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イルカの家 の商品レビュー

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10件のお客様レビュー

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2022/08/07

サトクリフの作品としては珍しく、大きな歴史的な出来事ではなく、市井の人々(子どもたち)の物語。自伝的な要素があるとのことだったが、なるほど、と思う。 読みやすいが、その分、ドラマ的な要素は少なかったかも。

Posted byブクログ

2023/06/25

まず読んでいる途中で、「えっ、こういう展開なんだ」と感じた、物語の内容が意外で・・てっきり、主人公の「タムシン」が、憧れの船に乗り込んで、大航海時代に乗り出す冒険活劇かと、予想していたのですが。 しかし、その意外な展開が、一見素朴な日常生活の光景を描いているようでありながら、そ...

まず読んでいる途中で、「えっ、こういう展開なんだ」と感じた、物語の内容が意外で・・てっきり、主人公の「タムシン」が、憧れの船に乗り込んで、大航海時代に乗り出す冒険活劇かと、予想していたのですが。 しかし、その意外な展開が、一見素朴な日常生活の光景を描いているようでありながら、その日常に溢れているものの素晴らしいことといったら! 約9ヶ月間のロンドンでの、ギディアンおじさんの家族とともに過ごした、タムシンの日々の生活とイベントの数々は、ひとつひとつが、新たな瑞々しい発見の連続となっていて、そこに新鮮な驚きと面白さを感じられるかどうかが、本書を楽しむ鍵のような気もして・・私は好きでした。暖炉を囲む温かいひと時や、キットのお城での「信じる魔法」の世界、町の様々な建物や船のこと細かい描写に、自然の風景、動植物たち、全てが言葉を読んでいるだけなのに、目の前に浮かんでくるような、わくわく感に満ちているのは、何故なのでしょう? 特に、草花の名前だけで、いくつ出てくるのだろうといった、サトクリフの目線はすごいなと思い、「魔法使いのおばあさん」のある一頁だけで、ルリヂサ、マージョラム、ジギタリス、ニガヨモギ、メリロット、ローズオブザサン、セイヨウヤマハッカ、ベルガモット、エラカンペイン、カモミール、マリーゴールド、ヒメウイキョウ・・実はまだあるのですが、これを読んでいるだけで、花の形を知らなくても、私はとても楽しい気分になります。 つまり、楽しめるかどうかというのは、こういう事なのだと思っており、私だったら、普段気付くことができないであろう、自分の周りに何があるのかを、ひとつひとつじっくりと愛おしげに眺めている、サトクリフの姿を想像させられ、訳者あとがきにもあるように、病気のため不自由な生活をしていた彼女自身の憧れであるようにも、思われました。 最後に、私の好きな場面を少し。 こうした、素朴でささやかなものなんだけれど、何度でも読みたくなる魅力というものを、文章に感じさせられます。 『タムシンは、そうっと指の先で芽にさわってみました。花の形は、杯のようなのでしょうか、それとも星の形か、鈴のような花なのでしょうか。青い花か、黄色か、それともまっ赤でしょうか。そう考えていると、少しは気が晴れます。元気そうな、かわいらしい芽で、タムシンはこの芽が大好きでした』

Posted byブクログ

2022/06/20

 このお話は、16世紀、大航海時代のイギリスのお話です。  主人公の十歳の少女タムシンは孤児となり、故郷の港町、ピディフォドを離れ、ロンドンのギディアンおじさんの家に引き取られました。  ギディアンおじさんは刀鍛冶と鎧職人の親方であり、ロンドンのテムズ川沿いの商家や工房が並ぶ通り...

