万物理論 の商品レビュー
アイデアは興味深いと…
アイデアは興味深いとは思いますが、小説として面白くないのではだめです。各種のエピソードが錯綜していて非常に読みずらい作品でした。
文庫OFF
『我思う故に我あり』 『我思う故に他あり』 作品を端的にまとめるとこうなるんでしょうか? この感想を書いている今(2024年)から20年前の時代は、 デジタルやSFの特筆されるモデルとして攻殻機動隊の存在があり、 それが各方面に与えた影響はかなりあったのでは?と思います。 じ...
『我思う故に我あり』 『我思う故に他あり』 作品を端的にまとめるとこうなるんでしょうか? この感想を書いている今(2024年)から20年前の時代は、 デジタルやSFの特筆されるモデルとして攻殻機動隊の存在があり、 それが各方面に与えた影響はかなりあったのでは?と思います。 じぶんの勝手な思い込みですが、この作品からもその雰囲気が 感じ取れる様な気はしました。 主人公のアンドルー・ワースは人間でありながら、体内にコンピュータを 搭載して複数のアプリを起動させつつ、自己管理と周囲との接触に 関する事細かな便利機能を活かすことができる設定で、 動画編集を生業としている事を伝える描写からストーリーが始まります。 物語の半分くらいまでは、主人公が置かれている状況や 周囲の人間社会など世界観に対する説明がつづき、 物語の核になる概念『万物理論』を取り囲む存在が少しづつ 浮き彫りになっていく展開を見せます。 ステートレスの特殊環境下において、未知の理論、バイオテクノロジー、異なる思想、ウイルス、それに加えて、 今の時代では特に珍しいものでもなくなった『ジェンダー問題』に対して 先見性のある描写がなされます。 よく言えばバラエティ豊富、悪く言えば盛り込みすぎってほどの密度の濃さですね。 この作品がなにを伝えたいのか、いろいろ頭を悩ませて考えてみたんですが、 恐らくこれは、ストーリー最大の潮目になっているであろう、 人間宇宙論者コンロイとの接触シーンで語られる基石についての描写が 核心であり、物語ではほとんど全てが『目に見えないもの』を むりやり具現化しようと闇雲な論法で躍起になっているなか、 シンプルに『目に見える』ことこそ100%の証明であり、 世界は1人の目で観測されるからこそ存在を確認できる。 いわゆる、天動説よりも極端に『自分がいるからこそ世界は回ってる』 って、天上天下唯我独尊の様な発想の転換を見せつけてくれるわけですね。 つまるとこ、形のないものに意味を付与させようとしても無駄で、 それを追い求める役を背負わされた人間はピントがぼやけて、 絶対解けない炎上プロジェクトに関わってしまう事になるわけでしょう。 これだけ重厚な内容のものに、なかなか感想は書きにくいですが、 じぶんは端的にそういう印象を受けました。 難しく考えても答えなんてない、だったら100%証明可能な『自分の今』 雑なようでこれがいちばんの真理・万物理論なのかもしれませんよね。
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前半は未来世界のとんでもないことになってるバイオテクノロジーの数々が登場して、すごくSFっぽい。その一個一個がめちゃくちゃ興味深いので前半部分のネタだけで短編10本くらいは書けそう。(万物理論はいつ出てくるんだ…)と思いながら読んでいると後半やっと出てくる。タイトルは万物理論だけ...
