播磨灘物語 新装版(四) の商品レビュー
官兵衛という男。戦国時代には珍しい合理的な考えができた男。目薬売りから豪族化した彼の経歴によるものと考えられるが、それがもう一人の合理的な男織田信長に惹かれることになり、毛利ではなく織田を播磨へ導いたのであろう。
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禅であるかぎり、悟りをひらかねば田舎の一ヶ寺のあるじでさえなれない。恵瓊もまた恵心のもとできびしく修行してやがて印可を得た。悟道に達したということになるが、一般に悟りというのはあるいは得ることができても、それを維持することが困難なように思える。生涯、それを維持するために精神を充実させつづける必要があるが、ふつうは、俗世間のおもしろおかしさのために、ただの人間以下にもどってしまうことが多い。 もどったところで、禅僧としての地位の高さから世間はそうは見ず、また当人も自分自身を自分に対して弁護するために多くの禅語や禅宗独特の修辞を動員したりする。たとえば、自分は融通無碍の境地にあるのだと思い込むだけで、自分のたいていのことは、まず自分が許してしまうのである。 恵瓊には、多少そういうところがある。 臣ハソレ中才ノミ。 という意味のことをいった。 秀次はかさねてその意味を問うた。 如水は、自分がもし上才なら何も太閤に仕えておりませんでしょう、すでに天下をとっています。かといって下才でもなさそうであるこということは、このように、真似ごとながらも諸侯に列していることでもわかります。要するに中才でありましょうな、とひとごとのようにいった。 このことは、如水の本音だったらしい。 かれは年少のころから物事の姿や本質を認識することが好きであった。さらにはその物事の原因するところと、将来どうなるかを探求したり予想したりすることに無上のよろこびをもっていた。認識と探求と予想の敵は、我執である。如水がうまれつきそれに乏しかったことでかれは右の能力においてときに秀吉をあきれさせるほどの明敏さを発揮したが、同時に我執が乏しいために自分をせりあげることを怠った。中才である、と如水が、あたかも他人を観察するように言いつくしたのは、さまざまな意味をふくめていかにもこの男らしい。
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山崎以後は官兵衛は秀吉のもとにいなかったんですね。秀吉が天下を取った後、朝鮮へ行ったり豹変した原因の一つ? ずっと官兵衛が秀吉のもとにいたら、、、。ifを感じる物語でした。
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明智光秀を討伐するまでが第4巻のメインです。 討伐後から朝鮮出兵、関ヶ原の戦いもで黒田如水がどういった動きをしていたかも描かれていますがこれまでに比べれば完全におまけのような扱いです。 秀吉による天下統一後に官兵衛の重要度が下がり石田三成などの官僚的な大名が出世していくエピソードが最終盤に描かれるのですがそれを読んで本書を閉じるとなんとも言えない物悲しさが湧き上がりました。
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毛利攻めから、信長の死そして秀吉の「中国大返し」、さらに豊臣の天下統一へと続くこの巻。 秀吉を画布として自分の絵を描いてみようと思い、それを成し遂げた黒田官兵衛の一大叙事詩も、ここに終わる。 欲得とか栄達欲とかいうものを持ち合わさない、戦国期には稀有な存在でありながら、晩年、関ヶ...
毛利攻めから、信長の死そして秀吉の「中国大返し」、さらに豊臣の天下統一へと続くこの巻。 秀吉を画布として自分の絵を描いてみようと思い、それを成し遂げた黒田官兵衛の一大叙事詩も、ここに終わる。 欲得とか栄達欲とかいうものを持ち合わさない、戦国期には稀有な存在でありながら、晩年、関ヶ原の戦いに乗じて、天下を狙おうとする。その可能性が潰えたら、元の隠居に戻る、その滑稽ともいえるあざやかな進退。秀吉の天下を形作った張本人であるにもかかわらず、時代の点景でしかない官兵衛。 司馬は、あとがきで書いている。 「友人をもつなら、こういう男を持ちたい」 共感できる言葉だと思う。
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NHK大河ドラマになっているので読んでみた。全4巻の最終巻。本能寺の変、中国大返し、その後と激動の中で官兵衛が必死で守ろうとしたもの。そんなことに思いを馳せながら読了。歴史モノって面白いなぁと感じた。
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備中高松城攻めから隠居まで。 山崎合戦や関ヶ原合戦の描かれ方は淡白だが、それは官兵衛自身事前準備や段取りの役割を終えたという感情を反映しているのかもしれない。 信長死後の秀吉の変節は、単に下劣な本性が出たものと思う。日本では古来、大陸や朝鮮半島の文化を進歩したもの、鮮やかなものと...
備中高松城攻めから隠居まで。 山崎合戦や関ヶ原合戦の描かれ方は淡白だが、それは官兵衛自身事前準備や段取りの役割を終えたという感情を反映しているのかもしれない。 信長死後の秀吉の変節は、単に下劣な本性が出たものと思う。日本では古来、大陸や朝鮮半島の文化を進歩したもの、鮮やかなものとみなしていたが、朝鮮出兵以降それらを見下すようになってしまったのだ。大阪で太閤などと持て囃すのが理解できない。 石田三成も然り。先日、歴史討論番組で「三成が関ヶ原で勝っていれば、日本人は島国根性を持たずに済んだ筈 云々」を発言していた歴史家がいたが三成の度量では誰も着いてこないだろうと思う。
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以前読んだ記憶があったが、どうも勘違いだったようだ。中国大返し以降の叙述が簡素になっていくのが、大河ドラマとの違いかな。本作品とは関係ないが、徳川家康役の寺尾聰が腹黒そうで好き。ルビーの指環歌ってたんだよなぁ。
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前半に官兵衛の人となりを記述するのに筆を多く使ったためか、それとも秀吉の寵愛を受けている時がピークだからなのか、山崎の戦い以後がかなり短くまとめられている。 それ以後もドラマは多く、宇都宮氏との戦いや、関ヶ原前後の動きなど、書くべきところはかなりあるはず。司馬遼太郎の官兵衛像か...
前半に官兵衛の人となりを記述するのに筆を多く使ったためか、それとも秀吉の寵愛を受けている時がピークだからなのか、山崎の戦い以後がかなり短くまとめられている。 それ以後もドラマは多く、宇都宮氏との戦いや、関ヶ原前後の動きなど、書くべきところはかなりあるはず。司馬遼太郎の官兵衛像からはみ出る部分が多いからかとも思えるが、それも含めた人物の解釈をしてほしかったところ。 ただ、やはり司馬遼太郎が書く官兵衛は魅力的。
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中国大返しの後、秀吉が天下を取った後は、官兵衛の人生のピークを過ぎたのだろう、以後はごく短く書かれている。 官兵衛の交渉、秀吉との関係、等非常に面白かった。サラリーマンと代わりないんだなと。 作者が言う通り、とてもいい男でした。 読んだあと、小早川隆景が印象に残っている。 あの...
中国大返しの後、秀吉が天下を取った後は、官兵衛の人生のピークを過ぎたのだろう、以後はごく短く書かれている。 官兵衛の交渉、秀吉との関係、等非常に面白かった。サラリーマンと代わりないんだなと。 作者が言う通り、とてもいい男でした。 読んだあと、小早川隆景が印象に残っている。 あの戦国時代、中国を守るため、拡大方針はとらなかった。それを金科玉条とした。もし、昭和に彼が政治家としていたら?
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