 このお話は、16世紀、大航海時代のイギリスのお話です。  主人公の十歳の少女タムシンは孤児となり、故郷の港町、ピディフォドを離れ、ロンドンのギディアンおじさんの家に引き取られました。  ギディアンおじさんは刀鍛冶と鎧職人の親方であり、ロンドンのテムズ川沿いの商家や工房が並ぶ通りにありました。なぜ「イルカの家」というか。それはこの家が当時のロンドンに多い、切妻屋根の三階建で一階より二階が少しせり出し、そのせり出した部分の「持ち送り」の部分にきれいな青い色のイルカの彫刻が施してあったからです。ヘンリー八世の時代、人々は輝くような色を好み、それぞれの家に凝った彫刻をして、きれいな彩色をしていたそうです。  当時のロンドンの工房の様子。買い物に行くとき通りが臭いから、いつもハーブの束を握りしめていく様子。年に一度くらい、テムズ川を舟で上り、家族でピクニックに行く様子。五月祭りで若い徒弟たちが、お約束のケンカをして名誉の傷をこしらえて、誇らしげに叱られる様子。王様の船がテムズ川を下ってきたら、喜んで家の裏の土手を上り、王様を見つけて「万歳」と叫ぶ様子。ハロウィンに暖炉の周りに集って、お母さんから妖精伝説のお話を聞かせてもらうこと。特別な時には「ダマスク織りの」服を着ること。クリスマス前には家族がそれぞれのプレゼントを内緒で用意して(手作りが多いが見てみぬふりをする)隠しておくこと。当時の素敵な習慣にこちらの目がキラキラする。  作者のローズマリー・サトクリフさんは歴史小説の大家であられたらしく、イギリス史の堅牢な知識がこの児童書にリアリティを持たせ、味わい深いものにしていると感じられる。  一番素敵なのは、タムシンと従兄妹のピアズが船への夢を通じて心を通わせることだ。故郷のピディフォドで交易商人マーティンおじさんの船に乗るのことが夢であったタムシンと本当は船乗りになりたいが、諦めて父親の徒弟になっているピアズが屋根裏部屋で蝋燭の灯りの中、秘密の「新世界の地図」を広げて、いつか二人の「イルカと冒険の喜び号」に乗って大航海する空想を広げているのだ。  この時代から500年たち、飛行機が出来、ロケットが出来、人工衛星が出来、通信網が出来、もうどこへも行かなくても世界のことが瞬時に分かるようになってしまった。  どこへも行かなくてもいいけれど、この時代のこのイルカの家に行ってみたい。タムシンたちが夢見た“新世界”と同じくらい夢があるよね。絶対叶わないけれど。

Posted byブクログ

2016/12/08

1530年頃のイギリスに生きる少女の一年間を丁寧に綴りあげた作品。一見、サトクリフらしからぬ作品に見えるが、サトクリフらしさに貫かれた作品である。 サトクリフの歴史児童文学といえば、ローマン・ブリテン四部作のような戦いや冒険の物語を連想する。この作品ではそういった要素はきわめて...

1530年頃のイギリスに生きる少女の一年間を丁寧に綴りあげた作品。一見、サトクリフらしからぬ作品に見えるが、サトクリフらしさに貫かれた作品である。 サトクリフの歴史児童文学といえば、ローマン・ブリテン四部作のような戦いや冒険の物語を連想する。この作品ではそういった要素はきわめて薄い。 もうすぐ9歳になるタムシンは祖母と死別し、武具職人のおじにひきとられてデヴォン州からロンドンに移り住む。 思いやりとやさしさに包まれながらも、タムシンは孤独だった。そんなタムシンの心に寄り添うのは、14歳のいとこピアズだった。穏やかでまじめなピアスは、船乗りになって海のかなたに向かうことを切望しているのだが、家業を継ぐべき立場にあることを自覚し、その夢を表には出さないようにしている。 ふたりが静かに心を寄せ合っていく過程はとても美しい。 また、16世紀ロンドンの日常が鮮明に描き出される。市場の喧騒や郊外の自然の美しさが、町の悪臭や花々の彩りとともに、いきいきと再現されている。 3月に始まりクリスマスに終わるこの作品は、5月1日(メイデイ)や夏至、ハロウィンといった季節のイベントを軸として展開されている。 こういった祭事は古い時代の信仰と結びついたものでもある。そのためか、あくまで日常を描いた作品であるのだが、どこか深いところに「魔法」の気配が漂っている。 この作品の描き出す世界はあくまでもやさしい。悪意を抱いた人間は出てこない。それでも、人々は孤独とかなしみを抱えている。 そして物語の中心を貫いているのは想像力と憧れなのだ。

