンティヌスによってローマはキリスト教の帝国へと変質していく。コンスタンティヌスがなぜそれほどまでにキリスト教に肩入れしたか。その解説は、圧巻ともいえる説得力があったよね。そういう話だったのか。 もちろん、信仰があったのかもしれないけど、政治家として考えるなら、それだけで行動するとは考えづらい。ローマは元来、世襲ということに身構える民族性をもっていた。そのため、帝国とはいえ、皇帝は必ずしも世襲ではなく、市民によって選出されたという体裁をとる。コンスタンティヌスより前、ディオクレティアヌス以前にさかのぼれば、皇帝といわれたといってもどちらかといえば、元首であった。しかし、元首は市民からの不信が強くなると、市民によってすげかえられてしまう。古代のこと、それは殺害という形をとることが圧倒的に多かったのだ。それがローマ帝国末期の衰退の原因でもあった。 であれば、簡単に首をすげかえられなくすればいい。つまり皇帝は市民によって権威づけられるのではなく、もっと上の存在、つまり一神教の神をその力の源泉とすればよいのである、と。 俺自身、ボーン・クリスチャンで子ども頃からキリスト教に接しているけどさぁ。宗教に対して、これまでそういう見方をしたことはなかったなぁ。 知的に興奮したね。
Posted by
ローマ人のことを素晴らしいと思っていたのだけど、この巻だと、その素晴らしい点がなくなっていくようで残念。
Posted by
2021/11/4 統治を委託された存在としての元首政から絶対的な君主政へとローマを変えたディオクレティアヌス。権力を一手に集めて軍を2倍にすることで蛮族の侵入を阻止し、絶対的な存在として人々から隔絶することで身の安全を確保した。軍の主力をリメスから機動隊に移し常に皇帝が率いるよ...
2021/11/4 統治を委託された存在としての元首政から絶対的な君主政へとローマを変えたディオクレティアヌス。権力を一手に集めて軍を2倍にすることで蛮族の侵入を阻止し、絶対的な存在として人々から隔絶することで身の安全を確保した。軍の主力をリメスから機動隊に移し常に皇帝が率いるようにするとともに、皇宮官僚を整備し地方から徴税権を奪い権力を一手に集めた。軍隊と官僚によって税金は高くなった。また4頭制テトラルキアによって首都ローマに本拠をおかないことでローマと元老院は形骸化し、世襲制によって階層の固定化もすすんだ。ディオクレティアヌス時代にはキリスト教は一定の勢力を持っており、本格的な弾圧を行った。 4頭制の一翼でしかなかったコンスタンティヌスは、巧妙にミラノ勅令によって信仰の自由を盾にキリスト教を公認し、ライバルとの戦争に勝って唯一人の皇帝となった。その後は、コンスタンティノープルを建設し、キリスト教会に皇帝資産を寄贈したり、聖職者の公務免除を行うことでその勢力拡大を後押しした。さらにニケーア公会議を開き、キリスト教の正統を三位一体のアタナシウス派と決めている。筆者は絶対君主政の根拠となる存在として、キリスト教に目をつけ、司教を買収することで神の意志である絶対性を確保しようとしたと考えている。
Posted by
専制君主となったディオクレティアヌスとキリスト教を公認したコンスタンティヌスのお話。このところしょうもない理由で皇帝が殺され続けたので、ハクを付けようと色々努力した…のはいいけれど、元々のローマとはすっかり変わってしまいましたとさ。コンスタンティヌスは遷都までするしな。
Posted by
ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。滅亡への下り坂を一気に転げ落ちてゆくローマ。これを何とかして食い止めようとするヒーロー。だが、この時期のローマは、カエサルをもってしても時期すでに遅し。
Posted by
いよいよローマ帝国も最終章に入ってきた。 ローマ史の研究者の中でもコンスタンティヌスの時代になって、もはやローマではないと筆を置く人がいると筆者は述べている。 しかしながら、このシリーズは「ローマ人の物語」であって「ローマ帝国の物語」ではないと筆者の考えを構築しようとするのだが...
いよいよローマ帝国も最終章に入ってきた。 ローマ史の研究者の中でもコンスタンティヌスの時代になって、もはやローマではないと筆を置く人がいると筆者は述べている。 しかしながら、このシリーズは「ローマ人の物語」であって「ローマ帝国の物語」ではないと筆者の考えを構築しようとするのだが、 やはり、こころ無しか筆者の文章にも以前のような力強さがなくなっている。 ローマ皇帝というと、素人の記憶では(学校で習った程度)やはり、ネロ、カエサル(シーザー:皇帝ではないが)、コンスタンティヌス、おまけでアウグストゥス(虫プロの映画から)が浮かぶ。 この中でコンスタンティヌスについては、ハリウッドの影響でローマ皇帝、ローマ帝国のシンボル的なものと捉えていたが「ローマ人の物語」を読んでまったく反対であることがわかった。
Posted by
ローマ帝国再建を目指した二人の皇帝ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスが主人公。前者は帝国を分担して守ることで蛮族の侵入から守ることを目指し、後者は新都の建設、そしてキリスト教の公認という方向転換で帝国の再建を目指した。確かに、これらのことによってローマ帝国の延命には成功した...
ローマ帝国再建を目指した二人の皇帝ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスが主人公。前者は帝国を分担して守ることで蛮族の侵入から守ることを目指し、後者は新都の建設、そしてキリスト教の公認という方向転換で帝国の再建を目指した。確かに、これらのことによってローマ帝国の延命には成功したと言えよう。しかし、その代償にローマ帝国はかつての姿とは別物になってしまう。軍や官僚の肥大が増税に繋がり、一神教のキリスト教を公認することで、多神教の世界が失われ、そして寛容の精神も失われていくのであった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
4世紀に入り、ローマ帝国は専制君主の帝国へと変質していく。ローマは「共和制」の時代から「帝国」であったことを今更ながら気がついたように思います。小さい政府であったローマ帝国がディオレクティアヌスにより、軍政・税制改革、そして4皇帝による分割統治をどうして検討せざるを得なかったのか。彼の引退の引き際の素晴らしさに拍手するとともに、引退後の権力のなさ(妻と娘が皇帝により冷たくあしらわれ、惨めに殺されて行く・・・)に複雑な思いがします。そしてコンスタンティヌス大帝がどのようにして一人皇帝として権力を握るのか。そして大帝と呼ばれることになった理由として、キリスト教との関わりが言われるが、必ずしも彼はクリスチャンになったわけでもなく、洗礼も受けていない、にも関わらずなぜキリスト教を擁護する立場になったのかは興味深い話しであります。ディオクレティアヌス、コンスタンティヌスという有名な皇帝の努力を中心にローマが官僚体質になり、内外の動向から滅亡の必然性が迫ってきていることを説得力のある表現で力説しています。著者はいつも現代を意識しているように思います。
Posted by
著者のトーンは変わらず。しかし歴史が面白くなくなってきているので、全体としてつまらない。読むのをやめた。 ●面白かった点 なし ●気になった点 なし
Posted by