嘘つきアーニャの真っ赤な真実 の商品レビュー
小学校中学年から中学の約五年間プラハに住んでいた筆者。私が海外に住んでいた年齢とかぶる。 共感したところ。 「異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てるすべてのものを確認しようと躍起になる。自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件、その他諸々のものに突...
小学校中学年から中学の約五年間プラハに住んでいた筆者。私が海外に住んでいた年齢とかぶる。 共感したところ。 「異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てるすべてのものを確認しようと躍起になる。自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件、その他諸々のものに突如親近感を抱く。」 「お国自慢をしても当たり前のこととして受け入れる雰囲気があった」 自分が日本人であることを当たり前のように意識していた。日本で暮らしていると、みんなそれに違和感を感じているみたい。 アーニャ 時代の流れは人の考えや行動を変えていく。ただ、その人の本質は変わらないのかもしれない。アーニャはルーマニアの愛国心がとてつもなく大きかった。が、今はルーマニアを捨て、イギリスに住んでいる。そのことに対してあまり罪悪感を感じていないような発言をする。が、その目は誠実そのもの、アーニャが嘘を付く時にする目だ。ただ、もしかしたら本当に心からそう思っているのかもしれない。
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リッツァの夢見た青空、嘘つきアーニャの真っ赤な真実、白い都のヤスミンカ、3篇ともタイトルに入っている「色」に印象付けられる物語。 日本で生まれ、育った私にはカルチャーショックを受けるくらい、3人の人生は「国」や「政治」、「民族」に左右されている。 この本を読んで、普段意識しないそ...
リッツァの夢見た青空、嘘つきアーニャの真っ赤な真実、白い都のヤスミンカ、3篇ともタイトルに入っている「色」に印象付けられる物語。 日本で生まれ、育った私にはカルチャーショックを受けるくらい、3人の人生は「国」や「政治」、「民族」に左右されている。 この本を読んで、普段意識しないそれらのことを考えるきっかけをもらって本当に良かった。
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ノンフィクションとは思えない。物語のようだが、現実に起きたこと。当時を生きた著者による記録。世界史や近代史における自分の知識の欠如を痛感。もっと知っていれば、もっと入り込めたろう。日頃勉強しようと思うだけで勉強しない自分を改めて認識した。毎日少しずつでもやろう。今度こそ。閑話休題...
ノンフィクションとは思えない。物語のようだが、現実に起きたこと。当時を生きた著者による記録。世界史や近代史における自分の知識の欠如を痛感。もっと知っていれば、もっと入り込めたろう。日頃勉強しようと思うだけで勉強しない自分を改めて認識した。毎日少しずつでもやろう。今度こそ。閑話休題。ロシアや旧ソビエトに対する認識が変わった。良いイメージを持っていなかったが、少しプラスへ転換した。その国民全員が全く同じ思想を持つことは限りなくあり得ない。当たり前だが、気づいていなかった。無意識に全員がそうだと思っていた。恥ずかしながら、「中欧」という言葉も初めて聞いた。東欧と中欧は区別する必要があるという事実も。ロシアは才能ある人をみんなが愛するという民族性も興味深かった。ロシアはなんとなく頑固だという先入観があったためだ。結論。国際関係と言語についてもっと学ぼう。
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米原万里さんが在プラハ・ソビエト学校で出会った同級生たちとの思い出、そしてその後の姿を追ったドキュメンタリーエッセイ作品。 かつての同級生、リッツァ、アーニャ、ヤスミンカはそれぞれ個性的な人間性を持ち、抱える背景も今の日本人から見れば特徴的である。 リッツァは、故国ギリシャの...
米原万里さんが在プラハ・ソビエト学校で出会った同級生たちとの思い出、そしてその後の姿を追ったドキュメンタリーエッセイ作品。 かつての同級生、リッツァ、アーニャ、ヤスミンカはそれぞれ個性的な人間性を持ち、抱える背景も今の日本人から見れば特徴的である。 リッツァは、故国ギリシャの青空を夢見ながらも、30年後には幼い頃の夢とは違いドイツで医者として暮らしていた。 アーニャは、共産主義に対する純粋無垢な気持ちを持ちながらも、自分の矛盾した言動に何も感じていない。 ヤスミンカは、成績優秀で芸術的才能もありながら、戦争と隣り合わせの生活を強いられている。 最近の日本で書かれる作品には、私的な、個人の中の気持ちにフォーカスした作品が多い気がするが、個人の気持ちを変えたところでどうにもならない問題は世界のここかしこにある。 社会の動きに翻弄され、様々な問題を抱えつつも、精一杯に生きている人たちがいる。 「事実は小説よりも奇なり」とは、まさにその通りで、現実をもとに描かれるドラマは、小説よりも面白い。 そして、翻訳の仕事をしていた米原さんならではの東西戦争の裏話もあり、非常に興味深い。 戦争に正義はない。日本では西側諸国が「正義」だと報道されていたが、現実はそうとは限らない。 様々な視点を与えてくれ、真実はひとつではないことを教えてくれる。 自分のいる共同体を、「国としてではなくて、たくさんの友人、知人、隣人がいる」という考えで愛する思想は、とても大事だと思う。 多くの日本人は、異国の人間と触れ合う機会が多いだろう。 その時に、自分の共同体のアイデンティティをどう考えるか。 世界には様々な文化があり、様々な人間がおり、様々な現実がある。 そのことを、改めて考えさせられる一冊。 「セカイ系」の物語では、個人の気持ちを変えることで世界が変わる。 確かに、そういう面もあるかもしれない。 だが、それは根本的な解決にはなっていない。 世界を変えるには、周りを動かす必要がある。 中には、動かせないものもあるだろう。 動かせない壁にぶち当たった時に、どうするか。 「セカイ系」の物語では、そこまで考えられていないように思われる。 それが、「セカイ系」が浅い理由であるように思う。
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著者が10代のはじめを過ごしたプラハ、そこでの級友に約30年を経て再会する話。話は3編あり級友も3人。 我ながら東欧の歴史をほとんどなにも知らないなと気付かされた。
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1960年代はじめ。在プラハ・ソビエト学校には、当時社会主義体制に組み込まれていたすべての国の子どもが通ってきていた。外交官の子弟、故国の共産主義者弾圧から逃れて東欧諸国を転々と移ろう両親の間に生まれた兄弟たちが。 日本共産党員であった父親の海外勤務に伴い、このソビエト学校で10...