前半は未来世界のとんでもないことになってるバイオテクノロジーの数々が登場して、すごくSFっぽい。その一個一個がめちゃくちゃ興味深いので前半部分のネタだけで短編10本くらいは書けそう。(万物理論はいつ出てくるんだ…)と思いながら読んでいると後半やっと出てくる。タイトルは万物理論だけど大事なのは理論の内容ではなく、その提唱者を殺そうとする団体の思想のほうで、ベースは「観測されるまで存在しない」という量子力学の考えかたが宇宙全体に及んだら…?というもの。さらに他の宇宙があるよ派がいたり、ステートレスという人工島の成り立ちと世界政治、そこにディストレスという謎の奇病の存在が絡んでくる。(原題は「Distress」) ストーリー自体はそこまで複雑ではなく、一人称で視点が変わらず進んでいくのですごく読みやすいし、読んでいてべらぼうにおもしろかったのは確かなんだけど、正直に言うと最後の最後、エピローグの直前の文が理解できなくてちょっと情けない気持ちになっている。これは僕に読解力がなさすぎるのが悪い。 イーガンは難解で有名だけど、何冊か読むと(はは〜ん、ここはわからなくていいとこだな)というのがわかってくる。わからなくていいところをスルーできるようになると全然読める。わからなくていいところがわからないのは仕方がない。ただ、僕がわからないのはそういうのではなく、含みのあるセリフの真意が読み取れなかったりとか、指示語がなにを指しているかわからないとか、そういうところでつまづいている。最後になに言ってるかわからないのはさすがに悲しい。 なんとなく、愛することができるのは人だけで、AIにはできない的なことかと思う。全然違うかもしれない。そして、その後のエピローグもよくわからなかった。つまり、最後の10ページくらいよくわからなかった。本当に読んだ甲斐がない。 もっと真実を理解りたい。
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こないだからちまちま再読していたのをやっと読了。やっぱ難しい。 最初に読んだときに、これは「物理学を中心とした科学による(世界認識の方法としての)宗教の再定義」なのじゃないかと思ったのだけど、読み直してみると作中で人間宇宙論者のひとりが「宗教じゃない、宗教じゃない」としつこく念を...
こないだからちまちま再読していたのをやっと読了。やっぱ難しい。 最初に読んだときに、これは「物理学を中心とした科学による(世界認識の方法としての)宗教の再定義」なのじゃないかと思ったのだけど、読み直してみると作中で人間宇宙論者のひとりが「宗教じゃない、宗教じゃない」としつこく念を押していて、これって作者のメッセージなのかなあという気もしてきた。とはいえ「万物理論を完成して宇宙を完全に説明する人間」というのは容易に宗教的な預言者を連想させるし、そこで説明された宇宙で生きる人びとを、ある世界観に帰依する信仰者になぞらえてまずいことは特にないと思う。問題があるとすれば、いくつかの「万物理論」の仮説のうち正しいものは一つだけのはずで信教の自由が認められないということだけど、それにしたって宗教も本来そういうものだったわけだし。面白いのは、「完全な記述者=基石」の出現の時点から前後左右にーー時間的に遡って染み出すようにーー宇宙が確定していくというイメージで、その発現のひとつの形が「ディストレス」という病気だというアイディアが卓抜である。 また誰もが言うように、この作品の魅力(と手強いところ)のひとつは、まさに大量にぶちこまれたSF的なアイディア・ギミック・ガジェットであって、本筋に関係あるものもなさそうなものもとりまぜてとにかく膨大で、それを書き出すだけで大変な労力が必要になるだろうけど、今あらためてそれをやりたくなっているのだった。そのうちのいくつかはたぶん作者本人が「早くこういうのできないかなー」と思っているものだろうし、ステートレスという「国家ならざる国家」をまさしく彼は切望しているに違いないと思っている。ていうかそういう国に私も行きたいわ。
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実際に情報と物理のアレコレでああなるかはさておき、ACの発想自体は馬鹿げたものではない。また、たしかに皆さんが言う扱っているテーマの手応えというか実在感はすごく、それはこの物語の魅力の一つである。 しかしなんと言っても、この物語の凄さの核心は、宇宙そのものを独我論に落とし込んでい...
実際に情報と物理のアレコレでああなるかはさておき、ACの発想自体は馬鹿げたものではない。また、たしかに皆さんが言う扱っているテーマの手応えというか実在感はすごく、それはこの物語の魅力の一つである。 しかしなんと言っても、この物語の凄さの核心は、宇宙そのものを独我論に落とし込んでいることである。真の〈私〉、真のcogito ergo sum、それから導かれる「他者」の存在。これが理解できている(というよりかは体感している)人にとっては、「基石」が何であり、それが作中にあるように、精神を持つもの全体が対象とされなければならない理由、また作中の、「ひとつの精神が、それひとつきりで、別の精神を説明することで存在させられるものだろうか?」という問いが発せられた理由、そしてその答えを理解することができるであろう。
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うーーーーん面白かった!三部作の中では一番好きかもしれない…?エンタメ要素も高かったから読みやすかったのもあるし、ディアスポラのあとだからやはりそう感じるのだろう笑 万物理論の話と、原題であるDistressがどう交差するのか?とソワソワし続けましたが、なるほどーーーそして最後も...
