神話と日本人の心 の商品レビュー
日本の臨床心理学の先駆者である著者は、欧米(1950年代アメリカ、60年代スイス)への留学時に、日本神話が日本人の深層心理に強く影響を及ぼしていることを悟る。以来著者は40年余にわたって、日本人の心のルーツを日本神話に求めることをライフワークとする。神話がそもそも集団が部族として...
日本の臨床心理学の先駆者である著者は、欧米(1950年代アメリカ、60年代スイス)への留学時に、日本神話が日本人の深層心理に強く影響を及ぼしていることを悟る。以来著者は40年余にわたって、日本人の心のルーツを日本神話に求めることをライフワークとする。神話がそもそも集団が部族としてまとまるために共有してきた物語であるならば、たしかにその研究の目的と対象は整合する。本書は、その研究成果の集大成として、著者が2007年に逝去(79歳)する4年前に刊行された。 一神教を基本とする海外の神話が「中心統合構造」を成すのに対して、日本神話は八百万の神が互いに均衡を保つ「中空均衡構造」を成すとの発見が研究のブレイクスルーとなる。他者及び新しい物事に対して“まず批判して議論する”外国人と“まずは受け入れて調和を図る”日本人との価値観の差がこの点に起因すると筆者は考察する。中心に絶対的優位者が居座りその求心力を重視する外国人と、中心に特定の物を置かず全体としての調和を重視する日本人という今なお継続する図式の根源を、このようにいとも簡単に説明してしまった。外国人にとって、ひとつの座標軸を設定し二分法(天と地、光と闇、男と女、自と他、善と悪、精神と物質、などの区別)に頼って二項対立的に処してゆく手法が一般的である。これに対して、アマテラス―ツクヨミ―スサノオのトライアッドの関係に見られるように、そこに第三の要素を加えてダイナミズムを与えるとともに、三次元的均衡を保とうとする調和的な感覚が古来から日本人には備わっていると筆者は強調する。欧米のみならず中韓にも押されがちな我々日本人が勇気を与えられる言葉だ。 「科学の知は、その方向を歩めば歩むほど対象もそれ自身も細分化していって、対象と私たちとを有機的に結びつけるイメージ的な全体像が対象から失われ、したがって、対象への働きかけもいきおい部分的なものにならざるをえない。科学の切り離す力は強い。近代科学においては、観察者は研究しようとする現象を自分から切り離して、客観的に観察して、そこに因果的な法則を見出そうとする。したがって、そこから見出された法則は、その個人とは関係のない普遍性をもつ」 日本神話は、奈良時代初期に完成した古事記(712年)および日本書紀(720年)に記されている。日本書紀は外国に対して独立国家の成立を示す政治的意図をもって古事記を改変して作られたものと考えられている。以下に日本神話のあらすじを紹介する。 天地が分かれてまもなく高天原(天上界)に性別のない神々(七柱)、男女対となった神々(五組十柱)が次々に出現し、最後に出現した伊邪那岐(いざなぎ)・伊邪那美(いざなみ)の男女神に国生みが命じられ、大八島国(日本列島)が誕生する。伊邪那岐は自分から生まれた三柱の神、天照大御神、月読、須佐之男に、それぞれ天上界、夜の国、海原を治めるよう命じる。高天原を追われ出雲に降り立った須佐之男の六代後に登場する大国主は出雲国を栄えさせるが、この様子を見た天照大御神は出雲国を高天原系の子孫に治めさせることを決め、高天原系(国津神系)と出雲系(天津神系)の和議により、出雲の国譲りとなり、やがて天照大神の孫の邇邇芸(神武天皇の曾祖父)の日向・高千穂への天孫降臨へと繋がる。アマテラス系の天皇の統治する日本国家はこうして誕生する(天皇家の正統性を語るためにどちらかに中心を決める必要性があることから生まれた物語とされている) なお、大国主が国譲りの要求を受け入れる見返りとして建立されたのが出雲大社の起源であり、邇邇芸の降臨した高千穂の峰に刺さる天逆鉾(あめのさかほこ)は、坂本龍馬新婚旅行の地として知られている
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●日本人の心性に反映されている日本神話の「中空均衡構造」とはいかなるものか。簡単に筆者の考えを記せば、「中心に無為の神が存在し、その他の神々は部分的な対立や葛藤を感じ合いつつもら調和的な全体性を形成している」とのことである。 ●日本人の心とは、「論理的整合性ではなく、美的な調和感...
●日本人の心性に反映されている日本神話の「中空均衡構造」とはいかなるものか。簡単に筆者の考えを記せば、「中心に無為の神が存在し、その他の神々は部分的な対立や葛藤を感じ合いつつもら調和的な全体性を形成している」とのことである。 ●日本人の心とは、「論理的整合性ではなく、美的な調和感覚」であり、それを神代から脈々と受け継いできたと読み取れた。
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まさに私の知りたいことがギュギュギュっと!!! 月読の存在感! そう!そう!そ~ゆ~ことなんだって!!とうなずきながら読んだ。
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アマテラスを天の岩屋戸から引き出すために アメノウズメが裸踊りをするという場面は有名だが、 アマテラスの影としてアメノウズメを考えると なんと面白い・・・。 外国の神話との比較もあって面白い。 中空近郊構造に関しては、こういうバランスのとり方というのは思ってもいなかったことで、い...