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2014/12/05

16世紀、大航路時代のイギリス。孤児になった9才の少女タムシンはロンドンのおじさんの家(イルカの家)にひきとられる。家族はみな温かい人たちで、タムシンも次第にイルカの家に馴染んでいくが、海と船への憧れを共有できたのは、一番年上の14才のピアズ少年だった。あたたかく幸せな気持ちにな...

16世紀、大航路時代のイギリス。孤児になった9才の少女タムシンはロンドンのおじさんの家(イルカの家)にひきとられる。家族はみな温かい人たちで、タムシンも次第にイルカの家に馴染んでいくが、海と船への憧れを共有できたのは、一番年上の14才のピアズ少年だった。あたたかく幸せな気持ちになれる物語。 【姫路市立城内図書館】

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2011/05/05

ずい分前に読んで、タイトルを聞いてもその内容を思い出せなかったのに、本をてに取ってページを開いたとたん、中身が鮮やかに蘇って来ました。数年前に皆で行ったロンドンの町、ゆったりと流れていたテムズ河を懐かしみました。またいつか行けるといいなぁ・・

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2010/05/20

サトクリフは、息詰まる大河ドラマ的歴史小説ばかり書く人だと思っていたけれど、こんなに優しい話も書く人だったのか! 16世紀英国、デヴォンからロンドンの親戚の家に引き取られた女の子タムシンの目を通して、ロンドンの一年が美しくあざやかに描写されている 主人公と、あまり弟妹から重く見ら...

サトクリフは、息詰まる大河ドラマ的歴史小説ばかり書く人だと思っていたけれど、こんなに優しい話も書く人だったのか! 16世紀英国、デヴォンからロンドンの親戚の家に引き取られた女の子タムシンの目を通して、ロンドンの一年が美しくあざやかに描写されている 主人公と、あまり弟妹から重く見られていない次男との、もの静かで海への憧れを介した交流がすごくいい 大航海時代のイギリス人の新世界への憧れはめくるめくものがある 家業を継がねばと解っていながら海に憧れる次男のつらさは、溺死したと思われていた長男がクリスマスにかえってくることで大団円を迎えるわけで、幸せな予定調和が妙に沁みた こういう本を読んで育つから、英国への憧れが熟成されちゃうわけだなあ…

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2014/12/28

孤児の少女タムシンは、船乗りになりたいという夢と、気のいい親戚の中で暮らしてもどうしても拭うことができない孤独感を抱えて日々を暮らしている。 物語の舞台はチューダー朝のロンドンで、質素だけど賑やかな鍛冶屋の家族の生活、わくわくするような造船所の雰囲気、自然あふれる郊外の解放感とか...

孤児の少女タムシンは、船乗りになりたいという夢と、気のいい親戚の中で暮らしてもどうしても拭うことができない孤独感を抱えて日々を暮らしている。 物語の舞台はチューダー朝のロンドンで、質素だけど賑やかな鍛冶屋の家族の生活、わくわくするような造船所の雰囲気、自然あふれる郊外の解放感とか、 読んでいるうちにその世界にすっぽり入りこんでしまいました。 特に大きな事件があるわけでもなく、日々の暮らしを丁寧に描いているストーリーはとてもあたたかくて、読んでいて幸せな気持ちになりました。 同じくサトクリフが書いたウォルター・ローリーの物語にも共通する「海に出る憧れ」に共感する、大好きな物語です。

Posted byブクログ

2009/10/07

サトクリフにしては珍しく、少女が主人公。愛らしい佳作です。 両親のいない少女タムシンは祖母の遺言で、9歳まで慣れ親しんだふるさとを離れ、ロンドンへ。 伯父は鎧作りの親方で、青いイルカがついた綺麗な家に住んでいます。 みんな優しくしてくれますが、ふるさとから引き離されたタムシンはひ...

