巷説百物語 の商品レビュー
巷に伝わる伝承をアレンジした時代小説。(と、思います)市井の悪党を妖怪の仕業と見せかけて、恨みを晴らしてくれる、又市一行必殺仕事人グループ。そこに、不可思議なお話を蒐集したい百介が絡む。 読み始めは、話の流れを掴めなくて、というか流れが見事で、夢か現か幻か?悪党さん達と一緒に騙さ...
巷に伝わる伝承をアレンジした時代小説。(と、思います)市井の悪党を妖怪の仕業と見せかけて、恨みを晴らしてくれる、又市一行必殺仕事人グループ。そこに、不可思議なお話を蒐集したい百介が絡む。 読み始めは、話の流れを掴めなくて、というか流れが見事で、夢か現か幻か?悪党さん達と一緒に騙されて、すっかり妖怪のお話だと思ってしまった。 それにしても、京極さんの知識がすごい。作中に出てくる古書の類は全部読破されているんでしょう。 しかも、妖怪大好きなのに、妖怪の仕業にはしない。 古今東西、世の中の解決できない納得できない事象を上手く妖怪の物語に仕立ててきたんでしょうね。
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怪談の皮を被ったサスペンス。百物語に出てくる妖怪話を土台に、奇妙な出来事が起こる。その裏で暗躍する又市、百介、おぎん、治平たち。血生臭い事件の犯人と読者をだまし、時に混乱させながら物語は進む。最後には割と現実的な種明かしがある。百物語は基本的に怪異があるものというルールで話が進行するが、この話ではそんなものは存在せず、全て又市による仕掛けだということになる。ただ人が人を死ぬように仕向けるという点で、より残酷である。結局人間が一番こわい。地の文がある文体と、登場人物が語る文体が出てくる。語りのところは、読む落語のように声が頭に流れた。
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よく言われるように仕置き人を思わせる連作のシリーズ。けれど、又一らの一味が目指すのは、謂わば問題の解決であって、殺せば終わりの仕置き人とは根本のところで違う。迂生は仕置き人の原作小説にはあまり詳しくないのだが、初期のテレビシリーズには、彼らが仕置きを果たしたせいで、却って状況が悪...
よく言われるように仕置き人を思わせる連作のシリーズ。けれど、又一らの一味が目指すのは、謂わば問題の解決であって、殺せば終わりの仕置き人とは根本のところで違う。迂生は仕置き人の原作小説にはあまり詳しくないのだが、初期のテレビシリーズには、彼らが仕置きを果たしたせいで、却って状況が悪化する「非情な」結末もままあった。そういう意味では表層とは異なり、アンチ仕置き人小説なのかも知れない。 個人的には、「嗤う伊右衛門」の方を先に読んでしまったので、「帷子辻」での又一の独白には胸をつかれた。
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初、京極夏彦。恩田陸のエッセイで、夢中になって読んだ本として紹介されていた。 装丁やタイトルから、手にとることはなかったが気になっていた京極作品。 確かにレビューにもあるとおり。ただのホラーではない。ミステリと、怪奇な出来事に理由があり、勧善懲悪にすかっとする部分もある物語。 で...
初、京極夏彦。恩田陸のエッセイで、夢中になって読んだ本として紹介されていた。 装丁やタイトルから、手にとることはなかったが気になっていた京極作品。 確かにレビューにもあるとおり。ただのホラーではない。ミステリと、怪奇な出来事に理由があり、勧善懲悪にすかっとする部分もある物語。 でも、好みの問題なのだけど、理由のない暴力や血の描写がだめだったあ。そこが大丈夫なら、娯楽作として読むのはあり。
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京極堂シリーズよりこっち、という声も聞こえる本シリーズ、第一作をやっと読めた。印象は天切り松シリーズ。で、個人的にはそちらに軍配。更には、個人的に京極堂シリーズも大好きって訳じゃないんだけど、筆者の作品の中では、そっちの方がまだ自分には合う感じ。自称・妖怪好きと思っていたのが、本...
