聖書時代史(旧約篇) の商品レビュー
旧約聖書が「なぜこの形をとって成立したのか」を、歴史の流れとそれに翻弄される民族の視点から時系列順に描き出した傑作。特に旧約は歴史ドラマが本懐であるところもあり、聖書の隠喩的な記載を歴史として捉え直す為の必読書。
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欧米の一部では聖書の内容は一字一句事実であり、それを信じるべきというキリスト教宗派があると聞いたことがあります。 もちろん、一般的な現代社会に生きる、普通の方々はそうでは無いかと思います。 とは言え、疑問は残ります。なぜそのように聖書は書かれたのか。なぜそのような荒唐無稽な描写がされたのか。あるいは荒唐無稽さは2000年前だったら「普通」に見えたのか否か。 そうした聖書(旧約)の内容に配慮しつつ、パレスチナ・イスラエル近辺の地域の歴史を、古代から共和制ローマ末期程度のジャスト紀元0年(なんていうんだ?)近辺まで辿るものです。 ・・・ 例えば。 出エジプト記は旧約聖書の中でも有名なもののひとつでしょう。 本作では民族の出自としてモーセの存在の真偽については不問に付しています(いたかもしれんし、いなかったかもしれん)が、イスラエルという民族はこのモーセからの万世一系かのごとく続いてたことは否定(つまり普通に混血)。さらに出エジプトというイベント自体も疑わしい旨を述べています。 むしろこうした「奇跡」は民族の政治的結束のための共通の物語であると解釈しています(主に第三章)。 エジプトや「海の民」からの攻撃により、追い詰められた民族。その民族結束のために作られたストーリである可能性は高い。そんな背景を説明してもらうと、「確かに」ってなりますね。 ・・・ もう一つ。 唯一神を崇めるのに、(リーダーとかではなくて)王様を担ぐって、変ですよね。旧約聖書でも、つと疑問に思うところです。だからこそ、痛い目(神の罰)にあうってのはありますが。 これを歴史的にみると・・・。 一神教的文化背景と王制はなじまないため、国内からの反発があったものの、外的要因(外国から攻められる等)により王制が導入されたようです。強力なリーダーが不在なため、戦争で連戦連敗と。その点で致し方なく的な様子であった模様。このあたりはサムエル記の内容と同時代の話です。 それでも結局、アッシリア(紀元前8世紀ごろ)にはメタメタにされ、混血を余儀なくされたそう。 しかし、それ以降も割と連戦連敗だったよう。でも、エジプトの支配にせよ、バビロン捕囚(紀元前6世紀ごろ)にせよ、宗教的自由は比較的考慮して貰えた模様。捕囚で連れてこられたバビロンでは、当然神殿などもないので、みんなで集まって教えを勉強するなど、ある意味宗教的含蓄が高まったそうな。 またバビロンで商業等で財をなしたユダヤ人は一部、ネブカドネザル2世亡き後もバビロンにとどまるものも多かったそう。 ・・・なんて内容を読むと、あたかも奴隷として連れてこられ悲惨な目にあったなんていう都市伝説的マンデラ・エフェクトをよくもまあ受け入れていたなあと感じます。 ・・・ その後はヘレニズムからローマまで、細かい記述が多いので割愛。 ただ、頻出する「古代誌」というユダヤの歴史書。これは旧約を学ぶ人にとっては重要なものなのでしょう。しょっちゅう引用・比較されています。 ・・・ ということで、宗教書を歴史的に読むという、非常に知的に刺激的なエクササイズでありました。 こういうやり方は不敬なのではとも思えたのですが、意外に一般的な様子でもありました。ドイツでこの手の研究が盛んな模様。 旧約を読んだらもう一度戻って来たい作品です。
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第一章「乳と蜜の流れる地」第二章「歴史と伝承」を読んだ。 旧約聖書(ユダヤ教へ配慮するならヘブライ語聖書)の記述を考古学的に読み解いた通史である。 イスラエルは血縁によって繋がった集団ではなく、徐々に多種多様な人種が集まったものであり、その経過の中で自らのルーツを説明するために語...
第一章「乳と蜜の流れる地」第二章「歴史と伝承」を読んだ。 旧約聖書(ユダヤ教へ配慮するならヘブライ語聖書)の記述を考古学的に読み解いた通史である。 イスラエルは血縁によって繋がった集団ではなく、徐々に多種多様な人種が集まったものであり、その経過の中で自らのルーツを説明するために語られた伝承が、これまた文字化していく過程で聖書はできたらしい。 (当時の)現在の目から見た過去を通して自分たちを見つめる行為がそこにはある。それは血縁による繋がりより素晴らしいものだと私は思う。それこそが人間の主体性ではないだろうか。
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本書は,山我哲雄・佐藤研「旧約新約聖書時代史」の旧約聖書の部分を底本としている。 旧約聖書に関係する史実についての本で,聖書の傍に置いておきたい。
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旧約聖書の歴史的背景がわかりやすく説明されている。通読してみたが、後で旧約聖書とヨセフスのユダヤ古代誌と一緒に読んでみよう。
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歴史の勉強にはなった。が、難しい・・・ 再読:いろいろ、イスラエルやユダヤについて勉強した後に読んでみるとすごく勉強になった。細かいことなども描かれておりわかりやすかった。時代背景やまわりの国々の情勢なども細かく描かれており、理解しやすくなっていた。
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時代史的展開を試みたタイトル、しかしやはり不明というか、不鮮明な部分が多すぎて、歴史的なつながりをやや欠いてしまうのは、致し方ないところなのか。
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『聖書時代史 旧約篇』は、1992年(著者41歳)に教文館から刊行された『旧約新約聖書時代史』の大幅改訂版。2003年(著者52歳)に岩波現代文庫版として刊行された。現代文庫版は、「新約篇」との2分冊。 なお、底本は1997年(著者46歳)に改訂版として刊行されていたもの。
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パレスチナ地方は一応「アジア」ということになってますので東洋史で分類しておきます。さて、この本はオリエントにおける「イスラエル人」の形成からイエス誕生前夜までの「ユダヤ人」を中心とした時代史です。神話・物語・英雄譚などなど説話的な要素で構成された『旧約聖書』を中心史料として紀元前...
パレスチナ地方は一応「アジア」ということになってますので東洋史で分類しておきます。さて、この本はオリエントにおける「イスラエル人」の形成からイエス誕生前夜までの「ユダヤ人」を中心とした時代史です。神話・物語・英雄譚などなど説話的な要素で構成された『旧約聖書』を中心史料として紀元前のパレスチナ地方の歴史をたどる方法は非常に困難であり、そのためまだまだ議論が尽くされていない研究ですが、それでもなお、イスラエル人の作った宗教がなぜ「ユダヤ教」と呼ばれているのかなど、高校世界史の知識しかない私にとっては「目からウロコ」の学説が随所に見られます。少々細かすぎて当該地域・対象を研究している人以外ついて行けないところも多々見られますが、読むだけだったらそんなに分量もなく手軽に読める本だと思います。
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