物理学とは何だろうか(下) の商品レビュー
◇第III章 ・1 近代原子論の成立 ・2 熱と分子 ・3 熱の分子運動論完成の苦しみ ・引用出典 ◇「科学と文明」 ・解説 松井巻之助
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下巻は主に力学と熱学についてである。 高校の物理、特に熱力学の分野では圧力とは容器内の分子が容器の壁面に衝突している力の総和である、ということを学ぶ。実際に計算によって圧力を求めたりする。 その際に、容器内の分子は平均的な速度Vを持って、とか壁面には等確率で分子が衝突する、と...
下巻は主に力学と熱学についてである。 高校の物理、特に熱力学の分野では圧力とは容器内の分子が容器の壁面に衝突している力の総和である、ということを学ぶ。実際に計算によって圧力を求めたりする。 その際に、容器内の分子は平均的な速度Vを持って、とか壁面には等確率で分子が衝突する、というような仮定をおいて計算する。 実際に、このような仮定をおくと観測値とよく合うけれど、よく考えると力学に確率的な考えを仮定している。 しかし、である。力学に確率の仮定をおくことの合理性は一体何処に依るのか。実は起これは1900年前後で物理学者の間ではかなりの論争になったらしい。 Boltzmannがこの理論の発展に大きく寄与したのであるがこの論争で?精神的に不安定になりついには自殺してしまったようだ。 高校物理ではある程度当たり前だと思っていたが事項がこんなに精緻に議論され、今やどの理系の高校生も学ぶ分野になった。 我々はそうとう精緻な土台の上で物理を学んでいる、ということを改めて実感した。これが、物理学か、と。 朝永振一郎はNovel物理学賞を受賞した当代一流の物理学者である。この人が物理学とは何かを語っているので、真にも学べない、ということはないと思う。
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下巻はドルトン、マックスウェル、ボルツマンと解説して原子・分子論から統計力学の発展までを説明する。これは朝永振一郎の遺稿として、ここまでで未完となっている。最後に、朝永の講演会の内容を興した「科学と文明」という、人類と科学技術文明の付き合い方に関する考察が含まれている。
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最後の方にある、極限を探求する科学から日常の自然の中に法則を見つける科学にシフトしてもいい、というような話は興味深いと思った。
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(2015.11.30読了)(2007.03.10購入)(1999.04.05第36刷) 【ノーベル物理学賞】1965年 この本の上巻を出版して、この下巻を執筆している途中の1979年7月8日に著者は亡くなられたとのことです。この本が絶筆ということになります。 第Ⅲ章はもっと手直...
(2015.11.30読了)(2007.03.10購入)(1999.04.05第36刷) 【ノーベル物理学賞】1965年 この本の上巻を出版して、この下巻を執筆している途中の1979年7月8日に著者は亡くなられたとのことです。この本が絶筆ということになります。 第Ⅲ章はもっと手直ししたかったようですし、それに続く章が書かれないまま終わってしまいました。第Ⅲ章の後には、この本を書くきっかけになったという、講演の記録「科学と文明」が収録されています。 第三章では、熱力学の話をしたかったようなのですが、残念ながらまったく理解できませんでした。それだけ物理学者も、四苦八苦したのだろうと思います。 【目次】 第Ⅲ章 1 近代原子論の成立 ドルトンの原子論 気体の法則、化学反応の法則 2 熱と分子 熱のにない手は何か 熱学的な量と力学的な量 分子運動の無秩序性 3 熱の分子運動論完成の苦しみ マックスウェルの統計の手法 エントロピーの力学的把握 ロシュミットの疑義 力学法則と確立 平均延べ時間(滞在時間) エルゴード性を支えとして ロシュミットの疑問の解明 物理学生のための補足 二十世紀への入口 引用出典 科学と文明(岩波市民講座・講演) 解説 松井巻之助 ●フィロソフィー(172頁) フィロソフィーは哲学と訳しているんですが、語源から言いますと知識を愛するということですね。フィルというのは愛するということなんだそうで、例えば音楽でフィルハーモニーというのがありますが、あれは調和を愛するという意味なんだそうです。ソフィアというのは知恵とか知識とかいうことです。 ●色彩論(180頁) ニュートンが発見しましたのは、白色をプリズムで分解すると七色のスペクトルが出る、従って虹の七つの色の合成が白い色である、という考え方です。ゲーテはこれに非常に反対しまして、そういうことは考えられないということで、彼自身いろんな実験をやって、ニュートンの対抗する光の理論をつくろうと、『色彩論』という厖大な著述をしてニュートンを批判しています。 ●朝永さんの執筆の意図(232頁) 「素材の組み換えを行い、多くの天才たちの考え方の秘密や問題の立て方を明らかにしようと努力した」 この本の上巻におけるケプラーのいわゆる「ケプラーの法則」に到達する過程、カルノーの「カルノー・サイクル」、クラウジウスの「エントロピー」という重要な概念導入の経路などにおけるこれらの天才たちの思考の進め方の追及、特に下巻におけるマックスウェルとボルツマンという悲劇的な死を迎える二人の天才物理学者の熱の分子運動論確立への道程にたいする先生の執拗ともいえる追及は圧巻です。 ☆関連図書(既読) 「鏡の中の物理学」朝永振一郎著、講談社学術文庫、1976.06.30 「物理学とは何だろうか(上)」朝永振一郎著、岩波新書、1979.05.21 (2016年5月20日・記) (「BOOK」データベースより)amazon 本書の完成を前に著者は逝去された。遺稿となった本論に加え、本書の原型である講演「科学と文明」を収める。上巻を承けて、近代原子論の成立から、分子運動をめぐる理論の発展をたどり二十世紀の入口にまで至る。さらに講演では、現代の科学批判のなかで、物理学の占める位置と進むべき方向を説得的に論じる。
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未完だったのか。惜しいが、物理学とは何か、といことは、いかんなく書かれていると思う。統計物理は疎いが、ボルツマンの科学する精神には、感じるものがあった。
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2013/05/06-2013/05/10 ☆3~4? 東大駒場図書館KOMEDコーナーにあった本。 著者が執筆途中に逝去されたため、この本は未完となっている。よって下巻には、熱力学の歴史から量子力学めいた所に入るか入らないかの所で終わっており、付録として過去の朝永先生のある...
2013/05/06-2013/05/10 ☆3~4? 東大駒場図書館KOMEDコーナーにあった本。 著者が執筆途中に逝去されたため、この本は未完となっている。よって下巻には、熱力学の歴史から量子力学めいた所に入るか入らないかの所で終わっており、付録として過去の朝永先生のある講演の記録が載せられている。 科学史から物理学を考えてみたい人にはお勧め。 その他のレビューは上巻のレビューに書いてしまったのでここでは割愛する。
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物理学とは何か。 残念ながら、下巻執筆中に著者が急逝してしまい、未完に終わっている。 物理学に則った態度、科学を扱う態度、そんなメタ学問的視点が重視されており、物理学、ひいては科学に携わる人間の必読書といっても過言ではない。
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本書の完成前に著者が病気により逝去されたため、未完となった。上巻に続く内容として、近代原子論と熱の分子運動論に関する解説がなされており、この三章に加え、本書上下巻の原型となった講演、「科学と文明」が収められた形となっている。 朝永先生は晩年、熱現象の物理学への組み込みとそれに関わ...
本書の完成前に著者が病気により逝去されたため、未完となった。上巻に続く内容として、近代原子論と熱の分子運動論に関する解説がなされており、この三章に加え、本書上下巻の原型となった講演、「科学と文明」が収められた形となっている。 朝永先生は晩年、熱現象の物理学への組み込みとそれに関わる分子運動論に熱心に取り組まれたという話であるが、これらを通して、物理学とは何かという事に対し、納得のいく解答を得ようと努力されたのではないか。 科学と文明においては、物理学の原罪について述べられている事が興味深い。知ってしまった事はもう取り消せない。現在の原発のような問題も、原爆の開発と同様に人間の本能に根ざす解決の難しい問題であろう。物理学の手法は自然を人為的に変える事によってベールの向こう側にあるものを見るのであるが、これからはこうした方法ではなく、自然をそのままに観察する事で自然法則を見出すような手法を持つ自然科学にある程度、席を譲る事になるだろうと述べている。これを読んで、寺田の物理学を連想した。要素還元法もやはり限界はあり、複雑なものを複雑なまま理解する手法を見出すのも必要になるのではないか。 物理とは何かという問題を通して、著者が提起された現代科学と人間社会の関わりについて、今こそ一人一人が考える時が来ていると感じた。
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中盤における病室での口述部分を読んで始めて本書が未完の遺作であることを知る。上巻ではニュートン力学から熱力学、そして下巻での熱の分子運動論の完成で本書は終わるのだが、本当はこの延長線上で量子力学について語るつもりだったのではないだろうか。とはいえ、そこに至る過程において多くの物理...
中盤における病室での口述部分を読んで始めて本書が未完の遺作であることを知る。上巻ではニュートン力学から熱力学、そして下巻での熱の分子運動論の完成で本書は終わるのだが、本当はこの延長線上で量子力学について語るつもりだったのではないだろうか。とはいえ、そこに至る過程において多くの物理学者が実験と観測、互いの論争を交わしながら認識を少しずつ進めていきやがて一貫した公式を見つけ出していこうとする姿勢はやはり科学として一つのあるべき姿だと思うし、その真摯な態度というのを何より伝えたかったのではないだろうかと思う。
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