京極堂シリーズよりこっち、という声も聞こえる本シリーズ、第一作をやっと読めた。印象は天切り松シリーズ。で、個人的にはそちらに軍配。更には、個人的に京極堂シリーズも大好きって訳じゃないんだけど、筆者の作品の中では、そっちの方がまだ自分には合う感じ。自称・妖怪好きと思っていたのが、本作に入れ込めないとなると、何だか怪しく思えてくるけど、タイトルに妖怪を置くのであれば、もう少し怪異譚寄りの物語が良かった。以降の本シリーズ作品、読まないかもな~。
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1話目の雨の降る森の描写から美しい。羨ましくないけど羨ましくなるような、こんな綺麗な場所に生きているのになあと言いたくなるような。 京極堂と嗤う伊右衛門しか読んだことなかったけれど、この人は短編の方が面白いかもしれない。帰結までが早いし毎回手が込んでいるし。 人間は弱いから、力が...
1話目の雨の降る森の描写から美しい。羨ましくないけど羨ましくなるような、こんな綺麗な場所に生きているのになあと言いたくなるような。 京極堂と嗤う伊右衛門しか読んだことなかったけれど、この人は短編の方が面白いかもしれない。帰結までが早いし毎回手が込んでいるし。 人間は弱いから、力が弱い立場が弱い生きている限り強いものに虐げられる、それに心も弱いから幽霊や妖怪が必要なんですね。 愛とは仏教用語なら執着。慈しむ、という概念はあれど明治以前には理解し難い、それだからむしろ伸びやかな時代だったのかもしれないな、なんて。 人間は生きているだけで美しい。
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昔アニメを見ていたので原作を読んでみました。 いつも読んでるような分野と違って最初は難しかった。 でもストーリーが楽しいのと、アニメのキャラクターが脳内でしゃべり出すので後半は読むスピードも上がりました。
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怪異譚を集めて旅する山岡百介が出会った奇妙な者たち。小股潜りの又市とその一派。シリーズ第一弾。最も面白いのは百介が又市たちと出会う第一話「小豆洗い」。又市たちの正体が知れぬだけにかなり効果的だ。2話目以降はこれが通用しないのが痛い。骨格は必殺仕事人なのだがこのように描くといい味が...
怪異譚を集めて旅する山岡百介が出会った奇妙な者たち。小股潜りの又市とその一派。シリーズ第一弾。最も面白いのは百介が又市たちと出会う第一話「小豆洗い」。又市たちの正体が知れぬだけにかなり効果的だ。2話目以降はこれが通用しないのが痛い。骨格は必殺仕事人なのだがこのように描くといい味が出る。
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ハードカバーからの再読。以前ハードカバーで読んだときは初の京極夏彦で、旧字体や京極夏彦独特の文体に、読むのに時間を要したが、再読までの間の時間に、いくつか京極さんの本を読んだおかげか、比較的すらすら読むことができた。妖怪話をもとに、人間の住まう『現実』を明らかにする、御行又市とそ...
ハードカバーからの再読。以前ハードカバーで読んだときは初の京極夏彦で、旧字体や京極夏彦独特の文体に、読むのに時間を要したが、再読までの間の時間に、いくつか京極さんの本を読んだおかげか、比較的すらすら読むことができた。妖怪話をもとに、人間の住まう『現実』を明らかにする、御行又市とその仲間たちご一行の活躍には目を見張るものがある。そしてこの作品を読んで一言。「やはり一番怖ろしいものは人間である」。
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"妖怪"を用いて現実の事件を解決するという、百鬼夜行シリーズとは対照的な作品。と言ってもどう説明しても何のことやらわかりづらいので、実際に読んでみるのが早いだろう。同時に読み進めていた『豆腐小僧双六道中ふりだし』と共通の妖怪が多く出てくるのも面白い。『豆腐小僧...
"妖怪"を用いて現実の事件を解決するという、百鬼夜行シリーズとは対照的な作品。と言ってもどう説明しても何のことやらわかりづらいので、実際に読んでみるのが早いだろう。同時に読み進めていた『豆腐小僧双六道中ふりだし』と共通の妖怪が多く出てくるのも面白い。『豆腐小僧』の方が妖怪に関する説明は詳しいので、こちらを読んでからの方が楽しめるかもしれない。連作ながらも1話完結の短編集形式だが、次作以降へと繋がりそうなラストが気になるところ。
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