1960年代はじめ。在プラハ・ソビエト学校には、当時社会主義体制に組み込まれていたすべての国の子どもが通ってきていた。外交官の子弟、故国の共産主義者弾圧から逃れて東欧諸国を転々と移ろう両親の間に生まれた兄弟たちが。 日本共産党員であった父親の海外勤務に伴い、このソビエト学校で10代の数年間を過ごした著者。 生涯忘れがたい友人を得、しかし父親の海外勤務終了とともに日本へ帰国したそのあとに、東欧に激動の時代が訪れた。 ギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビア。 リッツァ、アーニャ、ヤスミンカ。プラハの曇天のもと、それぞれまだ見ぬ、または遠く離れた故国を愛し、無邪気に社会主義体制の理想を信じていた3人の少女たち。 しかし故国は彼女たちの安住の地にはならず、社会主義体制は崩壊した。 かつての友人を探す著者の旅。そして革命と内戦、30年の歳月を超えて再会した“老いた少女”たちの人生に涙するエッセイ集。
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エッセイなのにドキュメンタリーのようでした。アーニャの描き方が絶妙です。著者はロシア語の翻訳者ということで言葉のプロ、さすがです。万里ちゃんお気に入り決定。
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人に優しくなれるし、何にも知らないんだ。 プラハのソビエト学校で個性的な友達に囲まれて過ごすマリ。 様々な国の同級生がホントに個性豊かッ! 日本とは違うなー いいなーこういうの。 ませてるリッツァ 嘘つきアーニァ クールで聡明なヤスミンカ その彼女たちに大人になったマリが会い...
人に優しくなれるし、何にも知らないんだ。 プラハのソビエト学校で個性的な友達に囲まれて過ごすマリ。 様々な国の同級生がホントに個性豊かッ! 日本とは違うなー いいなーこういうの。 ませてるリッツァ 嘘つきアーニァ クールで聡明なヤスミンカ その彼女たちに大人になったマリが会いに行くのだが… 世界は白黒でハッキリ分かれてない 全てはグレーであること… 境界が曖昧だからこそ、みんなと仲良くなれるのかも。でも、「よろしくねッ!」ってあいさつしても拒否する人もいる。そこで、その人を嫌いになってはならない。嫌われはしても、嫌ってはいけない。辛いなー。そんな事をポカーンと考えてしまう。 私が正しいのだと思わない方がいい。 いろいろと発見ができる本。 プラハの春、チャウシェスク独裁政権、民族主義
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シモネタから幕をあける3つのエピソード。 米原さんが少女時代を過ごしたチェコでの学園物語とその後。という軽いものではない。 自らのルーツと一緒に異国にやってきた背景多色な同級生の言葉はおませとかでない大人の空気を感じさせる。日本だけで生まれ育った人にはピンとこなかろう世界は...
シモネタから幕をあける3つのエピソード。 米原さんが少女時代を過ごしたチェコでの学園物語とその後。という軽いものではない。 自らのルーツと一緒に異国にやってきた背景多色な同級生の言葉はおませとかでない大人の空気を感じさせる。日本だけで生まれ育った人にはピンとこなかろう世界は存在するのだ。 米原さんが成人し、ギリシャ(?)のリッツァとルーマニア(?)のアーニャとユーゴスラヴィア(?)のヤスミンカに再会を果たしていく実話。 自分が日本人だという事に疑いを持たない当たり前さを一考させられた。 …と、難しそうですが、かなり、楽しく読めます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者が、プラハのロシア学校に通っていた時の友達との思い出と、近年彼女たちを訪ねて行ったお話。 情勢が、わかりやすく共感しやすく書かれていて良かったです。 『リッツァの夢見た青空』 一度も見たことのない祖国ギリシャを夢見ていたリッツア。大人になって住んでみると、青空以外は自分の理想ではなかった。 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』 平等を目指した民衆の力を利用して現政権を倒した後、今度は自分たちが強い力を持った特権階級の娘アーニャ。 その地位が危うくなるや、特権で得た知識と特権で得た外国人との結婚許可を持って国外へ出たアーニャ。 共産主義の平等の建前と自分の受けている特権の矛盾から逃げるように「そのうち国境はなくなるのだから」と話す。 『白い都のヤスミンカ』 「西洋」の側の仲間になりたくて、この地域の自分たちは上なんだと誇示したくて、近隣と争いを起こす人々。 紛争の片側からの目線でしか語らない報道。 「西側では才能は個人の持ち物なのよ、ロシアではみんなの宝なのに。だからこちらでは才能ある者を妬み引きずり下ろそうとする人が多すぎる。ロシアでは、才能ある者は、無条件に愛され、みんなが支えてくれたのに」
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