サトクリフにしては珍しく、少女が主人公。愛らしい佳作です。 両親のいない少女タムシンは祖母の遺言で、9歳まで慣れ親しんだふるさとを離れ、ロンドンへ。 伯父は鎧作りの親方で、青いイルカがついた綺麗な家に住んでいます。 みんな優しくしてくれますが、ふるさとから引き離されたタムシンはひそかな孤独感から逃れられません。 国王ヘンリー8世が若かった頃、人々は明るい色を好み、祭りなどの催しを楽しんでいました。テムズ河を王とアン・ブリン一行が華やかな屋形船に乗って行くのを見るシーンも出てきます。 魔法使い?のお婆さんの家に迷い込んで鉢植えを貰い、クリスマスに咲く花が幸運を運んでくると言われて楽しみに待ちます。 タムシンが目をみはるように見つめる日々の暮らしが慈しむように丁寧に描かれて、小さな喜びを大切にする作者の愛情も感じられ、心地よく頁を繰っていけます。 ふるさとの港で海を見て暮らし、船に乗って海へ出て行くことを夢見ていたタムシンは、女の子には無理とわかっていても夢を捨てきれずにいました。 思いがけない理解者を得て、孤独から救われることになります。 当時の色鮮やかな地図を見ながら自分の船を走らせる冒険を想像して夢を膨らませる少女たちの姿が楽しい。 大航海時代だったんですねえ!

Posted byブクログ

2012/02/19

・・・だってThe Armourer's Houseなんだよ! 〜北デヴォンに住むタムシンは祖母を亡くし,ロンドンのおじの下に引き取られるが,鎧師のおじ一家が温かく接してくれても居場所がない気がしてならない。春のピクニック,メイデイ,夏至祭,ハロウィーン,クリスマスを通...

・・・だってThe Armourer's Houseなんだよ! 〜北デヴォンに住むタムシンは祖母を亡くし,ロンドンのおじの下に引き取られるが,鎧師のおじ一家が温かく接してくれても居場所がない気がしてならない。春のピクニック,メイデイ,夏至祭,ハロウィーン,クリスマスを通じて,居場所を確保していく。特に,兄が溺れ死んだために父の仕事を継ぐために鎧師の徒弟となったピアザとは,海に漕ぎ出す夢を分かち合う度に深い結びつきを感じていく。夏に同郷のおばあさんから貰ったチューリップはクリスマスに咲き,希望が叶う。クリスマスには故郷から出てきたもう一人の船乗りのおじがやってきて,溺れ死んだ筈の長男が家に辿り着く。〜訳者は『鎧師の家』と原題に近い名を後書きで述べているのに,冒険を予感させるような題にして,装画も船に乗る男女を描いている。まあ,騙されますよ,ハイハイ。ローマン・ブリテン三部作の前に書かれた作品だそうだ。女であるために将来に希望が持てない16世紀の少女を周辺の人々が何の悪意もなく包んでいく。思わず,google mapを開いて地図を確認した。ビディフォドからロンドンまで馬で一週間。テムズ通りからロンドン橋まで買い物に行き,3階建ての工房兼住居から王立造船所までは遠いからと早々と出発する。溺れ死んだ思っていた長男がインド行きのポルトガル船に乗り込み,リスボンを経由して家に着くまで2年・・・そうだよね。でもさ,翻訳が拙くないかな? 見れば,もう60歳を越えた人,あれあれ,子供向きの本としては訳者が歳をとりすぎている。内容からして訳しにくいものだし,誰も地雷を踏みたくなかったのか。でも,ヘンリ8世がアン・ブーリンと結婚して活気に溢れるイギリスの様子がよく分かる。床には葦をしいて,臭いを誤魔化すために,花が使われる。メイデイって,ロビン・フッドとその仲間の活躍を祝うお祭りだった。

Posted byブクログ