アマテラスを天の岩屋戸から引き出すために アメノウズメが裸踊りをするという場面は有名だが、 アマテラスの影としてアメノウズメを考えると なんと面白い・・・。 外国の神話との比較もあって面白い。 中空近郊構造に関しては、こういうバランスのとり方というのは思ってもいなかったことで、いわゆる日本人気質というのは、こういうところからきているのか・・・と納得した。 出雲と高天原との関係も面白く、勝者が敗者を支配下に置くという関係性がなく、巧妙に妥協したり、うまく補償しあったりして、古事記のなかの神々はすごいというか・・・ こういう物語をつくった日本人・私たちのご先祖さまたちは、ただただすごいなあというしかない。 「畏む(かしこむ)」ということに関しての記述も面白かった。
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日本人の「リーダーシップ」「自己主張」が無いは今に始まったことではなく、神話が出来た古代からの国民性なんだということがよく理解できた。 イザナキ、イザナミの最後のやりとりによって、日本における「死」の初めと、それでも人は「産む」のエピソードで、自然の厳しさに畏れの念を持ちながら...
日本人の「リーダーシップ」「自己主張」が無いは今に始まったことではなく、神話が出来た古代からの国民性なんだということがよく理解できた。 イザナキ、イザナミの最後のやりとりによって、日本における「死」の初めと、それでも人は「産む」のエピソードで、自然の厳しさに畏れの念を持ちながらも、未来へ力強い希望をもってるということにとても感動した。
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「本書において、日本の神話について細部にわたって分析し、考察してきたが、これは、日本人が自分を確立するのにどのような過程を経てきたのか、欧米の個人主義を取り入れることがいかに困難なことであるかを、細部にわたって明らかにしてきた、ということもできるのである。(p.330)」
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日本人の特徴に「中空均衡構造」があると神話を通して分析したユング派の河合先生。これは今の政治状況を見ても見事に当てはまる。
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さすが河合隼雄さん。 神話に見られる、トライアッド、トリックスター、ゆりもどし、中空均衡構造などに日本人の心を見る。 すごいなあ。『昔話と日本人の心』も読んでみたい。 序章 日の女神の輝く国 一 日の女神の誕生 二 神話の意味 三 現代人と神話 四 日本神話を読む 第一...
さすが河合隼雄さん。 神話に見られる、トライアッド、トリックスター、ゆりもどし、中空均衡構造などに日本人の心を見る。 すごいなあ。『昔話と日本人の心』も読んでみたい。 序章 日の女神の輝く国 一 日の女神の誕生 二 神話の意味 三 現代人と神話 四 日本神話を読む 第一章 世界のはじまり 一 天地のはじめ 二 生成と想像 三 最初のトライアッド 四 神々の連鎖 第二章 国生みの親 一 結婚の儀式 二 男性と女性 三 意識のあり方 四 国生みと女神の死 五 火の起源 第三章 冥界探訪 一 イザナキの冥界体験 二 禁止を破る 三 原罪と原悲 四 原罪と日本人 第四章 三貴子の誕生 一 父親からの出産 二 目と日月 三 アマテラスとアテーナー 四 ツクヨミの役割 五 第二のトライアッド 第五章 アマテラスとスサノオ 一 スサノオの侵入 二 誓約 三 天の岩戸 四 アマテラスの変容 第六章 大女神の受難 一 大女神デーメーテール 二 再生の春、笑い 三 イナンナの冥界下り 四 イザナミ・アマテラス・アメノウズメ 第七章 スサノヲの多面性 一 スサノヲの幼児性 二 トリックスター 三 オオゲツヒメの殺害 四 英雄スサノオ 五 スサノヲ・ヤマトタケル・ホムチワケ 第八章 オオクニヌシの国造り 一 稲羽の素兔 二 オオクニヌシの求婚 三 スサノヲからオオクニヌシへ 四 スクナビコナとの協調 第九章 国譲り 一 均衡の論理 二 大いなる妥協 三 タカミムスヒの役割 四 サルダビコとアメノウズメ 第十章 国の広がり 一 海幸と山幸 二 「見畏む」男 三 第三のトライアッド 第十一章 均衡とゆりもどし 一 均衡のダイナミズム 二 三輪の大物主 三 夢を神 四 サホビコとサホビメ 五 結合を破るもの 第十二章 日本神話の構造と課題 一 中空均衡構造 二 他文化の中空構造神話 三 ヒルコの役割 四 現代日本の課題
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神話と日本人の心の結びつきに付いて、日本でのユング心理学の第一人者河合氏の著書。 いきなり飛び込むとちょっと難しいかもですが、書いてあることはとても面白いのでオススメ。
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