うーーーーん面白かった!三部作の中では一番好きかもしれない…?エンタメ要素も高かったから読みやすかったのもあるし、ディアスポラのあとだからやはりそう感じるのだろう笑 万物理論の話と、原題であるDistressがどう交差するのか?とソワソワし続けましたが、なるほどーーーそして最後もなるほどーーーとなってあっという間に読み終わってしまった。 「きみは、しつこく自己言及をしているーしかもそれがたいていは嘘であるようなー社会に住んでいて、うんざりしたことはないか?価値のあるものはすべてー寛容さも、高潔さも、誠実さも、公正さもー”オーストラリア人に独特のもの”だと定義するような社会に?多様性を奨励するふりをしてーなのに、”自国民のアイデンティティ”についてのたわごとをいうのを、どうしてもやめられない社会に?…きみをあらゆる点にわたって定義づけ、特徴づける時事解説者ーこういう、要するに、嘘つきと泥棒ばかりの連中に?」 今回特に面白いとビビっとしてしまったのは、オーストラリアという国家、オーストラリア人というアイデンティティについて踏み込んでいたこと。これはジェネラルにアイデンティティとは?というところから、一歩コンテクストがつけられたものだけれど、オーストラリアの人々はどういうアイデンティティの悩みがあるのかということについては目から鱗だった。そうだよなあ…という感じで。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
海外旅行中に読破。正直、他にすることがない状況だから読めた気がするほど、まあ難解。 後半の汎への思いの乱れっぷりが若干安直というか、え?君、そういう人だったっけ?という感じ。モサラには死んでほしくなかったな〜。海外ドラマでじっくり作っても良さそう(全然流行らなくて、一部熱狂的ファンを作るドラマw)
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第4長編、原題「苦悩≒引き合いながら離れる感じ」作中の疫病名▲「万物理論」の番組制作で向かう国際理論物理学会。会場の人工島ステートレスではカルト集団が出没し、世界では謎の疫病が蔓延しつつあった▼舞台は2055年、フランケンサイエンスと呼ばれる行き過ぎたバイオテクノロジー社会。知的...
第4長編、原題「苦悩≒引き合いながら離れる感じ」作中の疫病名▲「万物理論」の番組制作で向かう国際理論物理学会。会場の人工島ステートレスではカルト集団が出没し、世界では謎の疫病が蔓延しつつあった▼舞台は2055年、フランケンサイエンスと呼ばれる行き過ぎたバイオテクノロジー社会。知的所有権を無視した無政府国家であり国際社会では被制裁国であるこの地で、混沌と法の代理戦争が各層で行われ、アッと驚くセカイ系な展開へと進む。モノローグなので読みやすく、ガジェットが秀逸で興味を引く。一周回って人間賛歌かも(1995年)
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個人的に難解作家イーガンの長編にしては読みやすかった作品。 バイオテクジャーナリストの主人公が本職に嫌気がさし、物理学会議で発表される万物理論を取材するといったストーリーだが、舞台を彩る社会構造に宗教、登場する人物達が一癖も二癖もあるのが面白い。
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原著は1995年刊行ですでに四半世紀前の作品なわけだが、ジェンダーだの民族だのといったアイデンティティが問題にされているあたり、2020年の目線で見て未来社会の描かれ方として驚くほど違和感がない。 万物理論をはじめとする本筋のネタには残念ながらついていききれなかったのですが。。...
原著は1995年刊行ですでに四半世紀前の作品なわけだが、ジェンダーだの民族だのといったアイデンティティが問題にされているあたり、2020年の目線で見て未来社会の描かれ方として驚くほど違和感がない。 万物理論をはじめとする本筋のネタには残念ながらついていききれなかったのですが。。。
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